7 流派はさまざま魔法少女
「奏ちゃん、会ってない流派はいるかしら。
私も桔佳も夜まで暇だから、よかったら知り合いを紹介させてほしいわ」
「会ってない流派…」
私は少し考える。
『宇宙派』は自分とツミキちゃん、『都市派』はまのんさん。
『自然派』の動物属性は桔佳で、千尋さんは『魔術派』だ。
あと会っていないのは…。
「自然派の植物属性と、『物理派』です」
「あっっ!!!!佐野さん物理派だよ☆」
「そうなんですか!?」
物理派はパワー型で、魔法で身体能力を高めてドロモスを殴りつけるといった力業の流派だと聞く。
あの細身スーツの真面目そうな男性が物理派なのは意外だったが、まのんさんに対する通話での強い口調を思うとわからなくもない。
「ちょっと意外だよねー、私もはじめて聞いた時はびっくりしたもん。
しかも強いらしいじゃん?」
ツミキちゃんは「すごいよねー☆☆」と目をキラキラさせていた。
「知り合いはよく温室にいるの」
千尋さんに連れられて、私達は魔法省を裏手に回ったところにある温室に来ていた。
入ってすぐにつるバラが咲き乱れる空間があり、ほかほかとした気候に心がほっとする。
「すごい、……きれい」
つるバラの奥にも様々な花畑があり、バナナやみかんといった木々も美しく植えられていた。多数の植物で華やかに彩られた空間にみんな目を奪われている。
「あら、お客様」
声のする方を振り向くと、焦茶の髪をした端整な顔立ちのクールなメイドがいた。裾を摘んで優雅に一礼すると、奥に戻ってしまった。
いっちゃった…と思っていると、すぐに3人の魔法少女が出てきた。
「みやこさんに御用ですね」
中央にいる先程のお姉さんが問いかけると千尋さんは頷いた。
「ええ、ごめんなさいね、案内してもらえるかしら」
私達は3人の先導で温室の奥へと向かった。
「みやこったら相変わらず師弟さんをメイドのように使うんだから…」
「私達はみやこさんに魔法を教わっているから、これぐらいは当然なんです!」
左側の黒髪のメイドが笑顔で応える。
"みやこさん"という人物に対し深い尊敬心があるんだろう。
右側の私と同い年ぐらいの薄紫の髪色のメイドも大ぶりに何度も頷いた。
バラ園を歩いているうちに開けた場所へ出る。整備された芝生とガーデンテーブルが目に入った。
透き通るように綺麗な水色の髪をした女性が優雅にティータイムを楽しんでいる。
女性はゆったりと優美にこちらを振り返り、微笑んだ。
「まぁ、おいでやす。またえらい大所帯で」
ツミキちゃんとは別のベクトルで自分の世界に浸っていそうなこの女性は、はんなりとした物言いで紅茶を飲み続けている。
「相変わらずね…みやこ、今日はこの子にあなたのことを紹介しにきたのよ」
みやこさんはちらりとこちらを見て、これまた絵になる動きで立ち上がると私のもとに近寄った。
「は、…はじめまして!
筒崎奏といいます、よろしく、おねがいします」
「おやおや、よろしゅうお頼申します。
うちは石竹みやこ言います」
みやこさんは口元に手をやりつつ、雅やかに一礼した。