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シェヘラツァーデ編4

セリオンとルクレティーナはヨーゼフの家の中に戻った。

「セリオン殿、ありがとうございますじゃ。セリオン殿のおかげで、ゼルギウスから村は救われました」

「さすがですね、セリオンさん。龍殺しの英雄の力はお見事でした。あのゼルギウスを倒してしまうんですもの。ゼルギウスは第一級の魔法使いでもありました。次はアーデルハイトを助けていただきたいのですが」

「確かゼルギウスに囚われたルクレティーナ付きの騎士の名だったな?」

「はい、そうです。彼女は魔獣ドラウスへのいけにえにされるとゼルギウスは言っていました。魔獣ドラウスは月夜の塔に住んでいます。急ぎましょう。月夜の塔は月夜の森の中にあります」

セリオンとルクレティーナはヨーゼフの家を出て月夜の塔へと向かった。

森の中は月の光と月明かり草の光で照らされていたため、暗くなく良好な視界で進むことができた。

「…… 本当にこの道で正しいのか? やけに早足で、しかも迷わずに進めるんだな」

セリオンが不安を口にした。一方のルクレティーナはまるで遠足に向かうかのように歩いていた。流れるような金髪の髪が揺れる。

「うふふ。この森は私の庭のようなものですわ。小さいころからこの森を歩き回っていたんです。月夜の塔はこちらのほうにあります。ほら、大きな塔が見えてきました。あれが月夜の塔です。塔の中にはモンスターもいるので、気を付けてください」

「誰に言っているんだ? 俺に油断はない」

「ふふふ。そうでしたね。さすが、青き狼様ですわ。私はこの森が好きです。常に月の明かりに照らされ、月明かり草の花々が咲き誇るこの森が」

「そうだな。この森は幻想的だ。ルクレティーナがこの森を好きな理由が分かるような気がする」

「ふふっ、そう言ってもらえるとうれしいです。ところで、道中時間がありますから、何か話して進むことにしましょう。この森は安全ですから、話をしながら歩いても平気ですよ。月夜の塔まではもう少しかかりますから。そうですね。セリオンさんと奥様との出会いはどのようなものだったんですか?」

ルクレティーナはセリオンの前を先導しながら、セリオンに話しかけた。

「俺とエスカローネの話か? そうだな。俺がエスカローネと出会ったのは五歳の時だったな。俺とエスカローネは兄姉きょうだいのように育った。俺とエスカローネは幼なじみなんだ」

「まあ、それはすてきな出会いでしたわね。二人が結ばれたのは運命でしょうか?」

「運命というより必然と言ったほうが正しいと思う。昔のエスカローネはツインテールの髪形をしていたな。十五歳くらいになった時から、ストレートのロングヘアに変えたようだ。本人いわく、ツインテールは子供っぽいらしい。俺とエスカローネは互いに惹かれあっていたと思う。俺もエスカローネを愛するようになり、エスカローネも俺を愛するようになった。しばらくはそのまま続いた。決定的に俺たちの関係が変わったのは、俺がエスカローネに告白してからだ。そうして俺たちは恋人同士になった。それから俺たちはごく自然に結婚へと至った。まあ、そんなところだ。俺の話はもういいだろう? ほら、塔に近づいてきたぞ」

