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パブリオ王国の第三騎士団が壊滅状態になったと知らせが入ったのは1か月前だった。
私リアナ・セルマーの婚約者であるアラン・スコットは殉職扱いとされて、合同葬儀も行われたがスコット伯爵家は出席しなかった。
事件の日の朝──
『国境の山間に違法栽培されている毒草の回収、犯罪者を取り押さえるだけの簡単な仕事だ』
『どうかお気をつけて』
『ああ、リアナ、今回の任務から戻ったら大事な話があるんだ』
──アランは私にそう告げていつも通り出かけて行った。
アランの亡骸も遺品も見つかっていない。
実家からは諦めて戻るように何度も義兄が迎えに来たが拒否していた。
ショックで倒れたスコット夫人を介護しながら、生きていると信じて待っていた。
そうして一月過ぎたある日、アランは戻って来た。
やつれて以前の面影を潜めていたが間違いなくアランだった。
「アラン!生きていたのね!ああ、神様!」
「母さん・・・」
「お帰りなさいアラン」
しかし駆け寄る私をアランは冷たく手で制した。
「なんでリアナ嬢がいるんだ?」
「貴方の婚約者でしょう。倒れた私をずっとお世話してくれたのよ」
「は?そんな馬鹿な・・・」
すぐに医者を呼ぶと記憶喪失だと判明。
その記憶は私と婚約する前、義姉のダイアナと婚約していた15歳の頃まで遡っていた。
アランは混乱した状態で山を彷徨い倒れていたところを猟師に保護され、15歳時の記憶が戻っても怪我で帰路に時間がかかったそうだ。
アランが戻ったと知らせると騎士団の人が説明にやって来た。
あの日第三騎士団は吹き降ろす風に乗った毒煙の攻撃を受けて全員混乱させられた。
逃走した人、自決する人、同じ団員を攻撃する人、崖から飛び降りた人。
残酷なこの事実は世間には臥せられている。事実がまだ確認できないからだ。
ケガの状態からアランは崖から飛び降りたが木に引っかかって助かったと思われた。
何人かは生き残りアランのように毒煙の後遺症で記憶障害となっている。
「息子の記憶は戻らないのですか?」
「今のところ記憶が戻った者は一人もいません」
症状は個人差があり、最も幸福だった時期に記憶は遡っているそうだ。
アランが最も幸福だったのは義姉ダイアナと婚約していた時期だろう。
アランは元々義姉の婚約者で心から彼女を愛していた。
でも義姉は私の婚約者のハワードと浮気して妊娠、愛よりもお金を選んだ。
アランと義姉が婚約を破棄すると、両家の話し合いで私がアランと婚約する運びとなった。
私は義姉の不貞の後始末をさせられたのだ。
どうでも良くなったアランは婚約を承諾したが、私を嫌って無視し続けた。
義姉はアランとハワードにずっと嘘を吹き込んでいた。
私が性悪で嘘つきで我儘な義妹だと。
義姉の浮気すら私が悪いのだと、捨てられたアランは信じていた。
学園を卒業後、スコット家に躾と称して招かれた私は、夫人の侍女のように扱われた。それでも段々とスコット家は私を受け入れてくれたのに。
「どんな理由があっても、俺が愛しているのはダイアナだけだ」
ダイアナは半年前に夫のハワードに離縁されて息子を残し実家に戻っている。
ハワードのお母様とは馬が合わず、最後には追い出されてしまった。
ダイアナが記憶障害のアランの元を訪れると、アランは義姉を愛おしそうに抱きしめた。
「リアナ、元々私とアランは結ばれる運命だったのよ」
裏切ってハワードの子どもまで産んだのに、図々しくもよく言えたものだ。
両親に義姉の子どもの事を説明されるとアランはひどく驚いたが、姉の嘘に丸め込まれてしまった。
「私はアランを愛していたのよ!信じて!家が財政難で仕方なくハワードに嫁いだの。でもやはりアランへの想いは消せなかったの、だから結婚生活は上手くいかずに離婚したのよ」
「・・・そうだったのか。可哀そうなダイアナ」
「リアナがハワードに愛されていれば問題なかったのよ!」
嘘つきな姉は、最後には全て私が悪いと言い出す始末。
どんなに両親が説明してもアランはダイアナを信じて私を拒否した。
15歳といえば二人が最も愛し合っていた時期だもの、仕方ない。
あの日、アランが私に告げたかった話はなんだったのだろう。
いいえ、もういい、アランはやっと愛するダイアナと結ばれるのだ。
アランの両親には泣かれたが2度目の婚約は解消されて、迎えに来た義兄と共に私は実家に戻った。
読んで頂いて有難うございました。




