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「夕食はここに運ばせる、食べられるか?」

「食欲がないので、オスカー様だけで召し上がって下さい」

「いや、俺もいい。甘いものはどうだ?」


「いりません、それより質問させて下さい、オスカー様」

「いいだろう、なんだ?」

 今のオスカー様は私に好意を見せてくれている。

 嫌な記憶に囚われて彼をすぐには好きになれない・・・けど。


「クラリス様は愛人なんですよね?」

「違う、従姉で秘書だ」

「うそ!」

「俺はアイツを女性と意識したことは無い」


「初日の夜にオスカー様の部屋で逢瀬を交わしていました」

「部屋に呼んだ。だがテリーも一緒でリアナの事を相談しただけだ」

 うーん、本当かしら?


「ベニー様を追い出したと仰っていました」

「ああ、仲が悪くてな、ベニーの浮気が原因だったが確かに追い出したな。リアナ、俺はベニーを愛する気持ちは全くなかったんだ」


「うそ、そんな・・「本当だ!ベニーもただ侯爵夫人になりたかっただけだ。性格の悪いベニーを俺は憎んでいた」


 オスカー様も性格が悪かったと思うけど。


「君が俺を嫌っているのは知っている。だが俺はリアナをずっと好きだった、信じて欲しい」

「ドSですか?」・・・あ・・・心の声が。


「違う、君を庇えばベニーの嫌がらせが酷くなる。だから君に暴言を吐いてベニーを遠ざけるしかなかったんだ」


「ではベニー様が私を嫌っていたのは」

「俺のせいだ。俺の気持ちを知ったベニーが過度の嫌がらせをしたんだ。すまなかった」


「それを信じろと?いつからオスカー様は私に好意を?」

 オスカー様と学園で会ったのが初めてだ。でもその前からベニー様は私を嫌っていた。

「分からない、俺は君と婚約したかった。でも君はハワードと婚約、俺もベニーと政略的な婚約をさせられてどうにもならなかった」


 どういう事?それなら12歳以前ということになる。私はオスカー様の事なんか知らない。

 疑う私の気持ちを察して、オスカー様は「ちょっと待って」と机に向かって何かを探している。


 オスカー様が手に持っていたのは手紙の束だった。

「これはリアナが書いた手紙だ」


 ───幼い字。

 それはシスター・マーベルと一緒に私が『お兄さま』に書いたものだ。

 手紙を出す相手がいない私に、シスターは『お兄さま』に書いてみようと言ってくれた。


「お兄さまが・・・オスカー様?」


「返事を書いたのは俺だ。最初は正直、面倒だと思った。だがリアナからの手紙を楽しみに待つようになった。そしていつかリアナに会いたいと思っていた」


「私も会いたいと思っていました。叶わなかった・・・今は叶っているんですね」

 お兄さまからの返事は今も大切に持っている。


「これからはリアナを大切にする、幸せにするから俺と結婚して欲しい」

「2か月先には私はオスカー様の花嫁です」


「2か月待たないとダメか?またハワードに奪われそうで不安なんだ。アランだって記憶が戻ればリアナを取り戻しに来るだろう」


 必死すぎるオスカー様にドン引き・・・だ。


『いい年して貞操観念なんて言ってるから実家に売られるのよ』

 クラリス様に言われたが、やっぱり無理、まだ無理!


「すまない焦りすぎたな、でもこれだけは許してほしい」

 オスカー様のキスが私の唇をかすめた。

 鳥肌も震えも起こらず、ドキドキした。


 19歳でファーストキス。


 ハワードは髪にキスをしてくれた。

 学園に入るまで、ハワードは私を愛してくれていた。


「オスカー様は心変わりはしませんか?ダイアナに騙されて私を捨てませんか?」

「俺にはリアナだけだ。これまでも、これからも。全ての神に誓う」

 オスカー様は私を抱きしめ髪にキスをした。私も彼を信じたくて、そっと背に腕を回した。



 ***



 ★《クラリス視点》★



「ふーん、そう。プロポーズしたのか。でもまだまだよ。簡単にオスカーは渡さないから、次はどうしようかな・・・」

 侍女が退室すると、テーブルには折りたたんだ紙が置いてあり、つまんで広げた。


「敵の敵は味方。ベニーもしつこいね。性悪で馬鹿だけど今でもオスカーに愛されていると思い込んでいるのは愚かで可愛いな。さて、どうしようかな」


 便箋を取り出して、あの人に手紙を出すことにした。

「順風満帆とはいかせないよオスカー。私からの試練のプレゼント、喜んでくれるかな?」



読んで頂いて有難うございました。

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