3 ウルトラ元気な魔法少女
「えーーーーーー!!!!
この子!!新しい魔法少女!?!?!?宇宙派だー!!!やったーー☆☆☆」
佐野さんには目も暮れず私の手をがっしり掴む女の子に、私も困惑するほかなかった。
「はじめまして、筒崎奏といいます…今は宇宙派、なんですけど、そのうち…」
「宇宙派ー☆☆☆☆わたしも!!!!」
「えっ、あっ、見てわかります…」
「わたしね、笹井月海っていうの☆☆
みんなからは"ツミキちゃん"って呼ばれてるんだよー!!!奏ちゅんも呼んでね☆!!」
「ちゅん…」
ゼロ距離で詰め寄るツミキちゃん。それを見る佐野さんは憐れむような顔をしていた。
「そうだ!!!佐野さん☆奏しゃん連れてってもいい?
魔法省を案内したげる☆☆」
「えっ?あ、まぁ、説明は済んでいますから…」
不安げな私の顔を見て一瞬返答に困る佐野さん。そのあと「大丈夫か」と頷いた。
「悪い人でないのは保証しますよ。
そうだ、ツミキさん。ついでです、まのんにこの書類を渡してきてください」
「おっっっけーーー!!まかせて☆☆
いこー☆かなでっち!」
こんなにもころころとあだなが変わったのは初めてだ。
私は手を引かれてエレベーターに駆け出した。
エレベーターに乗り、移動中もじっとしてはいられないツミキちゃんを横目に改めて自分の姿を確認した。
「本当にふしぎな髪…」
ヘアスタイルは変わらずに、髪の毛がそのまんま青色のスライムになっている。触るとぷよぷよとして水っぽく、引きちぎることもできた。同時に合わせることもできる。
服装はとても可愛らしいものだったが、自分では着ないなと思うデザインだ。
「そーーだ、かなでっち!!!!ステッキが出てきそうな呪文を唱えてみて☆」
一瞬考えた後、小さい頃見ていたアニメの呪文を唱えてみた。すると「ポンッ」という音と共に空気が弾けてステッキが現れた。
「呪文はなんでもいいけどね、ステッキほしい!って思ったらステッキ出てくるよ☆☆」
宇宙派はこれで魔法を放つのだろう。
ステッキがほしいと思うだけでステッキが出てくるなら呪文を唱えることは金輪際無いだろうが、アニメそっくりの体験ができたことに気分が上がった。
ツミキちゃんは右手を掲げてくるりと手で弧を描くと「おいで☆布団たたきちゃん!」と叫んでステッキを召喚した。
「布団たたき…」
不可思議だと思ったが自分が手にしているステッキの持ち心地は確かに布団叩きだった。
--
魔法省5階は沢山の布やリボン、裁縫糸がずらりと並ぶフロアだった。
「奥の部屋!!まにょんちゃんいるはずだよ☆☆☆」
"まにょんちゃん"とは…と一瞬考えたあと、佐野さんが「まのん」という人物に会うよう言っていたのを思い出す。
「えっと、失礼します…」
そっとドアを開けるとパソコンのキーボードを凄まじい速さでタイピングするつなぎ姿の人物がいた。
髪をツーブロックにさっぱりとカットしたその女性はぶつぶつと独り言を言いながら画面に向き合っており、私たちのことは見えていないようだった。
あまりの集中っぷりに声を掛けていいのかと悩んでいたが、そんなことはお構いなしにツミキちゃんは元気に声を掛けた。
「まにょんちゃ〜〜〜〜ん!!!!書類届けにきたよん☆☆☆」
「!!!!」
驚いて振り向いたこの女性こそがまのんさんの様だ。顔立ちが佐野さんに似ている。
「ツミキ…もうちょっと静かにできないのか」
まのんさんは受け取った書類にざっと目を通したあと、私のほうを見た。