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「すまない、二人きりにするべきでは無かった」

「私はクラリス様には嫌われているみたいです」

「いや、そんなことは」

 違うとは言わないのね。愛人だものね。


「クラリスは二度とリアナに近づけないから、許してくれ」

「大丈夫です」

 腰を抱かれている。

 興奮していたから、赤い悪魔に触れられても鳥肌は立たなかった。


 侯爵家に来て悪意をぶつけられたのは初めてだ。

 ずっと悪意には慣れていたのに、今更なぜこんなにショックを受けているのか?

 言い方は酷かったが、クラリス様の言い分には納得できる部分もあったから。

 義姉は私の物は自分の物だと思っている。

 実際私は諦める方が楽でなんでも譲ってきた、でも。


「リアナ、今日は部屋で休んでいるといい。仕立て屋には出直してもらおう」

「いいえ、大丈夫です」

 でも、私は負け犬なんかじゃないわ!



 部屋に戻り侍女に綺麗にしてもらうと仕立て屋が来たと告げられた。

 案内された部屋には上品な貴婦人が待っていた。

 マダム・フワーロン。


 ダイアナがウェディングドレスの予約を取れなかった超有名店の女主人。

 挨拶を交わすとお針子が私の採寸を始め、マダムは次々と生地を提示して私の意見を求めた。


「デザインはマダムにお任せします」


「かしこまりました、ウェディングドレスですが、今からご注文頂いても間に合わないので既成のものを手直ししても宜しいでしょうか?」


「は?え、はい結構です。お願いします」

 オスカー様は結婚式を挙げるつもりなのか。2か月先の婚姻と聞き、省くと思っていた。

 短時間の準備は大変だろう。


「既成品とはいえ、決して手は抜きません。最高級のドレスをお届け致します」

「楽しみにしています」

 フワーロンのお店というだけでも贅沢。既製品ですら簡単に手に入らない。

 不本意な結婚だけどウェディングドレスには憧れる。


 結婚は・・・アランとの結婚が義務だと思い込んでいた。

 忘れられたのはショックだったが、アランと結婚したら一生ダイアナが付き纏いまともな結婚生活は望めなかっただろう。婚約解消したのはお互いの為に良かったのだ。


 私が侯爵夫人になればもう誰にも虐げられず胸を張って生きていけるだろうか。


 マダム・フワーロンが帰り、自室に戻るとホッとする。

 この部屋は、過去すごしてきたどの部屋よりも居心地がいい。



 ***



 夕食にダイニングを訪れると、メイドたちがソワソワしていた。

 私の席にクラリス様が座っているからだ。


「今日から食事をご一緒させて頂くわね。一人で食べてもつまらないのよ」

 二度と近づけないと言われたのに、直ぐにこれだ。


「ふふ、立ってないで座れば?」

 座れば負ける気がする。ここは侯爵様を待つのがいいだろう。


 彼はいつも遅れて来る。


「クラリス、リアナには近づくなと言っただろう。出て行け!」

「お優しいリアナ様はご一緒して下さるわ、ねぇ?」

「ご一緒しますが席は譲れません。こちらの席にお着き下さい」

 クラリス様に用意された席に促した。


「あら、言うわね。でもここがいいわ。()()()下さるわよね?」

「どうしたんだクラリス、お前、リアナに何を言ってるんだ?」


「オスカー目を覚まして。リアナは貴方が嫌いなの。一緒になっても不幸になるだけよ。セルマー伯爵家にはお金の出し損だったわね」

「なんだと!お前・・・」


 使用人たちの前でなんて事を言うんだ、この人は。

 使いたくないけど、こんな時は・・・


「あぁぁあ・・・眩暈が・・・」

「リアナ!」

「「「きゃぁあ、奥様!」」」


「仮病だわ。逃げるの?卑怯よリアナ!」

 卑怯で結構、ここから撤退できればなんでもいい。


「クラリス部屋で謹慎してろ。命令だ!連れて行け!」


 オスカー様は私を抱きかかえるとダイニングを出て部屋に向かった。

「あんな奴じゃないんだ。頭がおかしくなったのか」


 この後は、寝たふりしてやり過ごそう。

 だが、運ばれたのはオスカー様のベッドだ、なんでよ!


「リアナ、悪かった。また傷つけたな。すまない」

 手を握って辛そうなオスカー様。

 惨めったらしい女性に惹かれる性格?だから求婚したの?


 しっかり手を握られて指先にキスされているが、震えは起こらない。

 侯爵アレルギーを克服できた?


 私は全て諦めた負け犬に見えるかもしれない。でも心を折ったことは無いわ。

 惨めな女じゃないってクラリス様に認めさせる。

 それにはまず、この赤い悪魔と話し合い、彼自身を正確に知る必要がある。



読んで頂いて有難うございました。

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