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限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです  作者: 蒼魚二三
ワーケーション『普通の学生生活でコツコツレベルアップ』

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第232話 ネームド歩き巫女「佐藤ツムギ」の採用

「ライナさま、そちらは贈呈品ですよね? お預かりします」


「あ、どうも」


 魔力入りシャインジュエルの扱いに困っていると、

 菓子の用意をしてくれた巫女さんの一人が回収してくれる。

 説明をしようとしたが

 「大丈夫、私はプロです。ひと目見ただけで分かりますよ」と笑顔で断られた。

 もしかしてすごい人なのだろうか。


「ではお茶会をはじめます。

 菓子と茶をじっくり味わいなさい」


 奈々さんの一言でお茶会がはじまった。

 品のいい甘さの茶菓子を食べ、温かい茶をすする。

 静かでのどかな時間が流れる。


「あ、あの!」


 すると歩き巫女さんAから質問が出た。

 基本的に似たりよったりの黒髪美人なので見分けがつかない。

 もうちょっと親交を深めれば覚えられるかもだけど。

 彼女は言う。


「西園寺家専属の歩き巫女になると何が変わりますか!?」


 全員の動きがピタッと止まった。

 いきなりその話題はだめだろ……とばかりに、

 歩き巫女さんたちの口角が引きつり、

 こめかみがピクピクと動く。

 彼女に返答したのは奈々さんだ。


「まずひとつ。その質問は誰に対してのものですか?」


「あの、西園寺家の方々に向けた――」


「つまり私への質問ですか?」


「そ、そうです!」


「……残念ですが、

 この場でその判断を下すのは私ではありません。

 西園寺家の財産保証人となられた魔法少女プリティコスモスこと、

 夜見ライナさまです。

 ライナさま以外は置物と思って喋りなさい」


「分かりました」


 正座し、おずおずと頭を下げる彼女。

 おかげで私も状況が飲み込めた。

 西園寺家に雇われた彼女たちの待遇を決めるのが私の仕事か。


「――では大変失礼ながら、

 夜見ライナさまに私の自己紹介を聞いていただきます」


「「「!?」」」


 そして何より、

 突拍子もない質問をして私に認知されたことで、

 彼女はこの場の「歩き巫女代表」の地位を奪った。


 他の巫女がその真意に気づいた頃にはもう手遅れ。

 顔を上げた黒髪美人の彼女――歩き巫女Aは、

 ニヒルな笑みを浮かべながら名乗る。


「私の名前は佐藤ツムギ。東北地方担当の歩き巫女。

 ずっとあなたに会いたかった」


「佐藤ツムギさん、ですね。覚えました。

 私は夜見ライナ。ヒーローネームは魔法少女プリティコスモスです。

 月読学園の中等部一年、特進コースに在籍しています。

 よろしくおねがいします」


「覚えていただいてなにより。

 では早速ですが、

 お茶会の終了を宣言してください。時間のムダです」


 ざわざわ、と歩き巫女たちに動揺が広がる。

 すると一人――歩き巫女Bと名付けようか――が勇敢に立ち上がった。


「――待ちなさい!

 この場は西園寺家の当主さまが仕切る場!

 あなたのように誰かを蹴落として地位を確立させる場でもなければ、

 悪名を広めて認知度を増やす場でもない!

 礼節を知りなさい!」


「おやおや、これは正論。

 主様の前で出しゃばるような真似を。

 たいへん失礼しました。

 それではいかがなさいますか、夜見ライナさま?」


「そうですね……」


 私はゆっくりと顎に手を当てて考えた。


「戦闘について少し質問です。

 私は現場では前衛職になると思いますが、

 あなたたちは――」


「「「諜報専門部隊です!」」」


 急に他の巫女たちも一致団結しだしたな……

 おそらくは、二名の工作員による軽い思考誘導か。

 憎まれ役を買って出た佐藤ツムギと、

 追求役の歩き巫女Bのことをしっかり覚えておく。

 たぶん月読学園OG絡みの人物だ。


「……ああ、つまりは諜報員(スパイ)

