表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】奇跡の神言《口からでまかせ》を言う盗賊のおっさんは、師匠とも英雄とも呼ばれたくない  作者: しょぼん(´・ω・`)
第四章:過去の真実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/78

第五話:拷問

 雷鳴って表現が誇張でもなんでもねえ程の轟音と共に、雷に覆われた矢が、上方を飛んでいた蝙蝠人ワーバットの身体を見事に撃ち抜く。


『ギャァァァァッ!』


 さっきの雷鳴といい勝負の断末魔。

 予想外の奇襲に、残った蝙蝠人ワーバットが驚愕した顔で、仕掛けてきた奴を目で追っている。


 ……射手が魔力を乗せて放つ、鋭く疾い一射。雷撃射ライトニングアロー

 威力を見りゃ、あいつの実力のヤバさが分かるってもんだ。

 そしてこの隙を逃しちゃ、闇夜あんやの鷹の名が泣くからな。


「エル! 他の二体も落とせ!」

「分かったわ!」


 俺は屋根の上に立っているであろうエルにそう指示を出すと、宙に浮いた短剣ダガーは腰に戻し、同時に小剣ショートソードを手にし、正面にいる、少し離れたリーダーに素早く投げつけた。

 余所見をしたあいつは、俺の咄嗟の攻撃にハッとするが、反応が遅いぜ。

 小剣ショートソードがしっかりと肩を打ち抜くと、悪霊降臨デモニアアドヴェント無の解放(リリース・オブ・ゼロ)の力で無に帰していく。


『グゲッ!?』


 苦しみながら、元の姿に戻り始めたそいつに対し、俺は腰の鉤爪かぎづめ付きロープを投げ付けると、奴の身体の周囲をぐるぐる回る鉤爪かぎづめに合わせ、ロープが奴を雁字搦がんじがらめにしていく。

 そして、最後に鉤爪かぎづめが身体に巻き付いたロープに引っ掛かりしっかりロックされた所で、俺ば一気に奴をこっちに引っ張り一気に引き寄せた。


『グギャァァァァッ!』


 雷鳴と共に届いた二度目の断末魔。

 残るは俺が捉えた一匹と、空を飛ぶ奴が一匹。

 流石にこれには分が悪いと感じたのか。

 慌てて飛んでいた奴が俺達に背を向け逃げ出そうとしたが、僅かな希望を断ち切るかのように、その背中にもまた雷撃射ライトニングアローが放たれ、奴を貫くと、あまりの威力に声も出せずに霧散していく。


 しかし、ほとんど明かりのないこの状況で、比較的小柄な蝙蝠人ワーバットを的確に撃ち抜くとは。アイリやティアラに負けず劣らず、恐ろしい才能を持ってやがるぜ。


『ハナセ! ハナセェ!』


 っと。感心してる場合じゃないな。

 正直あまり好きじゃねえが、ここからは手荒くいく。


「エル。絶対にこっちを見るなよ。耳も塞いでおけ」

「え? どうして?」


 蝙蝠人ワーバットをバルコニーの床に倒した俺は、エルの方を見ずにそう口したんだが、頭上の方からエルの疑問の声が返ってくる。

 まあ、『閃光の戦乙女達シャイン・ヴァルキリアス』と呼ばれる程の活躍をしているんだ。無惨な光景はそれなりに経験しているかもしれないが。ここから俺がする事までは経験していない可能性が高いし、経験すべきもんでもねえしな。


