味
ふと歌を聞いていて思い浮かんだことを殴り書きしました
意味が分からない、となる方もいらっしゃるかもしれませんが、よければ流し見していきませんか?
「私、ロック結構聞くんだよね」
「…ふーん」
他愛もない一言だった
「え?!バンドやってるの?!しかもギター?!まぁまぁ人気あるし!!」
「別に、黙ってたわけじゃないし」
たまたま、自分に関係することだったってだけ
なんでもない、ただの知り合い
大学が同じで、とってる授業が少し被ってただけ
友達でもない
「また、チケット売ってよ!聴きにいきたいからさ!」
「…来なくていい」
鬱陶しかった、邪魔だった
知りもしないくせに何言ってんだって
冷たく突き放した
「残念。でも、頑張ってチケット取っていこうっと」
「…好きにすれば」
「ねぇ!チケット取れたよ!!!!今度の日曜日、楽しみだなぁ。あ、ファンサとかあるの?」
「アイドルじゃねぇんだよ」
目も合わせない、淡々とした会話
「…なぁ、おい。事故があったって」
「は?どこで」
「それがこっちに来るまでの電車が脱線したらしくて、」
ほぼみんな死んじゃってるって
《今から友達のライブにいく!初めてだから楽しみだけどちょっと緊張》
SNSのアカウントだけは向こうからフォローされて知ってた
最後の言葉
「…ばかじゃねぇの」
いつも目は“合わせない”
けど、こっちを向いていないとき、すれ違ったとき、
不思議と見つけてしまう自分がいた
「ねぇねぇ、」
そういって話しかけてくれていた君はもういない
「おい、お前最近飯食ってんの?めっちゃ痩せてるじゃん」
「…食ってない」
「ほれ、チョコあげるから食べとけ」
「…」
甘い
「なんだよ、なんかあったのか?」
「…そうだな、わりと」
「…そっか」
たったひとつぶのチョコを食べた
あの事故があった日、ライブなんてできる状態じゃなくて
意味もなく事故があった現場に走った
ずっと素直になれなかった自分への罰かのように、もう彼女と二度と、話すこともできなくなってしまった
そう、考えるだけで食べ物は喉を通らないし、お腹も空かなかった
よくきく心に穴が開いたって表現が、間違っていないということを、まさか自分が経験することになるとは思っていなかった
今もその状態が特別変わったわけではない
もちろん彼女はもうここにいない
だけど、わりと人間はタフにできているのか、味も感じれなくなったんじゃないかと思っていたのに
チョコの甘味をしっかり感じ取ることができた
「…甘いなぁ」
「そりゃあ、チョコは甘いもんだろ」
「…。」
「はいはい、そういうことじゃないのね、わかったから睨むなよ」
ほら、そろそろ俺らの番だぞ
彼女はいない
けど、今日も彼女は聞くことはできなかった曲を演奏する
「君は、どんなロックが好きだった…?」
不器用な恋愛、素直な恋愛、どちらが一番くるしくないのだろうかとよく考えます
ただ楽しい、幸せ、だけが詰まった恋愛なんて存在しないのだろうな、深く傷ついても立ち直るために人間はある程度タフにできているのかな。
そう思ったことからこの作品を書きました。
こんな拙い文章を最後まで読んでくださった方に感謝を。