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限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです  作者: 蒼魚二三
第三部 フロイライン・ダブルクロス編『Dランク帯・エダマ演習場』
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第69話 おじさん、歴史の転換期だと知る

 中央校舎の二階では、テレビのニュースを見ている紫腕章の先輩方がいた。

 合計で三名。赤城先輩の他は、まだ顔を合わせたことのない人たちだ。

 私もそこに混ざってニュースを見た。


『――ニュース速報です。日本時間で午後三時頃から、世界各地で、国連の軍事介入決議に対して反発する抗議活動が激化しています。各国の軍人たちが女性化し、ほぼ無力化状態なのにも関わらず、侵攻を決めた国連の廃止、国連に同意した各政府への批判、そもそも自国や民族自決という概念の存在否定と全面廃止を求めて――』


「一大ニュースですね」

「まあそうなるモル。今までの国という国、宗教の権威性は崩壊して、新たな文化圏が形勢されるモル」

「どうなるんでしょうか?」

「ちょっと考えてみるモル」


 ダント氏がパソコンをカタカタし始めると、先輩方も私たちに興味を持ったようで、こちらを意識し始めた。一人が振り向く。

 私と同じピンク髪だが、スレンダーなロリ体型のお方だ。


「やぁ、こんばんわ」

「あ、はい。こんばんはです」

「君の聖獣君は優秀だねぇ。ねえ聖獣君、どこでそのパソコンを買ったのかな?」

「リズールさんから買ったモル」

「……ほうほう、ということは、ブラックマンデーカタログを持っている、ってことかな?」

「商品カタログはタダでは譲らないモルよ――よし、おおよその検討が付いたモル」


 ダント氏はくるりと画面を向けてくれる。

 そこには世界地図と、コミュニティ形勢予想図、情勢考察が乗っていた。


「全世界同時多発性転換事件により、既存の政治形態は一から立て直すことになるモル。そこでまずひとつ目のコミュニティ分類。男性優位社会と女性優位社会に世界は二分されるモル」

「ほうほう、続けてくれたまえー?」

「日本はおそらく後者モル。ソレイユサイドの態度軟化による情勢変化を真っ先に受けるからモル。共産圏や独裁的な国家は女性優位に作り変えられると思うモル。最高権力者が女性のまま動くだろうモルから」

「おおむね同意だねぇ」

「男性優位のままになるのは、欧州や合衆国。カーストがある南アジアも変わらないモルね。なぜかというと、西アジアなどの中東地域がその宗教性によって強固な政治基盤を手にするからモル」

「ああ、なるほど。たしかに。あちらからすれば女性差別を激しくしたほうが、男性になった人々が有利になるよねぇ。なにより同性愛が価値観的にダメなのが、現状維持方面に働くかぁ」


 ピンクロリ先輩は納得を示したようだ。


「あとは肌の色での文化圏考察も入れたモルけど」

「海外のニュースや掲示板を見たけど、あちらでも人種問わず、全員が美男美女の扱いなんだよねぇ。既存の人種差別は消えるんじゃないかな?」

「そうなんですモル?」

「ま、日本が平和ってだけで十分さ、私たちには。安心したから帰るよー」


 またねー、とピンクロリ先輩は帰っていった。

 ダント氏はふう、と額を拭う。


「怖かったモル。あの方かなり凄腕の人モル。考察が合ってて良かったモル」

「お疲れ様です」


 彼を抱き上げると、もう一人の黒髪の先輩が私たちを撫でて、安心した顔で帰っていった。残った赤城先輩は、「国連安保理決議により軍事介入の取り消しが決まりました」という速報を見てようやく、緊張の糸を解いた。

 ソファーに倒れ込む。


「んー、疲れたぁ」

「赤城先輩もお疲れ様です。世界情勢を注視されてたんですね」

「まあ、世界自体はどうでもよくて。現状が見えてない国連を止めるため、ソレイユが武力介入する一歩手前の状況だったから。さっきまでね」

「わぁ……」


 思っていたよりも深刻な状況だったらしい。


「それよりも夜見ちゃん、イベントに参加できそう? 無理なら私の指示に従わなくてもいいからね」

「友達がなんとかしてくれました」

「ほんと?」

「はい。今日からフロイライン・ダブルクロスに参加します」

「うわぁ良かったー」


 赤城先輩は大きく安堵し、ソファに寝そべった。


「ああでも、先に言うね。私の指示取り消し。隠し条件とか忘れて自由に争奪戦楽しみなさい。そっちの方が大事だし。以上です」

「ありがとうございます。行ってきます」


 私は席を立ち、紫陣営の購買部でお詫びの品「C等級シャインジュエル十個」と「エモーションエナジーボックス(六本入り)」を受け取る。

 それらはダント氏の魔法のカバンに収納された。


「ダントさん、他に準備するものはありますか?」

「とりあえずログインボーナスを受け取るモル」

「ログインボーナス」


 ゲームっぽいシステムだ。

 購買部の店員さんに掛け合い、言われるがままに生徒手帳を見せると、五つのチェスの駒が入った小さな木箱を貰った。全部ポーンだ。


「これは?」

「初回ログイン特典のバトルデコイセットモル。戦闘になりそうな時に使うと、一定時間だけ代わりに戦ってくれるモル。戦線離脱用の使い捨てアイテムモル」

「面白いアイテムですね」

「今の僕たちに出来る準備はこれくらいモル。次はイベント会場に行くモル」

「はい!」


 私たちは学校を出て、梢千代市に繰り出す。

 目的地は梢千代市に四つある地区のうち、東にある米小路地区。エダマ・メカ-プラモデル・デザイナーズが経営する争奪戦専用フィールドの一つ、「エダマ演習場」だ。

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