恥ずかしながらの月間一位! 冒険者ギルドにいったい何がおこったのか!!
このギルドには、ランキングが二種類ある。
一つはSクラス、Aクラス、Bクラスといった実力に基づいたもので、依頼主が仕事を依頼する際にチェックしたり、ギルドがクエストの可否を決めるためにつけられたランクだ。
当然、パーティーを組み直した俺たちは最低のEランク。今は難しいクエストは受けられない。
もう一つは、クエストをこなした功労点によって発表される月間ランキング。
後者には賞金が出る。
ギルドにとって一番働いたパーティーに100銀貨が渡される。
これが結構デカい。
以前居た上宿に1か月以上間泊まれる額だ。もちろん報酬とは別だ。
昔の俺があの高級宿に泊まれていたのも、年に何回かこの賞金を貰えたからだ。
この制度は、上位冒険者が長期クエストやクエスト失敗などで点数を稼げなかった時なんかに、低ランク冒険者でもまれにランク1位を獲得できるのが売りだ。
行ってしまえば、ランクの低い冒険者のモチベーションを上げるのが目的の制度だ。
そして、今回、そのランク一位をEランクの俺たちが取ってしまった。
ぶっちゃけ、まったくうれしくない。
ここまで低い点数でNo.1を取ってしまったのは俺たちが初めてだからだ。
フロウとグレゴリーも微妙な顔をしている。
「ほらよっ!」
おめでとうはおろか名前を呼ぶことも無く、レビンちゃんが銀貨の入った袋を俺たちに投げつけた。
機嫌が悪いのも無理はない。
俺ら、今月の報酬合計、銀貨40枚だし。
ランキング報酬が報酬の倍以上だよ。
ギルドは報酬の一部を組合費として徴収して運営に充てている。
ランキング賞金の100銀貨もそこから出ている。
間違いなく、赤字だ。
「レビンちゃんさん! あんな点数でランキング一位なんておかしいです!!」
俺たちが銀貨の袋を投げつけられるのを見た若手冒険者の一人がレビンちゃんに文句を言った。
「あ゛?じゃあ、てめぇが功労点しっかり稼ぎゃよかったじゃねえかよ! こっちに文句言わねえできっちり稼げや!!」
やべえ、レビンちゃん激ギレモードだ。
失敗しちゃいけないクエスト失敗した時に時々見るやつだ。
このランキング結果に相当キレていると見た。
今日は大人しくしていよう。
人の居る時を極力避けていたため俺たちは知らなかったが、どうやら、今週はクエストの失敗が相次いでいたらしい。
原因は3密防止のためのパーティー編成変更だ。
各パーティー、4人から3人に人数が減ったことに対処できなかったようだ。
さらにはヒーラーの居たパーティーはどこのパーティーもヒーラーを解雇していたので、回復はポーションだ。
ポーションは安くなったとはいえ、お金がかかる。
つまり、人数が減ったからと言って、クエストの質を落としていくとポーション代のせいで儲からなくなってしまうのだ。
そんな訳で、中堅どこは人数が減ったのにクエストのレベルを下げなかったらしい。
さらに、レベルの低いパーティーは怪我を負いやすくポーションを買い込めない。
つまり、ヒーラーが居ないと回らないのだ。
その結果、高レベルでも低レベルでもクエストに失敗したパーティーが続出した。
そりゃ、レビンちゃんの機嫌が悪いわけだ。
さらには、ロックダウンと外出自粛の影響で、討伐クエストが発生しなかったこともあり、ちょうど良い感じで功労点が稼げるクエストが無かったと言うのも俺たちを後押しした。
この状況でコツコツ採集や配達をコンスタントに成功させていたのは俺たちだけだったようだ。
マッスルたちは半月くらい休暇を取っていたのと、グリゴリーが抜けてクエストのレベルを落としてきたSクラスパーティ『角の巨人』と二度クエストがバッティングして先を越されるという不幸があったため、今月はポイントを一つも得られなかったらしい。
バッティングした二度のどっちらかでも成功していたら俺たちの一位は無くなっていたはずだ。
「よう、ラッキーだったな。ま、こんだけ点数が低かったら、来月からは俺たちが独占だな。」
マッスルはニヤニヤと笑いながら俺たちをあざ笑った。
負け惜しみじゃない。
いっさい悔しがってなんかいない。
マッスルは勝ち誇っているのだ。
そして
「だったら、きちんと仕事クリアしろや!クソホモがぁ!!」
と、レビンちゃんに上段回し蹴りを喰らっていた。