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 今日のダイアナはフワフワの金色の髪をシニヨンに纏めて、切れ長の目は私よりも濃い青だ。

 清楚な水色のドレスが似合っている。


 私はストレートの髪をハーフアップ、地味な紺色のドレスは老けて見える。

 生まれつき色素が薄い私は髪も白っぽい金で、目も薄い水色だ。


 父は生まれた真っ白な私を見て、自分の子では無いと言った。

 不貞を疑いそれを理由に母を捨てた。


 父と正妻はとっくに父の浮気が原因で離婚している。

 離婚の原因になった私を義姉は憎んで、ありとあらゆる嫌がらせをされてきた。

 それは私と母が背負った(ごう)かもしれないと耐えてきたが、もうセルマー家とは縁を切りたい。


 侯爵も美しいダイアナを選ぶだろう。

 そうなればハワードに嫁がされるかもしれない、冗談じゃない。

 逃げ出そう、私は修道院に戻りたいのだ。


 だが私達の目論見は外れた。


「リアナ、行こう」

 訪れた侯爵に手を差し出され、ダイアナがその手に触れようとしたが彼は払い除けた。


「どうして?私の方が侯爵に相応しいと思いますわ」

「子どもを捨てた女に用はない。義姉とも認めない」

 ダイアナは青い顔で口をハクハクさせた。


「ハワードはリアナに誘惑されて騙され、私は息子を奪われたんです!」

 口から流れるように嘘を吐く義姉は、それが本当だと思い込んでしまう病気だ。


「黙れ!そんな事実はない!」

「ひっ!」

 ダイアナを黙らせた侯爵に無言で促されて、私は馬車に乗せられた。

 もう後戻りは出来ない。

 実家に支援をしてくれる侯爵様に、私は尽くすべきだ。


「似合わないな」

「え?」


「その服だ。直ぐに仕立て屋を呼んで作らせる」

「申し訳ありません」


「意味もなく謝るな。それと名前で呼ぶように」

「はい」



 初めての夜会で侯爵に会った時も言われた。


『似合わないな』


 ハワードがエスコートしてくれず、義兄と参加した日だ。

 あの時は何が似合わないと言われたのか分からなかった。



 アランと婚約して、初めて二人で宮殿に出向いた時も言われた。


『似合わないな』


 オスカー様の横には侯爵夫人になったベニー様が寄り添い、美しい二人はお似合いだった。




「リアナ?」

「・・・はい」


「2か月後には直ぐに籍を入れる。もし2か月の間にアラン・スコットが記憶を戻しても君を返す気は無いが」

「はい、侯爵様には実家に支援して頂いたご恩があります」


「実家の犠牲になるか、それでいい。さっきも言ったが名前で呼ぶように」

「はい、オスカー様」


 アランが記憶を戻せば少しは私を憐れんでくれるだろうか。

 いや、ダイアナと結婚して幸せになればいい。



 馬車が到着し、私は大きなタウンハウスを見上げた。

 昨年まではベニー様が侯爵夫人として暮らしていた屋敷。


 夜会でオスカー様がベニー様と揃って目の前に現れると、本当に恐ろしかった。

『あら、恥ずかしげもなくこちらに参加されていたのね。見かけによらず図太い神経ね』

『ベニー、こんなつまらない女は相手にするな、時間の無駄だ』


 私を蔑む二人の目、赤い悪魔と夫婦になるなんて、夢であってほしい。




「どうした?」

 オスカー様が手を差し出していた。


「い、いえ、なんでもありません」

 その手に震える自分の手を重ね、屋敷に足を踏み入れると使用人達に出迎えられた。


「妻になるリアナだ」

 紹介されてそのまま2階の部屋まで案内される。


「ここがリアナの部屋だ、一通り準備させたが必要な物は執事か侍女長に言ってくれ」

「有難うございます」


「リアナ」

「はい」

「アランのことは気の毒だったが、早く忘れるんだ。ハワードもアランもリアナには相応しくなかった」


「私は、相手にする価値もないつまらない女ですから」

 ・・・しまった!つい恨み言を言ってしまった。


「あ、生意気を言って、すみません」

「ふん、謝るなら最初から口にするな。俺が夫になるのだと肝に銘じておけ」

 オスカー様は侍女長に私の面倒を見るよう言いつけて部屋を出て行った。


 ぐるりと見渡せば、ベニー様が使っていた部屋だろうか、豪華な調度品は優しい色合いで品がある。


 侍女達がクローゼットを開けると美しいドレスが収まっていた。

 宝石に化粧品、可愛らしい小物、私には勿体ない特注品ばかり。

 ダイアナに知られれば、また全部取り上げられそうだ。


「このお部屋は客室を改造した()使()()のお部屋です」

「そうですか」

 私の思ったことを汲んで侍女長が説明してくれた。


「サロンでご主人様がお待ちです。お着替えを」

 侍女三名が私の専属と紹介され、テキパキ動いて人選も申し分ない。


 着替えを済ませて、髪にも美しい髪飾りを着けてくれた。

 先日までスコット家で使用人のような扱いを受けていたのが嘘のようだ。

 侯爵夫人──私なんかに務まるのだろうか。


読んで頂いて有難うございました。

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