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初クエストぎりぎり達成! まさかのギルドランク月間一位達成!

 宵闇更けると、ギルドに居る人間のガラは悪くなる。

 最近は酒の提供をしてないので、そうでもないかなと期待していたが、そういうもんでもないらしい。


 俺たちはあの後、一部傷んでしまったキューアの実を採取しなおして、ギルドへと帰還した。

 ギリギリ依頼期限内だ。


 「みなさん、ずいぶんと時間がかかりましたねえ。」


 俺たちの少し前にパーティーを組んだばかりの新人冒険がニヤニヤと笑いながら声をかけてきた。


 「てか、ヒーラーだけのパーティーなんかで成功できたほうが奇跡だろ。よくやったな!信じられないぜっ!本当におめでとう!!まさに奇跡の癒し手だな!」


 と、大声で叫びながら、ワザとらしく手を叩いているのはマッスルだ。


 当たりの冒険者たちからいっせいに笑い声が上がる。


 無視だ。

 無視!


 こういうのは、無視するに限る。

 相手にしても疲れるだけだ。


 キューアの実をレビンちゃんに提出する。


 「はあぁぁぁぁぁっ。こんな誰にでもできるクエストに三日もかかるんですか? しかもこんな夜更けに提出とか。納品のチェックとか後処理とかする私の身にもなってくれませんかねぇ! 残業ですよ! 残業!」


 ワザとらしいため息をついて、レビンちゃん俺たちを睨んだ。


 くそっ。

 こいつは無視できない。


 無視したらクエスト達成にならない。

 お金がもらえないどころか、違約金だ。


 「ご、ごめんなさい。」


 素直に謝る。


 レビンちゃんは見た目可愛いけど、立場も実力も俺たちなんかよりずっと上なのだ。


 そして、見た目のプラスを打ち消すほどにムカつくんですけど。


 「とっとと置いて帰って下さい。納品の状態を確認したら明日報酬は渡しますんで。仕事ですから。」


 「え・・・と、この後ここで、食事とかするのは、ダメかな・・・なんて?」


 三日三晩戦い詰めで何も食べてない。


 コロナ禍で閉店時間が早くなっているので、他の店は今から行ってもオーダーは無理だ。


 「は? まだ仕事増やそうっての?」


 レビンちゃんが大きく目を見開き、怒気をはらんで睨みつけてきたので、俺たちはすごすごとギルドから退散した。

 

 




 「ごはん食べられなくなっちゃったねぇ。」


 ギルドからそれぞれの宿に帰る道すがら、グリゴリーが言った。


 「でも、皆、ヒーラーですから大丈夫ですね!」


 フロウが元気づけるようにそう言ってぴょんと振り向いて俺たちを見た。

 

 衰弱してきたら回復魔法かければいいからなあ。

 それでも、マナの回復はできなくなってくるからいずれ限界はくるし、何よりお腹が減って辛い。


 今夜、眠れっかな?


 ま、眠れなかったら回復すればいいか。





 

 さて、それからしばらく。


 俺たちは無難に仕事をこなした。


 特に簡単なクエストでも遠方へ向かわないといけないようなものなどについては、俺たちがこなした。

 遠くまで行く間にポーションを結構使うから、誰もやりたがらなかったからだ。


 敵との戦闘も少なかった。


 まず、最近王都周りに多くなってきたゴブリンたちだったが、「ゾンビ、ゾンビ、」と言って俺たちを避けるようになった。


 ありがたいが釈然としない。


 他の動物たちはゴブリンよりも諦めが良いので、簡単に俺たちをやっつけられないと分かると、すぐに諦めて去って行った。


 それこそ、急いでいる時なんかは、狼たちに噛みつかれたままヒールで回復しながら王都まで移動を強行するなんて事をしていたので、そのうち動物ですら俺たちを襲わなくなった。


 ぶっちゃけ、狼なんかより、クエストの報告が夜遅くになってレビンちゃんに怒鳴られることのほうが怖かった。




 そして、およそ一か月が経った。




 「うそでしょ?」


 「何で?」


 「バカな?」


 ギルド中が困惑していた。


 俺たちを馬鹿にしていた連中はもちろんだが、何よりも誰よりも俺たちが一番困惑していた。



 月間ランク 1位  『奇跡の癒し手』 


 

 なんでや!?

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