魔王討伐クエストに挑むエイル! 誰かものすごい奴が塔を攻略しているぞ!?
エイルは後悔していた。
(魔王討伐クエストなんて受けるべきではなかった。そうでなくとも、最初のフロアボスの部屋で一度引き返しておくべきだった。)
エイルたちにとって、最初からこのクエストは変だった。
魔王の塔の扉には鍵がかかっていた。
それはエイルたちにとってたいした鍵ではなかった。
ただ魔法でロックが掛かっていただけだった。
それは、エイルたちが『そびえたつ頂点』や『角の巨人』よりも、先にこの塔に到着したことを意味していた。
つまり、彼らがこの塔に最初に入った冒険者パーティーであるということだ。
冒険者たちが入ると扉が閉まる罠もあるが、この扉にはそんな罠は掛かっていなかった。
それなのに、だ。
エイルたちが行く先々でところどころ罠が発動している。
しかも、フロアボスまでもが倒されていたのだ。
これは誰かが先に入っていることを示していた。
じゃあ、あのロックはなんだったのかとエイルは不思議でならない。
しかも、先に入っている冒険者たちは相当な手練れだ。
倒されていたどのフロアボスも、エイルたちを以てしても強敵なのだ。
一番最初のフロアボスがオーガキングだった時点で、荷が勝ちすぎている塔だとエイルは気づいていた。
その時に引き返すべきだったのだ。
しかし、ディーレが抜けてから失敗続きだったエイルたちは焦っていた。
オーガキング自体はエイルたちでも倒せない相手ではない。
問題は、ヒーラーの居ないエイルたちでは、一番最初のボスですらオーガキングである強力なダンジョンを最後まで踏破できるわけがない、という点なのだ
だが、今。
誰かがエイルたちのために道を切り開いてくれている。
オーガキングの死体がまだあると言う事は、この塔の魔王はまだ討伐されていないということだ。
つまり、彼らの後をついていき、エイルたちが先に魔王を倒してしまえば、魔王討伐クエスト達成はエイルたちの栄冠なのだ。
彼らは、そんな小ずるい感情に流された。
だが、その後、エイルの不安はどんどんと膨らんでいった。
2階層ではバジリスク、3階層ではフェンリルまでもが倒されていた。
ロックダウンを無視してどこぞの英雄でもやって来たのだろうか。
そして、4階層から事態は急変した。
3階層までは見かけることのなかったモンスターたちが突然現れ始めたのだ。
(先に入った謎の冒険者に追いついてきたせいで、彼らが階層を制圧する前に4階層に入ってしまったのだろうか?)
ここに来て、このクエストはこの3人では無理だとエイルは確信した。
4階層に来てから、彼らはアイアンゴーレムやマンティコア、キマイラをどうにかして退けてきた。
どれも、オーガキングにも勝るとも劣らないモンスターたちだ。
(ディーレの地獄耳があればモンスターをさけられたのに・・・)
エイルはパーティーに残すべきメンバーを間違えたと後悔して、一瞬シーラを見た。
「大丈夫よ! まだ背中のポーションもあるし、私もまだまだ魔法は撃てるわ! こんだけ強い敵が出て来たってことは魔王までもうすぐってことよ。頑張りましょ。」
シーラはエイルを応援するかの如く拳を握ってみせた。
「そうだね。ありがとう。」
エイルはニッコリと笑って答えたが、頭の中では全く違う事を考えていた。
(罠探してるのも、前線で体張ってるのも、お前じゃないだろうに。)
エイルからしてみれば、シーラはここまでずっとエイルたちに守られて安全なところから魔法唱えているだけだ。
それこそ、キマイラやアイアンゴーレムは魔法耐性が高いので、シーラは最初にバフを撃った後は何もしていなかった。
それなのに、ビーリーとエイルは敵がシーラのほうに向かわないように守ってやらなくてはならないのだ。
(だいたい、シーラは重いポーションも背負ってない。お前は今までと同じで楽でいいよな。)
エイルたちの背中にはポーションの大量に入った大きな筒が背負われていた。
レビンちゃん謹製の自動ポーション供給装置だ。
筒から伸びているチューブを吸うと、戦いながらポーションが飲めるという便利アイテム『ヒーラーイラーヌ』だ。
実のところ、かなり助かってはいる。
今まで強敵を倒せたのはこれのおかげと言っても過言ではない。
だが、これ、重いのだ。
背負っているのでそこまで負担は無いものの、ここまで来るのに結構な距離を歩いているし、動く度に中の液体が揺れるのでエイルたちの体力は徐々に削がれていった。
ヒールと違ってポーションでは疲労はまったく回復しない。
「はい、そんな顔しないで頑張る頑張る!」
シーラの明るいその言葉がエイルをより一層苛立たせるのだった。




