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舞踏会を数日後に控え、警戒してピリピリしているオスカー様に対し、私は呑気に見えるのかもしれない。
これでも、ダンスやマナーの勉強を侍女長のミズリーから教わって毎日頑張っているのよ?
呑気そうな私にせっかちなオスカー様は危機を抱いたのか、就寝前に声を掛けられた。
「リアナ、ちょっとおいで」
オスカー様の部屋に案内され、彼のデスクに到着すると、机上には手紙が積まれている。
「リアナを心配させたくないけど少し警戒心を高めて欲しい」
この一月、私宛の手紙が山のように届いていたと教えられた。
「ハワードは俺の婚約者に堂々と恋文を送り付けてくる。リアナを救いたいそうだ」
「まぁ、正気かしら?」
「ダイアナはリアナに会って話したいそうだ。いろいろ相談したいらしい」
「私は会いたくありません」
婚約を解消して、私に実家に戻れと言いたいのだ。
私に執着してないでアランと結婚するか、ハワードと甥の元に戻ればいいのに。
「アラン・スコットの母親からだ。辛ければ戻っておいでと。リアナを今でも娘のように想っていると」
「それが本当なら嬉しいですけど、戻りません」
「君の義兄からだ。もっと支援金を増やすように俺に頼んで欲しいそうだ」
「何てことを、申し訳ありません!」
「いや、リアナは気にしなくていい」
多分、父の命で書かされたんだろう。
しかし読んでみると、手紙の内容は義兄の甘えた要望だった。
領地を立て直せないなら、いっそ爵位と共に国に返せばいいのよ。
人に頼ってばかりで恥ずかしくないのかしら。
「そしてこれがベニー・ネイラムからだ」
「え?」
「俺に謝罪したいそうだ。今までの行いを恥じている、出来ればリアナにも謝罪したいと」
「ベニー様が?」
「ベニーが何か企んでいる。リアナ、当日は俺から絶対離れないように。毒を盛られるかもしれない」
なるほど、オスカー様をピリピリさせていた正体はこの手紙の山だったのね。
「分かりました、厳重に警戒します」
舞踏会場では何も口にしない、オスカー様から離れない。
「危険な連中が多すぎる。・・・舞踏会場を燃やそうか」
真顔で物騒な事を言い出すオスカー様が・・・好きだ。
私を心配してくれる人はきっとオスカー様だけ。
更に私達の根も葉もない噂が蔓延している。
ベニー様を嫉妬させるために、オスカー様は私と婚約した。
私はオスカー様に冷遇されて毎日癇癪を起している。
侯爵家で態度の悪い私は、使用人達に嫌われている。
私はこっそり、愛人と逢引きをしている。などなど・・・
義姉が噂を流しているに決まってる。
「消しても次々と湧き出て来るんだ。忌々しい。セルマー家にもダイアナがこれ以上噂を広めると支援は打ち切ると警告を出しているんだが」
あの義姉を止めるのは不可能だ。
「舞踏会で仲の良い姿を見てもらえば、嘘だと分かってもらえますよ」
「そうだな。見せつけてやろう。俺がどれだけリアナを愛しているのか」
「オスカー様・・・」
すっぽりとオスカー様の腕に収まって、私は抱き締められている。
「嬉しいです。私も愛しています、オスカー様」
広い胸に顔を埋めて甘えたくなる。この人は私の恋人。
「リアナ、煽らないでくれ。気持ちを抑えられなくなる」
「もうすぐ私はオスカー様の妻になるんですね」
「俺は幸せだ。愛するリアナを抱きしめている。何度も諦めたのに、俺の腕の中にいる」
「私も幸せです。離さないで下さいね」
これ以上は耐えられそうに無いと、オスカー様に軽くキスをされ私は部屋に戻された。もう少し一緒にいたかったのに。
以前クラリス様に『リアナには良い噂は立たない。オスカーの荷物になるだけだ』と言われ、その通りになりつつある。
もう私が我慢すれば済むという状況ではない。以前の私なら身を引いて、諦めただろう。嫌だ、もう誰にも邪魔をされたくない。
教会でウェディングドレスを身にまとい、オスカー様の隣に立ちたい。
***
王太子殿下の誕生祭の日がやって来た。
朝から侍女にみっちりと磨かれて、セクシーなドレスも着せられた。
ちょっと胸を強調したマダム・フワーロンのドレス、レースで胸の谷間は見えない、大胆だが上品な仕立てだ。
シックな赤のドレスに黒の刺繍を施した、まさにオスカー様色。
「「「奥様お綺麗です!」」」
胸には大きなルビーのネックレス。結い上げた髪にも赤い髪飾り。
「ご主人様の独占欲を具現化したお姿ですね。これでお二人の仲の良さが世間に知れ渡るでしょう」
侍女長も納得の仕上がりだった。
ダンスもいっぱい練習した。胸を張った姿勢も維持できる。マナーも大丈夫!
「ええ、頑張ってくるわ。皆、有難う!」
読んで頂いて有難うございました。




