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限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです  作者: 蒼魚二三
第五部 魔法少女試験編・破章
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第117話 おじさん、お婿さん役にふさわしい人物像を答える

 その間に現状把握もしておいた。

 橋の崩落はやはり人為的なものらしい。

 緑陣営の情報によると「異常存在第二号、三号の出現による不満爆発(フラストレーション)が原因」とのこと。

 召喚者は仮面を付けた謎の青髪美女メイド。私の知識にもとづけばリズールさん。

 現在は姿をくらまし、行方が分からなくなっているようだ。

 本気でラスボスを演じるつもりなんだなぁ、と私とダント氏は驚くばかりだ。


「……こ、ここが寮ですか?」

「そうだよ」


 あと、赤城先輩に連れてこられた建物を見て、私は首をかしげる。


「ここってエモ技研ですよね?」

「そうだね」


 私の目の前にあるのは、第三校庭の端っこにある建物ことエモ技研だ。

 緑の腕章を付けた男性スタッフの方々が女学生の対応をしている。

 名札と番号が渡されていることから、あれは部屋の振り分けだろう。


「理由はいろいろとあるんだけど、分かりやすい説明をするとね」

「はい」

「アームズの男……いや、今は女子なんだけど、一緒に住むことになっちゃって」

「?」

「ええと、だからね? アームズは全員女子になっちゃったし、今までやってた男女の区別要らなくない? っていう話がお互いの学校会議でまとまったの」

「?」

「よ、夜見ちゃん?」

「ダメモル。夜見さんの脳が処理限界を超えたモル」


 私は急に頭が真っ白になった。

 理解が追いつかない。生み出した言葉はこうだ。


「お、女の子扱いしてくれるんですか?」

「何を言ってるんだモル……夜見さん。あなたは女の子だモル」

「女の子でしたっけ」

「そうモル。魔法少女でもあるモル」

「魔法少女でし、です」

「その魔法少女の力の源は何モル? 何から生まれるモル?」

「エモーショナルエネルギーで、褒められたり、認められたりすること」

「正解モル。じゃあ、そんな魔法少女が自信と実力を身につける特訓は、どうするのが一番いいと思うモル?」

「……敵との戦い、がんばること?」

「不正解モル。答えは誰かと恋をすることモル」

「わあ、ぁ」


 カア、と頭に熱気が溜まる。

 顔が火照って熱い。指を突き合わせて戸惑うばかりだ。


「ここ、恋をするなんてそんな」

「不安なんだね。じゃあ、私で練習する?」

「あわ、赤城先輩」

「ほら手を出して」


 距離を詰められ、両の手をキュッと絡め取られる。

 そのまま優しくにぎにぎされ、優しくすりすりと手の甲を撫でられた。

 全身に血流がたぎっていくのを感じる。トクトク、と心臓が早まる。

 ずっとなすがままだ。すると赤城先輩が私の顎に手を伸ばす。


 その手首は、他の女学生の手により異常なほどがっちりと掴まれていた。


「えっ」

「やば」


 聖ソレイユ女学院生のみが着用を許されたオーダーメイドの白い制服に、風紀委員と書かれた黒い腕章。赤城先輩と同じ黒髪の美少女ながらも、それ以上のチャームポイントが思いつかない少女――いちごちゃんが、いつの間にかそこにいた。


 彼女は目にも止まらぬ速さで赤城先輩の手をはたき落とすと、そのまま突き飛ばして間に割って入る。赤城先輩はクスリと笑った。


「あと少しでファーストキス取れたんだけどな~」

「……~~~~~~~ッ!」

 

 ダメ押しとでも言わんばかりの煽りに、いちごちゃんは強く歯噛みし、堪えきれない怒りを戦意に作り替えた。袖の中からマジカルステッキを取り出す。


「そっちがその気なら先輩だとしても容赦はしませんけど?」

「今さらキレられても遅いよね。夜見ちゃんとの初めてなんて、この学校にいる全員が狙ってるものなのに。担任役の先輩も同級生もみんな思ってるよ。……ひとり占めなんて良くないなぁ、って」


 赤城先輩もマジギレモードでマジカルステッキを抜く。

 驚きの情報(何度目か分からない)を聞いて私は戸惑った。


「あうう、どうしてこんなに好かれてるんですか?」

「……もう僕の推測で話すモルけど、まあ、夜見さんが配慮や気配りのできる温和で裏表のない性格だから、厳格な家庭環境で育った他の子と触れ合ったとき「すごく優しい……絶対わたしのこと好きだ……」と思わせてしまうせいモル」

「そんな童貞じゃないんですから」

「でも、処女なのが不安な普通の女の子たちでもあるモル。インターネットの普及でただでさえ承認欲求が満たされづらい時代モルのに、夜見さんの懐の広さを味わったらもう居心地が良すぎて抜け出せなくなるモル。時代と相性が良すぎたんだモル」

「な、なるほど?」


 モテるって大変だなあ。


『……それもあるけど、そもそもの原因から話したほうがいい♡』

「この声! お久しぶりです州柿先輩!」


 続いてやってきたのは、茶髪ショートボブにサイドテール・自信たっぷりの可愛い顔立ちの美少女。メスガキムーブが印象深い、生徒会風紀部の州柿井鶴(すがきいすみ)先輩だった。笑顔で手をふる私を見て、先輩は微笑む。


「ふふ♡ ざーこ♠」

「怒ってる!?」

「当然。夜見ちゃんがはっきりさせないのが悪いんだよ?」

「な、何をですか?」

「どういう人物がお婿さん役にふさわしいのか。それをはっきり明言しない限り、夜見ちゃんは面倒な揉め事から抜け出せないし、周りも争い続ける。私も風紀部として争いの火種は見逃せない」


 グッと距離を詰め、背伸びをした州柿先輩の胸と、私の胸が競り合う。


「さ、答えて♡ どんな子がタイプ?」

「その、お婿さん役ってなんですか」

「愚問。彼氏のこと。受け攻めの話で言えば攻めのことだね♡」

「う、受け? 攻め?」


 私には分からない用語だ。

 でも、私の彼氏にふさわしい人間はどういう人物なのか、はっきり言う必要があるというのは分かった。そろそろ覚悟を決めよう。

 嫉妬で怒り狂ったいちごちゃんが漆黒の闇に飲まれそうになっている。


「夜見」

「なんですかいちごちゃん」

「夜見のお婿さん役にふさわしいのって、どんな子?」

「はっきりさせますね。私より強い人です」

「分かりやすいわね……バトルよ。妹役を勝ち取ったヒトミ(あの子)のように、私も夜見から勝ち取ってみせる」

「その言葉を待ってました」


 こちらがマジカルステッキを取り出すと、いちごちゃんは変身前にも関わらず八相に構える。

 私もつい真似をするように居合の構えを取った。

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