こんなはずでは!? 俺たちはギルド最強のAクラス冒険者のはずだ!
「ちっ!」
マッチョ・デーモンが舌打ちをした。
『そびえたつ頂点』の3人は深い森の中に居た。
Aクラス冒険者『そびえたつ頂点』は不幸続きだった。
隣のギルドのSランクパーティーに手柄を横取りされたために、先月は成果を上げられていない。
クエスト失敗というわけではないのに、ギルマスのレビンちゃんに蹴られた。
今回クエスト成功しないと何をされるか分ったものではない。
それなのに、『一角虎の角の入手』なんて、今まで何度もこなしてきた簡単なクエストが、今日は上手く進んでいなかった。
「何だって、迷うんだよ。」
マッチョは悪態をついた。
「そんなこと言ったって仕方ないじゃないの! 街道でもないのに位置なんて解んないのよっ! 土地の把握なんてあの小娘に任せっきりだったじゃないのっ!」
魔術師が文句を言った。
ちなみにおっさんだ。
「何だって、こんな森の奥深くまで来ちまったのか・・・。一角虎なんて今までは簡単に見つかったじゃねえか!」
「そんなの、あのチンチクリンが事前に場所とかを調べてくれていたからですわよ!だから、事前準備は金を払ってもあの娘にやってもらいなさいって言いましたのに!」
剣士も文句を言った。
ちなみにおっさんだ。
「アイツ、女じゃねえか。それだけで気に食わねえんだよ!」
「別にそんなの気にしなくたってよろしいのですのに。あんなチンチクリン、アンタに叶うわけないじゃないじゃございませんこと? わたくしの心は貴女一筋でしてよ。」
「おう、エリザベート。相変わらずいい漢だぜ! 三密防止が無かったら抱きしめてキスしてやりたいところだ!」
「ちょっと、このアバズレ!何、抜け駆けしようとしてんのよ!!」
「黙らっしゃい! この泥棒猫! わたくしはあのチンチクリンじゃなくて貴方が居なくなったほうが良かったと思ってましてよ? 貴方が魔術師のくせに一角虎を見つけられないから、こんなに迷ったんじゃありませんの!」
「こんな広大な森をくまなくサーチしてたらマナがいくらあったって足りないわよっ!そもそも、 あんたが迂闊に歩き回るから虎は寄ってこないでモンスターばっかりが寄ってくるんじゃない!!」
「貴方の代わりにチンチクリンが居たら、私だってきちんと探索できてましたわ!」
「私だって、あんたの変わりにあの娘がいたら的確なポイントでサーチ使えました!」
「おいおい、ダーリンたち。俺のためにケンカは止めてくれ。」
そう、マッチョが言った瞬間だった。
ガサリ。
緊張して音のしたほうを凝視する3人。
木々の向こうから軍隊熊の大軍が現れた。
森の奥だけあってどの個体もかなり大きい。
「ちっ!」
「あんたが騒ぐからよっ!」
「貴方がうるさいからですわ!!」
「ケンカしてる場合じゃねえだろ!」
マッチョが拳を構え、剣士と魔法使いも武器を構えた。
「アンタ、さっきダメージ受けたんだから、ポーション飲んでおきなさい。」
「馬鹿言え、こんな傷なんかでポーションなんて飲んでられるか! ただじゃねえんだぞ。」
「この大軍相手に戦闘中にすぐ飲めるか解りませんわ、今のうちに回復しておいてくださいまし!」
「・・・ちっ! 大赤字じゃねえかっ!!」
マッチョはそう言ってポーションを一つ空けた。
「どれもこれも、あの女のせいだ!!」
剣士と魔術師は『追い出したのはお前だろ』と思ったが、彼のことが好きだったのでその事を口に出すことはしなかった。




