世界最強の司書さんは戦争の火種を異空間に仕舞い込む
異世界転移、それは異世界という今の世界とは異なる世界へと転移する魔法である。
この異世界転移を使い様々な国がチキュウという異世界のニホンという国から異世界人をよく転移もとい召喚させている。
そして異世界転移もしくは異世界召喚してきた、されてきたニホン人もとい異世界人たちは皆、何かしら特異な職業を授かり、普通ではありえない能力の高いスキルを保持している。
そしてその力を異世界というこの世界にはない知識を活かしたりして世界の発展に役立てたり、魔王や邪竜というった悪しき魔物を倒していったりと英雄のような活躍を行ってきた。
そんな異世界人であるが一定数こんなことを言い出す存在がいる。
「元の世界に帰りたいと。ウォシュレットが使いたいと」
まあ、最後のは数人しか言ってないが、しかしながら大なり小なり皆、二ホンという元の世界の元の国に帰りたがる。しかしながらこの世界には召喚を行う魔法はあれど、元の場所へと戻す送還の魔法は存在しない。
ましてや異世界転移という物を自由自在に行う魔法などあるわけがなかった。
今までは。
そう今までは。
何の因果かはたまた神の悪戯か。というか実際に神が最上級悪魔を封印するのに使った本に書いてあったから神の悪戯というのはある意味正解かもしれないのだが。
とある世界最強の司書の元に完璧な異世界転移のやり方に関する本が委ねられてしまった。
この本の価値は元の世界へと帰りたいと望む異世界人たちにとってはこの世界の全ての財産を全て投げ売ってでも手に入れたい神のようなアイテムである。
値段というのを考えれば、小国がまるまる買ってもお釣りが来るレベル。いや下手したら大国を買う事すらできるのではないかというレベルの品である。
実際に異世界人たちの中には大国を築き上げた者や。商売人として世界を牛耳ってる者。裏社会の頂点に立つ者がいるのだから。
さて、それでもう一度考えよう。
異世界人たち、そう世界最高峰の力を持ち、異なる知識と価値観を持った化け物達が心の底からと言っても過言ではない程欲する完璧な異世界転移について書かれた本が国を買えるほどの価値を持つ本が国立図書館の一般貸出コーナに至って普通当たり前のように置いてある。しかも【ヘンテコダンスとヘンテコな踊り44巻】という理解に苦しむタイトルで。
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まあ、問題しかない。
かといってこれを国に報告となると火種となること間違いなしであり。下手をしなくてもこの本の所有権を巡って戦争勃発である。
そしてユウヤは戦争が嫌いであった。
戦争が起きると本が焼かれる。戦争が起きると本が書かれなくなる。戦争が起きて死者が出る。その死者の中にもしかしたら本を書く小説家がいたかもしれない。
そういうのを考えた時ユウヤは絶対に戦争が起こって欲しくないそう考える人間だった。ユウヤにとって本は人生のようなものなのだから。
さて、どうしようか。ユウヤは悩んで悩んで悩んで悩みまくって、ふと、とあることを思う。
「あれ?この本もしかして登録されてないんじゃね?」
国立図書館の本は全てとある異世界人が作ったデータベース記録という水晶玉に保存されている。
新しく本が入ると水晶玉にその本をかざして登録する。貸出する時は普通に紙で残すのだが、まあ、それはさておき。ようは水晶玉に登録されていない場合はこの本は持ち主不明の本ということとなりその場合の判断は基本全部その本を見つけた司書に委ねられている。
何故ならそのようなこと滅多にないし。仮にそんな持ち主不明の本が出てもその持ち主が誰が探すということは不可能に近いからだ。ほんでもって司書の上司である施設管理大臣としてみても持ち主不明の本がありましたなんて報告受けても対応に困るからだ。
そんなわけでユウヤは早速【ヘンテコダンスとヘンテコな踊り44巻】を登録されているかどうか水晶玉で確認した。
結果は登録されていないだった。
つまりどういうことかというとこの瞬間に【ヘンテコダンスとヘンテコな踊り44巻】もとい完璧な異世界転移について書かれた本は持ち主不明の本となり管理は見つけた司書であるユウヤの物となったのだ。
「さて。というわけです。戦争の火種になること間違いなしのこの本も俺の異空間に仕舞っておくか。それがこの世界のためだ。まあ、といっても一応内容読んだけど、異世界転移するにはその転移したい異世界で生まれた何かを手に持った状態で10万以上の魔力保持者が10万以上のMPを注ぎ込まなければならないというめちゃくちゃに難易度が高いという感じだけどね。まあでも生贄という方法を使えば出来なくもないか。まあ生贄なんて非人道的で何千という命を犠牲にする行為絶対に駄目だけどね。そういうのを考えてもやはりこの本は誰にも見せない方がいいな」