巡る陰謀! 初のダンジョン挑戦だ!!
「マッチョさん? これは一体どういうことかしら?」
レビンちゃんが床に頭をこすりつけて土下座をしているマッチョの後頭部を踏みつけながら言った。
現在、彼女の怒りは臨界点を突破している。
今回はAランク冒険者のクエスト失敗だ。
バッティングした隣のギルドの連中に先にクエストをクリアされたのとは意味が違う。
討伐以外のクエストの場合、クエストを受けたのに期限内に依頼をこなせないと違約金が発生するのだ。
そして、今回のようなAランク冒険者が行くようなクエストの違約金は膨大なのだ。
「一角虎すら捕まえて来れないんですか? これでAランクとか笑っちゃいますね。」
「すまねぇ!」
マッチョたちはあの後、森の中をしばらく迷い続け、ポーションもマナもつき、ようやく夜更けになって冒険者ギルドにたどり着いたのだった。
彼らは全員ボロボロだった。
が、レビンちゃんはそんなことは気にしない。
マッチョの頭を踏む足にさらに体重を乗せる。
三密防止を理由にレビンちゃんから離れることのできた剣士と魔術師がギルドの隅で震えている。
「先月から、うちのギルドは大赤字ですよ? みなさん冒険者稼業舐めてます??」
「違うんだ。次はデカい仕事をこなして見せる! 絶対だ!」
「へえぇええ? 一体何を?」
頭を踏みつけられていたマッチョは幸いにもレビンの表情を見ることはできなかった。
もし、仮に目にしていたら彼は何の提案も口にすることはできなかっただろう。
「魔王討伐クエストをする!」
「はっ。一角虎もみつけられないパーティーが何を言ってるんですか。」
レビンが全体重をかけて、マッチョの後頭部を潰しにかかる。
「待て! 待ってくれ! 秘策があるんだよ!」
やばい。
仕事がなくなった。
みんなが朝に来るようになったので時間遅くしたのがあだとなった。
ギルドの冒険者たちが受けるクエストの質を下げてきたようなのだ。
簡単な依頼が全部取られてしまっている。
俺たちが受けられそうな依頼が無い。
今の俺たちにとってチャレンジャブルな依頼しか残ってない。
ドラゴン討伐やバグベアード討伐はさすがに無理だ。
常闇の森の採集も・・・うーん、さすがにむりかなぁ。
てか、3人パーティーじゃどこも無理だ。
「ん?」
ふと、レビンちゃんが俺たちを手招きしているのに気が付いた。
珍しい。
なんだろう、ちょっと怖い。
おそるおそるカウンターに近づく。
「な、何でしょう・・・?」
「みなさん、ダンジョン攻略に行ってみませんか?」
「ダンジョン攻略!?」
俺たちは予想外にも美味しい話が持ちかけられたので、驚いて声を上げた。
ダンジョンと言うのは、時々発生する宝物の置いてある洞窟や塔のことだ。
何故発生するのかとかは知らない。
ダンジョン攻略は危険だが、結構美味しい仕事だ。
ダンジョンに潜ってお宝を拾ってきて換金するだけなので失敗とかもない。
危なかったら途中で帰って来たりしてもかまわなかったりする。
もちろん無駄足に終わることもあるし、引き際を誤って死んでしまう冒険者も居る。
通常、ダンジョン発生は掲示板に張り出されるものだが、もしかして、新規をこっそり紹介してくれるのか?
「ダンジョンの張り紙なんかして、みんなが行っちゃったら密になっちゃうじゃないですか。万一に備えて、パーティー数を制限して個別に紹介することにしているのですよ。」
「なるほど。」
「というわけで、皆様にご紹介しているしだいです。」
「『深紅の殺意』や『そびえたつ頂点』には声はかけなかったのですか?」
「いえね、いくつかの冒険者には声はかけてるんですけれど、みなさん、ヒーラー無しでのダンジョン攻略はやりたがらないのですよ。」
「ああ、確かに。お宝がなかった時にポーション代が回収できませんものね。」
「そうそう。で、ならヒーラーの皆様なら逆に良いんじゃないかと。」
「少し話し合ってもいいですか?」
「どうぞどうぞ!」
俺たちはギルドの隅のテーブルに座って話し合いを始めた。
「いい話だと思うが、問題は私たちの実力だな。」
「相手に寄りますが、『例の作戦』があれば1体の魔物ならよほどの強敵じゃない限りいけるんじゃないでしょうか。」
「狭い通路や部屋なら敵も避けづらいから、『例の作戦』はとても有効ですもんね。」
「私たちじゃ対処できない敵が出てきても逃げてOKなのもありがたい。」
「実は俺たちって実はダンジョン向き何じゃないですか? かなりの時間探索できる気がしますよ。」
「確かに。やられないって事に関して言えば私達は最強なのかもしれない。」
「なんてったって、ゾンビですもんね!あははは!」
というわけで、俺たちはこのダンジョン攻略を受けることにした。




