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人生はバラ色俺すげえええ、なのか?

作者: ふるけい





仕事は嫌いではないけど、人間関係にほとほと疲れた。

上司からは連日嫌みを言われ、同僚は、助け合いましょう、なんて

上辺だけ取り繕っているが結局のところはライバルだ。


毎日 早朝にむりやり起きて満員電車に揺られ仕事に向かうのもう

んざりだ。

そもそも土日だけの休日は、ほぼ疲れた体をいたわるだけに終って

しまう。

なんのために生きているかわからない。

仕事と家の往復だけの人生は虚しい。

ぐるぐると雑念がよぎる。まさに混沌だ。そんな時に、


俺の脳がゴールドスパークした、天才的なヒラメキだ。


そうだ…… 仕事をやめて無人島を買おう。

我ながら名案だ。

人生には目標や夢がなくっちゃね。


格安無人島あります、あなたの夢を叶えます。


ネットで 格安無人島を見つけた。

俺はツイている。


家を買うよりずっと安い それに無人島なら

金を使うこともないし、魚を釣りテントで暮らそう。

最低限の必要なものは持ち込めばいいし。

 

何よりいいのは、時々船が着く。

生活用品を頼んだりできるのは安心だ。

お手頃無人島生活ってやつ。

無人島素人には このくらいでないと難しい。


絶望モードからバラ色になった。


不動産屋へ向かった。


恰幅のよい赤ら顔の初老男性が、うやうやしく


「この格安無人島は早く買わないと

 すぐ売れてしまう好条件の島なんですよ~

 昨日もね、おひとり相談に来られて考え中とのことでしてね」


「今も買い取りの連絡待ちなんですよ」


「お客様は運がイイ、即決していただけたら、この夢の島は即

お客様のものですぅ~」


「是非 この機会をお見逃しなく」


「えっ? 誰かから連絡きたって?」

 


  俺は焦って


「あっ ちょっと待って、買います、買います」


  ついに 買ってしまった。家を買うよりマシだろう。

  一括現金払い、貯金の大半をつぎ込んだ。

  この時ばかりは真面目に働いて良かったとはじめて思った。


 

 

  無人島に着いた。


  幸運を願って第一歩は左足から着地して、

  浮かれた俺は、ジャンプして 踊った。


  わーい プライベートビーチだ すごいな。

  俺は子供のようにはしゃぎまわった。

  ここでは何をしても誰にも何も言われない。


  だって俺がこの島のオーナーだからね。


  全裸になって寝転んだ。開放感でいっぱいだ。

  テントを設置して、しばらくは持ち込んだ食料もあるし、なくなるま

でに島に慣れて、ここで調達できるようになればいいか。

 

  しかし 無人島の魚はスレていないから入れ食いだと聞いていたけど、

  一匹釣れるのに時間がかかったな。

  米は炊けるし塩もあるからいいんだけどね。


  しばらくは島を満喫して、焦らずボツボツいこう。

  テントの下がゴヅゴツして眠りが浅くなるのも解決しないとな。

  水は湧き水があるかどうか、ゆっくり探検していくぞ。



  くんくん 肉の焼ける匂いが鼻をくすぐった。

  ここは無人島なのにな、夢をみているのかな……



  いあ 違う 人の声がする。


  海辺へいくと、家族がバーベキューをしていた。


  (え? なんで?)


  お父さんらしき人に声を掛けた。


 「あのぉ~ ここは僕所有の無人島なんですけど……」


  人の良さそうなお父さんは、


 「えっ、知りませんでした、すみません」


 「この肉 いま焼いている最中なんですよ、食べ終わるま

 でいさせてもらえませんかねぇ?」


 「はぁ いいですけど、お肉おいしそうですね」


 「どうぞ よければ召し上がってください」


  すすめられてというか暗に催促したお肉のおいしいこと。


  魚も好きだけど、少し飽きていた。


  お肉たべてぇ――と思っていたから ラッキーだ、

  食事を作るのも、ここでは一苦労だしな。

 

  つぎに来たキャンパーはカレーを作っていた。


  同じように、所有の無人島であることを言うと

  カレーをすすめられ、ひさしぶりに大好物にありつけた。

  こうして俺はたまに来るキャンパーたちに、無人島滞在費の

  かわりにさまざまなものをゴチになった。


  お肉 カレー 焼きそば シーフードパエリア ホットサンド

  

  しかし 無人島だと言うのに、なんでこんなに人が来るのだろ

 うか……


  キャンパーの若い男に尋ねてみた。


 「ここは 無人島なのに~なんでこんなにキャンプしに来るん

 ですかねぇ?」


  男は島の逆方向を指さして、


 「向こう側 見てないんすか?」


 「ここは 浜から近いんすよね、キャンプをするならこの島って決

 まっているんすよ」


 「ええええええ――」


 「有人島じゃん、すぐそこ浜じゃん、みんな泳いでるし」


  (だ・ま・さ・れ・た・の・か)


  あの値段で売りに出された理由も考えず、飛びついた俺が馬鹿だ

った。


  ふてくきされた俺は、このさい キャンプに来た人に、あれこれ

  ゴチになって、足りないモノを催促して暮らしていこうと心に決

めた。

  暴風になりそうな時には浜に向かって泳いで、ホテルにでも泊ま

 ろう。

 

 「なんでもデキる」


  なんたって俺はこの無人島のオーナーだしね。


  俺は 陸に戻りネットに掲示した。


  無人島生活を体験してみませんか? 

  1泊1万円 テント食事はご持参ください。《夢の島オーナー》





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