 では私に求められている役割はおそらく、

 敵地で窮地に陥ったあなたたちの救出、および外敵の駆除。

 そういう認識でよいですね?」


「「「はいっ!」」」


「分かりました。

 ではそれを西園寺家に所属する最初のメリットにしましょう。

 日本国内、国外問わず救援要請が来れば私が救出しに行く。

 これを約束します」


「「「ありがとうございます夜見ライナさま!」」」


 歩き巫女たちは一斉に正座して頭を垂れた。


「次のメリットですが……あ」


 ここで私はピンと閃いた。

 隣の紫髪ショートヘアーメイド、奈々子にテレパシーを送る。


『ねえ奈々子ー、ここでおしゃれコーデバトルを』


『大丈夫よ、思考を読んで情報共有したわ。

 私が引き受けるからそのまま進めて』


『分かったありがとう!』


 シュブブ、とテレパシーを打ち切り、前を向く。


「次のメリットとなる活動拠点の構築や、

 武器と装備の用意など、

 それらは皆さんの要望を集めた上で用意させていただきます。

 来月開催を予定しているおしゃれコーデバトルでお披露目しますので、

 くわしくは隣の西園寺杏里さんにご相談ください。

 西園寺家は全力であなたに協力します」


「「「ははぁー!」」」


 先ほどの工作員二名も含めて、

 ついに勢ぞろいで西園寺家に平伏した。

 私たちに誠心誠意仕えると最後の肝が座ったらしい。

 すると奈々さんがコホンと咳払いする。


「どうやら大事なお話しは終わったようですね。

 要望と相談は杏里だけでは人手が足りませんから、

 私に相談してもかまいません。

 便宜を図るくらいはできます」


「「「はっ!」」」


「では神社の管理業務に戻りなさい。茶会はお開きです」


「「「失礼します!」」」


 巫女たちはこぞって外に向かう。

 そこで最後尾になった歩き巫女Aこと佐藤ツムギが振り向き、

 つかつかと歩いてきて、私の元で膝をついた。


「お見事でした我が王」


「東北地方担当の歩き巫女、佐藤ツムギさん……でしたね。

 そんなに私に仕えたい、ですか?」


「ほかの凡百巫女どもと同類扱いされるのは苦痛ですから」


 そう言って彼女は「ぜひ私を配下に」と頭を垂れる。

 私はいつものように困ったような演技をするべきだろうが、

 彼女にそんなことをすると間違いなく激怒する。

 売ってくれた恩を仇で返したわけだから。

 即断即決以外に選択肢は用意されていないので、静かに頷いた。


「もちろんいいですよ。ぜひ仕えて下さい」


「感謝感激の至り……!」


「さてじゃあ、役割を与えないとですね」


 ただ仕えさせるからには、

 周囲が納得行く形に収めなければならない。

 ようは一般歩き巫女と彼女の職務の違いをハッキリさせないといけないのだ。

 佐藤ツムギさんは真剣な眼で訴えかけるように私に言う。


「私は他の歩き巫女とは違います。

 戦闘方面でも活躍できるようになりたいのです」


「なるほどスキルアップ目的……

 では戦闘補佐のオペレーターからはじめますか?」


「 戦 闘 がしたいのです」


「せ、戦闘要員にします……」


「ありがとうございます」


 佐藤ツムギさんだけ諜報員と戦闘員を兼業されることになった。

 拒否されたら死ぬと言わんばかりの気迫を感じた。

 あの熱意には勝てない、仕方ない。

 そこでスッと奈々子が立ち上がった。


「よし、話はついたわね。ライナ」


「なに?」


「次はあなたの領地に向かうわよ!」


「分かった!」


 私も元気よく立ち上がる。

 大人しくしていた中等部一年組もようやく口を開いた。


「あ! うちらも行くー!」


「私もー!」


「ですわー!」


 そう言って立ち上がり、私にまとわりついてくる四名。

 無言で肩を掴むミロちゃんが怖い。なにか言って。


「な、なぁにミロちゃん?」


「私も夜見さんと戦いたいです……」


「あはは嫉妬……ちゃんと話し合いの場は設けるよ」


「ちょっとだけ許します」


 良かった……まあ、ともかく。

 大広間を出た私たち&新入り巫女の佐藤ツムギさんは、

 奈々子の案内で社務所に着く。

 以前にワープポータルを設置した場所だ。

 すると社務所前の石畳をフミフミし始める奈々子。


「この中に入るの?」


「そうだけど、先にやることがあるの、ちょうど、ここに――あった!」


 すると玄関中央付近の石畳がカチっと音が鳴らしてヘコみ、

 ボウっと青い魔法陣を生み出す。

 奈々子はそのままふわふわと宙に浮き始めた。


「なにそれ!?」


「入場前の浄化魔法陣よ!

 感染病防止対策! みんなも早く入って!」


「「「わ~い!」」」


 喜んで入っていく中等部一年組&奈々さん……奈々さん!?

 みんなで宙をくるくると回って遊びだす。

 老婦人は私に不思議そうな顔を浮かべた。


「おやライナさんは来られないのですか?

 楽しい場所ですよ、あそこは」


「な、奈々さんが行くなら……」


 足を踏み入れて私もふわふわと浮く。

 全身がシュワシュワに包まれているような感覚。

 ソーダの中に入ったみたい。


「あ、これ気持ちいい~」


 佐藤ツムギさんはそれを聞き届けてから最後に足を踏み入れた。

 するとドボッと溢れ出す邪気。

 みんなの頭にしがみついていた最後の残滓のような、

 私たちをおとしめようとするなにかが剥がれて消えていった。


『オボエテイロー……!』


「なんですかあれ」


「浄化が終わった合図よ。

 悪役の捨て台詞を聞くと気分がいいでしょ?

 あと、黒ずんだ油汚れの取れる様子」


「見た目にも配慮してるんだね浄化魔法……」


 少しするとガラララ……と玄関が開く。

 金色のエモ力が漏れ出す玄関の先には、

 現代日本の大都会と相違がないほど発展した、

 黄金のワンエーカーの領地があった。

 なぜ分かったかというと――


「あ、夜見さん! やっと来たモル!」


「ダントさん!」


 私の大親友でありビジネスパートナー、

 オレンジモルモットの聖獣ダント氏がいたからだ。

 浄化の魔法陣は私たちを浮遊させたまま領内に入れる。

 戸が閉まると浮遊の魔法が緩くなり、足がつくようになった。


「わーいダントさーん!」


「うわ夜見さん待つモル……!? むぎゅ」


 私は地面に足をついて即、

 大都会の真ん中でダント氏に抱きついて再会を喜んだ。

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