新パーティー結成! 俺たちの戦いはこれからだ!!
一人になってしまった。
宿も引き払った。
あの宿に泊まって支払いを続けて行くのは無理だ。
昔の教え子(居ない)や俺のことを慕っていた幼馴染(居ない)が、俺をパーティーに誘ってくれるんじゃないかと街を徘徊してみたが、そんな夢みたいなことは起こらなかった。
どこかへ旅立つことも考えたが、都市間のロックダウンのせいで他の街に行くことすらできん。
小説のようなご都合展開は現実には無いものと知る。
「また、うろついてるわ。」
遠くのほうで、俺のことを揶揄する声が聞こえた。
これはヒーラーの特性ではなくて俺の地獄耳だ。
くそ。
なんでこんな事になってしまったのか。
嘆いていてもしょうがないことは解っている。
自分から動かなくちゃダメだ。
でも、何をすれば・・・。
このコロナ禍で冒険者ギルドへの仕事の依頼も少なくなってきている。
特に討伐系の依頼は少ない。
何故なら、みんな在宅で外に出ないからだ。
ロックダウンで商業のやり取りも少なくなり、護衛の依頼もほとんどない。
加えて今回の三密防止策ときたもんだ。
冒険者たちは全員困っている。
!!
そうだ!
集めりゃいいんだ!
だって、4人以上のパーティー禁止は俺たちのパーティーに限った話ではない。
俺たちのパーティー以外からも追い出された面子が居るはずだ!
早速、俺はレビンちゃんにパーティー募集の依頼をお願いした。
レビンちゃんは王都の冒険者ギルドの見目麗しい看板受付嬢にして、なんと、ギルマスでもあるのだ。
その可愛さとは裏腹に、当ギルドで屈指の強さを誇る元冒険者だ。
俺より若いって言うんだから信じられない。
俺がメンバー募集をお願いすると、レビンちゃんはめんどくさそうに張り紙を掲示板に張り出した。
俺の読み通り、パーティーはすぐ集まった。
と言っても、三密防止策があるから俺を除いて2人だけだ。
冒険者ギルドの受付のあるホールには酒場のように机が並べられいて、冒険者たちが談笑できるようになっている。
本来なら酒も出るのだが、今はコロナ禍なのでアルコールの提供は無しだ。
それでも、なんだかんだでほとんどのテーブルに待ち合わせや仕事待ちの冒険者たちがたむろっていた。
ホールの机の一つに俺たち新しいパーティーメンバーは集まった。
俺以外の二人は、大柄な男性と、小柄な女生という両極端な面子だった。
男のほうは背が高くたくましい体つきだ。
濃ゆい感じの顔だ。モアイっぽい。
マスクしてても解る。モアイっぽい。
その恵まれた体格は顔を見なくても見間違う事はあるまい。
小柄な女性は若くてカワイイ。
クリクリの目にやさしそうな眉だ。
耳がついてたらタヌキっぽい。頭をモフモフしてあげたい。
だが、マスク美人の可能性もある。
いまのところは、様子見だ。
「宜しくお願いします。俺はディーレ。ヒーラーです。」
まずは俺から自己紹介をする。
募集したの俺だし。
二人は軽い拍手をしてから頭を下げた。
いい奴らのようだ。
続いて二人が各々の自己紹介を始めた
「私はグリゴリー。ヒーラーです。」
「私はフローレンス。ヒーラーです。」
全員ヒーラー!?
くそぅ・・・。
よくよく考えて見れば、そりゃあ、そうなるのか。
これ、どうすんだよ・・・。
ここは王城の高いところにある執務室。
王都知事リリィは王城の窓から眼下に広がる王都を見下ろしていた。
「・・・以上のように、各冒険者ギルドにおいてヒーラーが辞めさせられているようです。」
秘書がリリィに報告を終えた。
「そう、それは良かった。」
リリィは秘書の報告した、ヒーラーに降りかかっている不幸など何一つ理解していない様子で応えた。
「ヒーラーなんかが冒険者なんてあり得ない話なのよ。みんな辞めさせてやるわ。」