コント【なりませんぞ、坊ちゃま!】
ゲラゲラコンテスト4の応募作品です。
よろしくお願いいたします。
坊ちゃま(坊)
爺や(爺)
爺「なりませんぞ、坊ちゃま!」
坊「そんな大声出したら血圧上がるよ? 爺や」
爺「何をのん気な……これは由々しき事態ですぞ! あのような危険極まりない場所に赴くとは!」
坊「いやいやいや、落ち着いて爺や。合コン会場は危険極まりない場所ではないよ?」
爺「世間知らずの箱入り坊ちゃまはご存知無いかもしれませんが……合コンとは酒池肉林のいかがわしい宴なのですぞ!」
坊「世間知らずは爺やの方だね。至極健全な飲み会だよ?」
爺「いいえ! 見知らぬ男女が乱痴気騒ぎの果てに、あろうことか気に入った相手を拉致監禁すると言う話を聞いた事がありますぞ!」
坊「それ、誰情報なの? 大袈裟に歪曲されているよ?」
爺「何と、羨ましい……」
坊「ん? 空耳? 羨ましいって聞こえたけど?」
爺「兎に角、合コンに行く事はなりませんぞ、坊ちゃま!」
坊「大丈夫だって! 一流大学に通うお嬢様方が相手だから上品な合コンになるよ」
爺「何を仰いますやら! 爪を隠した女豹が虎視眈々と坊ちゃまを狙っているに違いありませんぞ!」
坊「女豹? 肉食系女子の事かな?」
爺「乾杯のグラスに薬を盛られ……あわや貞操の危機!」
坊「逆にラッキーな気がするけど?」
爺「何と羨ましい……」
坊「今、羨ましいって言った?」
爺「朝チュンの後、何処の馬の骨とも分からない女豹に責任を取れと脅されますぞ」
坊「朝チュンって言葉知っていたんだ」
爺「その場で大金を払わされたあげく十月十日後には坊ちゃんの坊ちゃんがオギャーですぞ!」
坊「僕は女の子がいいな」
爺「ですな! まあ、どちらが生まれても爺が面倒を見ますぞ……って違う!」
坊「爺やがノリツッコミしてる」
爺「兎に角、合コンに行く事はなりませんぞ、坊ちゃま!」
坊「大丈夫だって! 楽しくお喋りしたりゲームしたりするだけだから」
爺「ほら見たことか!」
坊「何が?」
爺「ゲームと言う名の越権行為!」
坊「何となく察し。王様ゲームの事だね?」
爺「奴隷となった坊ちゃまが『ひれ伏せ愚民』と罵られるのですぞ!」
坊「爺やの偏った知識は何処から仕入れているの?」
爺「ハイヒールの踵で踏みつけられて……」
坊「それ王様じゃなくて女王様だね」
爺「何と羨ましい……」
坊「やっぱり羨ましいって言ってる」
爺「坊ちゃまの情けない姿に、旦那様も、奥様も、大旦那様も、大奥様も……草葉の陰から嘆いておられることでしょう!」
坊「うん、漏れなく健在だけど?」
爺「兎に角、合コンに行く事はなりませんぞ、坊ちゃま!」
プルルルル。プルルルル。坊ちゃまのスマホが鳴る。
坊「はい僕です……えっ? メンバーがひとり来られなくなった? 誰もつかまらない? 揃わないと合コンが流れる? 了解、また連絡して」
ピッと電話を切る坊ちゃま。
坊「爺やの言う通りになりそうだよ」
爺「メンバーがひとり欠員して合コンが流れると聞こえましたが……」
坊「その通り。初めての合コン楽しみにしていたけど今回は諦めるよ」
爺「坊ちゃま! 男子たるもの一度の挫折で諦めるとは情けのう御座いますぞ!」
坊「おいおいどうした?」
爺「お嬢様方もきっと合コンを楽しみに胸をときめかせていると言うのにメンバーが揃わない程度で取り止めるとは笑止千万!」
坊「さっき女豹とか言ってたよね? 合コン行くなとか言ってたよね?」
爺「合コンを取り止めたらなりませんぞ、坊ちゃま!」
坊「言ってる事が真逆だよ? とうとうボケたか……」
爺「僭越ながらこの爺が不足分のメンバーとして坊ちゃまに同行しようではありませんか!」
坊「ありませんよ! 僭越が過ぎるよ、爺や。女の子みんな引くから!」
爺「ご心配は要りません! この爺、若い頃はそれなりにブイブイ言わせておりましたから、ね!」
坊「ね! でドヤ顔止めて。ボケたんじゃなくてただの色ボケか」
プルルルル。プルルルル。再び坊ちゃまのスマホが鳴る。
坊「はい僕です……メンバーが見付かった? はいはい、じゃあ後で」
爺「さあさあ! 出掛ける用意をしなくては……」
坊「今の電話聞こえていたよね? 爺や。メンバーが揃ったから同行しなくて良いからね?」
爺「なりませんぞ、坊ちゃま! 爺も連れて行ってくださ~い!」
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