エピローグ
これは建国神話である。それもヴァナディース Wanadiis 共和国の。
すべては主なる神が、かの地を示した時に始まった。
「信仰ある者たちよ、おまえたちはツヴェーデンから分離・独立し、かの地へと移り住め」
神は命じた。広大なヴァナディース平原のある場所に剣を突き刺して、そこを国の中心とせよと。
剣をその場所に突き刺したのはセリオンだった。剣が刺された場所には狼の像も建てられた。
中心となった場所はフォルム Forum と呼ばれ政治の中枢となった。
さらに小高い丘の上にはテンペルのための聖堂が建てられた。この聖堂にはテンペルの兄弟姉妹以外の人間も入って祈ることができる。
ヴァナディース共和国の初代大統領にはスルトが就任した。聖堂騎士団の長はアンシャルが引き継いだ。
政教分離のため、宗教界の要職についていてはスルトが大統領になることができなかったからだ。
スルトは市民たちを前にこう宣言した。
「私は天地万物の創造主、唯一にして主なる神を信じる!」
と。
政治の中枢が決まると、その他のことが決まるのは早かった。
まず宗教関係の施設、次いで軍隊の基地、そしてビジネスのためのオフィス街、広場や市場などである。
シベリア人の一部は以後ヴァナディース市民として生きるようになった。両親のうち片方がヴァナディース市民ならばその子供もヴァナディース市民となれる。
ヴァナディースには大きな川が蛇行していて水は豊かだった。かくしてヴァナディース共和国が建国された。その旗には白地に青の狼が縫い付けられていた。