「そうですわね。月夜の塔の近くに来ましたし、お話はこれくらいにしておきましょうか。見てください。あれが入口です」

ルクレティーナが指差すと、その前に大きな門が建てられていた。そして塔の入口は重厚感があった。

「これが入口か…… 開けるぞ?」

塔の中は月明かりが窓から差し込むことによって明るかった。所々暗い所があって、明るい所とコントラストをなしていた。

「さあ、入りましょう。おそらくアーデルハイトは塔の頂上にいるはずです」

「そうか…… まだ無事だといいが」

「おそらく、最上階で魔獣ドラウス Draus と戦闘になります。覚悟はいいですか?」

「ああ、もちろんだとも。問題ない」

セリオンとルクレティーナは塔の最上層に向かうべく階段を登って行った。いくつかのフロアがあり、二人はモンスターを倒しながら進んだ。そうして二人は最上階に到達した。

「ここが最上階か。ん? あそこに縛られている人がいる!」

「アーデルハイト!」

「ルクレティーナ姫!? どうしてここに!?」

アーデルハイトは長く流れるような金髪をしていた。また赤い瞳に緑の服、黒いズボンを着用していた。

「ああ、よかった、無事で。あなたにもしものことがあったら私は……」

「よかったな。魔獣ドラウスはまだ現れていないようだ」

「あなたは?」

アーデルハイトが尋ねた。

「俺はセリオン。青き狼だ。ルクレティーナの頼みを受けてあなたを助けにきた」

「そうですか…… 私のために…… ありがとうございます」

「ルクレティーナ、魔獣ドラウスはどこにいるんだ?」

「それでしたら…… !?」

ズンと塔から音がした。

「!? この音は!?」

とセリオン。ズンとまた大きな音が鳴った。塔の下から上へと音が近づいてくる。音はズン、ズンと鳴り響いた。

「これは魔獣ドラウスが塔を登ってくる音です! 気をつけてください、セリオンさん!」

「わかった、ルクレティーナ。君はアーデルハイトさんを連れて後ろに下がってくれ。俺が魔獣の相手をする!」

セリオンは大剣を構えた。すると、魔獣ドラウスは巨大な上半身を現した。狼の顔にヤギの角が左右に二本ついている姿だった。ドラウスは大きく目を開け、周囲を睥睨へいげいする。ドラウスの目がセリオンに止まった。セリオンはドラウスの視線を直に受けた。ドラウスの視線には相手を怯えさせる魔力が込められている。普通の人間は体がこわばり身動きができなくなる。しかし、セリオンには効かなかった。セリオンはドラウスの視線をもろに受けても平気だった。

どうやらドラウスはセリオンを敵と認識したようだった。ドラウスの咆哮ほうこう

セリオンを大声で威圧する。だが、それにおじけずくセリオンではなかった。逆に闘志をみなぎらせる。

「さあ、戦闘開始だ! ルクレティーナは念のため障壁を張っていてくれ!」

「はい、分かりました!」

ドラウスは両手で薙ぎ払ってきた。セリオンはバックステップで回避する。

ドラウスは長い腕で、最上層に叩きつけてきた。セリオンは走って巧みにこの攻撃をよけた。

ドラウスは月光の波を生じさせた。月の波がセリオンに迫る。セリオンは大剣で月光の波を斬り裂いた。

セリオンは反撃する。

「行くぞ?」

セリオンは大剣でドラウスの顔を攻撃し、ドラウスの顔に傷をつけた。

ドラウスは軽い叫び声を発した。鋭い爪でセリオンを攻撃した。さっとその攻撃をセリオンはよける。

ドラウスの火炎の息。ドラウスは炎の息をセリオンにはきつけた。セリオンは蒼気を展開した。火炎の息をセリオンは蒼気の刃で斬り裂いた。さらに、セリオンは膨大な蒼気をドラウスの顔めがけて叩きつけた。

セリオンの攻撃はドラウスにダメージを与えた。

ドラウスは叫び声を上げた。ドラウスは烈火のごとく怒った。セリオンはなおもドラウスを追撃する。

ドラウスは両腕を交差させてセリオンの攻撃をガードした。セリオンのいる位置に何らかの魔力が集められた。セリオンはさがってすみやかに緊急回避する。するとそれまでセリオンがいた位置に黒い衝撃が起こった。

「重粒子か!?」

ドラウスの重粒子圧である。まともにくらったら一撃で即死するであろう。ドラウスは咆哮し、重粒子圧を連発してきた。セリオンは魔力の兆しを読み取り、ステップで回避した。

ドラウスは両手を合わせた。両手から満月の形をした月光が形成された。

「何か、来る!」

それはドラウスの超必殺技だった。ドラウスはセリオンに向けて月光を発射した。セリオンは蒼気凄晶斬で迎え撃った。

「くうう!?」

ドラウスの月光 ツォルン・モーント Zornmond である。

「俺が勝つ!」

セリオンは蒼気凄晶斬でツォルン・モーントを斬り裂いた。斬り裂かれた月光は斜めに二つとも飛んで行った。ドラウスは大きく口を開け、セリオンにかみつこうとしてきた。セリオンは蒼気を大剣に収束し、ドラウスののど元を狙って、蒼気の刃で貫いた。

ドラウスが絶叫を上げる。ドラウスの巨体が塔の最上階に倒れ込んだ。ドラウスは月光のような粒子を出し、爆発して消滅した。

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