6 他の流派の魔法少女
問題なくポースが回収できていることを確認した私達は、警ら隊に声をかけて交通規制を解除してもらった。街に安寧がもどり、また賑やかで明るい生活に戻っていく。
「魔法少女様々だなぁ」
「そうね、ありがとうね!宇宙派ちゃん!」
感謝を伝えてくれる一般人にツミキちゃんはぱたぱたと手を振っていた。表情はとてもにこやかで口角がとても上がっている。
ポース・マーザが爆発したのはこの街だったらしい。地雷原といわんばかりにポースは散らばっていた。
魔法省支部は各所にあるが、本部がここに設置されているのはそのためだろう。
「そうだ!!!せっかくだし☆
ポースを貯蔵庫に持っていこーう!!」
またツミキちゃんに手を引かれる。
この細い腕に包まれながら見た勇姿が目に焼き付いて離れない。私は一歩うしろを走りながら、その後ろ姿に見惚れていた。
「…私、ツミキちゃんみたいになりたいです」
一瞬驚いてぴくりと肩を揺らしたツミキちゃんは振り返って最高の笑顔を見せた。
「なれるよ!」
二人手を繋ぎながらショッピングセンターを抜けていく。おしゃれな洋服やかわいい雑貨を横目に私達は3階に向かった。
3階には至る所に鍵穴のついた箱が置かれている。
「この箱のことはねー、みんな『ボックス』って言ってるんだーー☆☆☆☆」
鍵といいボックスといい、魔法少女たちはみな安直で率直な実用性の高いあだなを付ける傾向にあるようだ。
「ボックスに鍵を掛けることを『セーブ』って呼んでるの☆☆
これすごいのがね、ポースを貯蔵庫に回収してくれるだけじゃないんだよっ!
これまでにどれだけ魔法使ったかとか〜、何回戦ったかとか、全部記録できるの!!!
魔法少女にとってセーブポイントみたいな感じ!!」
「すごいです…とっても!
てことは、……戦いが終わったら、ここに鍵を掛けにいけばいいんですよね?」
「そゆこと☆
わたしは1日の終わりに掛けに来てる!!」
便利な道具だなあと思いながらボックスに鍵を掛ける。
変身前はまっさらで何もなかった鍵だったが、気付いたら宇宙柄のリボンが括り付けられていた。ローマ字で名前が彫られている。
魔法はすごい、ツミキちゃんの戦いっぷりがまた頭をよぎった。
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「あれ、ツミキじゃんね!やっほー」
ふと声がして振り返ると、頭からきつねのような耳が生えたハツラツとした女の子が手を挙げている。その横にはまさしく魔術派のローブを着たお姉さんが立っていた。
私が小さく会釈すると、女の子は「おっ?」と声を出してから、チラッとツミキちゃんの方を見た。お姉さんは微笑んでべこりと会釈を返してくれた。
「初めて見る子じゃん!
はじめまして、私は井ノ原桔佳だよ
気軽に呼び捨てでよんでね〜」
「えと、はじめまして…
筒崎奏、と、いいます!」
深々と頭を下げてお辞儀をすると「面白い子だねー!」と笑われた。緊張の中で出る私の渾身の挨拶はそんなに面白いのかな…と思いつつ、少し恥ずかしくなった。
その様子を微笑ましそうに見ていた魔術派のお姉さんも一歩前に出て挨拶をする。
「私は魔術派の寺杣千尋です。
よろしくね、奏ちゃん」
「あっ私は『自然派』だよー!
自然派の動物属性!!」
「動物属性…?」
そういえば自然派の人を見るのははじめてだ。属性という単語も初耳だった。
「はいはーーい☆わたしが教えるー!!!
自然派はねー、さらに細かく属性でわかれてるの!」
「そうそう。
『動物属性』と『植物属性』の二つが主流だね」
「漢字ばっかだしまどろっこしいから簡単に肉と草って呼んでる☆☆☆」
「それはツミキだけじゃんね…」
ははは、と笑いが生まれて会話が弾む。
魔法少女には5つの流派があるというのは聞いているが、細かい属性もあるのは知らなかった。
へー…と頷いていると、千尋さんは「そうだわ」と声を上げた。