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限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです  作者: 蒼魚二三
第三部 フロイライン・ダブルクロス編『Dランク帯・エダマ演習場』
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第74話 おじさん、討伐ポイントを荒稼ぎする

 フィールドの外周を回り、内部が剥き出しで黒っぽい色のAタイプ、青く塗装されたBタイプの脚と攻撃手段を潰して行動不能にしながら、遮蔽物の影に隠れている体操服姿の少女たちをマラソンに加わえていく。


『残り時間、一分――』

「ハァ、ハァ――――……!」


 二分経ったころには、フィールドを一回りし終えたようで、スタート地点まで戻ってきていた。ゲーム開始からずっと戦いっぱなしなので、流石に息切れを起こす。


『――ロボットの再起動時間を十分の一に短縮します』

「来た! 夜見さん、ヒトミさん! まだ走れるモル!?」

「……フゥッ、はい!」

「まだ、行けますっ!」

「ここからが本番モルよ! 全力で周回マラソンするモル!」

「まだ、ゲームクリアして、ない?」


 戸惑って周囲を見ると、停止したままモノアイだけ動かすロボットの姿。

 私たちの後ろに続いていた少女たちは、再起動の時間が一秒まで短縮されたそのロボットをひたすらリスキルして、討伐ポイントを稼いでいるようだった。


「どうして――」

「夜見さん! 僕たちがやるべきことはロボット軍団の壊滅じゃない! あくまでもポイント稼ぎモル! 目先の怒りに惑わされて目標を見失わないでモル!」

「――! そっか、そうでした、すみません」


 ダント氏に怒られて、心から反省する。

 よく考えれば分かったことだ。私たちはロボット軍団を倒してポイントを稼ぎ、ロボット軍団を指揮するイベント運営は、ポイントを稼がせないために妨害する。

 私はストレスを溜めすぎて頭がバカになっていたらしい。


「サンデーちゃんが私を武闘派だと言ったのは、事実でしたね」

「でも理不尽な行いに対しての容赦の無さは魔法少女として一級品モル! 誇っていいモル! 夜見さんは正義の味方モル!」

「はは、お褒めの言葉どもです」

「とにかく結果オーライだからいいモル! さあ変身解除! ロボット討伐マラソンに集中モル! ラストスパートモルよ!」

「「はいっ!」」


 変身を解いた私たちは、緊急回復のために渡されたレモン味のシャインジュエルを噛み砕いて食べたあと、体操服姿で外周マラソンに移行した。

 通路を走っては、一列に並んだモノアイにマジックミサイルを当て、角を曲がっては、同じようにロボットを倒す。

 全身の水分が汗となって抜ける。身体が熱い。喉が乾く。水が欲しい。


「ハァッ――今っ、何ポイントですか!」

「130ポイントモル! あと70ポイント!」

『残り時間、三十秒――』

「まだ足りないんですか……ッ!」


 運営からのアナウンスが来たとき、私は耐えきれず叫んだ。


「ダントさん! ギフテッドアクセルは使わないんですか!?」

「ラスト五秒まで温存するモル!」

「どうして!?」

『――ロボットの再起動時間を十分の一に短縮します』

「そのタイミングでギフテッドアクセルの超加速と! ロボットの再起動時間が噛み合うからモル!」

「本当ですか!?」

「僕を信じて!」

「分かりました――――!」


 続いての周回タイムは四十秒。ロボットを無力化する作業と、赤チーム魔法少女の回収に時間を割かなくて済んだので、本来のスピードが出せた。

 スタート地点でひたすらリスキルしていた彼女たちも、戻ってきた私たちの様子と行動を見て、さらに効率的に稼ぐ方法があると理解したようだ。

 通り過ぎていく私たちの後ろに続くことで、討伐周回マラソンに加わった。


『――残り時間、十五秒。再起動時間を十分の一に短縮します』

「あと十秒後にギフテッドアクセルを二連続で使うモル! ヒトミさん!」

「はいぃっ!?」

「このエモエナ飲むモル!」

「はいです! んぐっ――」

「ダントさん! 今何ポイントですか!?」

「172モル!」

「っ、了解です!」

『残り時間、十秒。十分の一に短縮します』


 あと二十八体。Bタイプをカウントに入れればさらに減る。

 しかし投入されたBタイプは意外と数少ない。片手で数えられる程度だ。

 ここは初心者向けだから仕方ないが――


「うわあああ――! もっと手早くポイント稼ぎたいィィ――――!」

「きゃああ! お姉さまが壊れました!」

「大丈夫まだ正気モル! さあカウント行くモルよ! 三、二、一――!」

『残り時間、五秒。十分の一に短縮します――』

「――レディーゴー!」

「ブースト!」

「レプリカ! モード・プリティコスモス!」


 ただひたすらにポイントを稼ぎたいという思いを胸に、私たちは加速世界へと突入する。

 通路を駆け抜けながら、一列に並んだロボのモノアイに、マジックミサイルを当てる。角を曲がる。

 駈けながら当てる。曲がる。

 走る、当てる。曲がる。

 四回繰り返した辺りで、後ろを走っていた赤チームの少女たちに追いついた。

 同時にギフテッドアクセルも切れる。凄まじい負荷が全身に襲いかかる。


「「うぐっ……!」」

「これでホントに最後モル! ギフテッドアクセル!」

「ブーストォ――――!」

「レプリカァァ――――ッ!」


 最後の気力を振り絞って、ラストラン。

 一周することは出来なかったが、あの赤い樹木の下にはたどり着けた。


「また来てくれたのか! さあ知恵の実を食え! ジュースもあるぞ!」

「あはは、ライブリさんがここに居てくれて助かりました……いただきます」

『――ゲーム終了。参加者が残っているため、魔法少女陣営の勝利です』


 ブザー音がなり、フィールド上空に討伐ポイントランキングが投影される。

 私とヒトミちゃんの総討伐数は210体。討伐支援も合わせて745ポイント。ランキング一位だ。報酬としてシャインジュエルC等級を五個貰えるらしい。


「はは、やった」

「まだまだ。追加報酬があるモルよ」

「追加?」

『続いてのお知らせです。463番が特殊勝利条件が満たしたため、参加者全員に100ポイントを配布し、463番に特別報酬「バトルデコイ・ナイト」を授与します』

「バトルデコイ・ナイト?」

「ははは、やっぱりか! 君たちなら満たすと思った!」


 リンゴを食べていると、服を着たライブリさんが木の中から出てきた。

 先日と同じ「正義の味方」と書かれたクソTシャツと、スキニーパンツ姿の高身長銀髪美女は、疲れ切ってへろへろ気味な私に手を差し伸べる。


「俺が報酬のナイト、閃光騎士ライトブリンガーだ! 一緒に争奪戦を勝ち抜こう! ついでに君と一緒に暮らすことになった! よろしく頼むぞ!」

「えええええええ――――!?」


 私はパニックで頭が真っ白になった。

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