「お子様に見せるにゃ早いからだ。終わったら肩を叩いて知らせる。だから絶対に見るのも聞くのも止めろ。分かったか?」

「……ええ。分かったわ」


 俺が口にしたふざけた理由。それでもエルが素直に頷いたのは、真剣さを声にしたからだろう。


 ……さて、やるか。


「おい。どいつの差し金だ?」

『ダ、ダレガハナスカ!』


 俺はドスの利いた声で尋ねるが、蝙蝠人ワーバットは口を割らない。

 ま、ここまでは予定通り。いや、()()()()な。


 俺が動いた瞬間。


『グギャァァァァッ! イテエ! ヤ、ヤメロォォォッ!』


 さっきまでの威勢はどこへやら。ロープに縛られたままの蝙蝠人ワーバットが断末魔を上げ泣き叫ぶ。

 そりゃそうだろうな。俺は奴の肩に刺さっていた小剣ショートソードをグリグリと捻り、傷を抉るように押し込んでやったからな。


 そう。

 俺がやっているのは、勿論拷問だ。

 正直、獣魔軍と戦ってから、魔獣への憎悪を強く持っちまってる。だから罪悪感なんて欠片もねえ。とはいえ、幾ら俺がワルだとしても、これをエルに見せる必要はねえだろ。


「口を割る気になったか?」

『ウググ……』


 やつは俺の言葉に、開いていた口を閉じ、恨みの籠もった目を向けてくる。

 が、再び小剣ショートソードの柄に手をかけた瞬間、恐怖にその目を見開く。


「強がるなって。どうせ厄災らしき女達を監視し、隙きあらば命を奪えとか命令されてたんだろ?」

『ク、クソッタレガ……』


 痛みと命令の板挟みの中、何とか悪態をつく蝙蝠人ワーバット

 中々根性はあるようだが。話さねえなら……。


『ギャァァァァッ!』


 俺が小剣ショートソードをもう一捻りすると、またも耳障りな断末魔が響き渡った。


「いいか? 人思いになんて殺す気はねえ。痛みで死ぬか。正直に吐いて解放されるか。どっちがいい?」

『オ、オマエ、オレヲニガスキカ!?』

「ああ。今日の俺は機嫌がいいんでな。聞くこと聞ければ解放してやる。ま、もし俺の前にまた顔を出したら、お前の首を一発でねるがな。で? どうする?」

『ウググ、ソ、ソレハ……』


 正直、敵の言う事なんて、素直に受け入れるもんじゃねえんだがな。

 蝙蝠人ワーバットは結局弱い種族。それは力だけじゃなく、臆病だってのも理由。だからこそ、心が揺れ動いているはずだ。

 ここが押し所か。


「……どうせ四魔将の誰かなんだろ?」


 俺がそう耳元で囁いてやると、あいつは図星と言わんばかりに目を見開く。

 ……ガラべは八獣将。今の所、その上の奴等がいるかはまったく分からねえから、敢えて鎌をかけたんだが。こうも分かりやすい反応を返さるとはな。


「四人のどいつだ?」

『ソ、ソレハ……ダ……ガッ!?』


 四魔将なら把握済み。そんな()()()()()()で相手の名を探ろうとすると、蝙蝠人ワーバットが誰かの名を口にしようとしたんだが。

 その瞬間。突如奴の額に浮かび上がった謎の文様と同時に、漆黒の闇が奴の首に現れると、一気に首を締めた。


『ダ! ……ダスゲ……デ……』


 苦悶の表情を浮かべ、何とか声を絞り出すも、それは一瞬。

 すぐさま蝙蝠人ワーバットの首から上がもげ落ちると、死を迎えた身体と共に、ゆっくりと闇に溶けるように霧散した。


  キンッキキンッ


 刺さっていた身体が消え去り、バルコニーに落ちた小剣ショートソードが虚しく澄んだ音を立てる中、俺は警戒したままざっと周囲を見渡し、敵の気配を探る。

 が、強い魔力を持つような相手の気配はどこにもない。

 もし術者がいれば、直接俺やエルを同じ術で狙えたはず。発動時に文様が浮かび上がったって事も考えると、今のは事前にこいつに刻んでおいた、口封じ用の呪術って所だろうな。


 俺は他に敵がいないことを改めて確認し警戒を解くと、鉤爪付きロープをまとめ腰に戻すと、床に落ちた小剣ショートソードを拾い上げ、腰の鞘に戻す。


 っと。そういやエルはどうしてる?

 俺はバルコニーから屋根を見上げると、やや急な屋根の上に踏みとどまっている、肩に弓を担いだエルがいた。

 ちゃんと指示に従い、目を閉じ耳を塞いでいたようだな。

 俺は素直なあいつの行動にほっと胸をなでおろすと、彼女のいる屋根まで、軽快に駆け上がっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