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エルフさんの魔法料理店  作者: 夜塊織夢
第一部
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妖精たちの好奇心

青井蒼夜さまからレヴューを頂きました。

ありがとうございます。


これを励みとして今後も頑張ります。

作者ではなく、メルが…。w




青空に聳える勇壮な積乱雲。

洋々たる大海を進む妖精打撃群の艦隊。

旗艦である妖精母艦メルを守るようにして、数多の護衛艦が追随する。


カイゼル髭を撫でつけながら、メルは妖精母艦メルの指令室に座り、大きなモニターを眺めていた。

森川家の兄、和樹がメールに添付してくれた動画ファイルだ。


『男が燃える動画!』とのタイトルに間違いはなく、メルも夢中になって楽しんでいた。


タブレットPCに保存されたデーターは、妖精母艦メルで鑑賞することが出来た。

森川家の母が送ってくれた料理レシピなども、妖精母艦メルの厨房で完璧に再現してくれる。


だがしかし、メルがベッドで目を覚ますと、此処でのことは殆ど忘れてしまう。

精霊界での記憶は、意識の奥底に収納されてしまうようで、なかなかに思いだせないのだ。


(非常に残念である…!)


情報が途切れ、記憶はあやふや…。

せっかく妖精たちとブリーフィングをしても、現場で役目を果たせない不安がある。


「メル司令官殿…。その映像は何でしょうか?」


厳つい赤い髪のオヤジが訊ねた。


火の妖精だった。

妖精打撃群副司令官である。


「これはぁー。ロボットね…。米軍が開発した、カッケェーやつ!」

「先ほどのドーン!と言うやつは…?」

超電磁砲(レールガン)だお。弾丸を電磁誘導で射出する、ちょー強力な投射兵器です」

「なんとも興味深いですな…」


「あんたも好きねェー」


こうしてメルと妖精たちは、和樹から送られてきた動画をワクワクしながら観賞するのであった。


「もっとすごいのは…」

「おーっ。ドカン!言うやつですか…?」

「はい。猛烈なのを見せて頂きたい」


「そんじゃさぁー。核兵器、行っちゃおうか」


メルは核実験の映像を妖精たちに見せた。


「ぬぉぉぉおおぉぉ…っ!なんじゃ、これは…?」

「すっげぇー!」

「これ、色々と滅びるな…」


「わが軍にも、さっそく装備せねばなるまい」


妖精たちは、真剣な表情で映像を見つめていた。


「あはははっ…。とんでもないよね。わたしが居た世界、こんな爆弾をたぁーくさん作ってたんだよ!」


カイゼル髭を撫でながら、メルが笑った。


異世界で観賞する核実験のフィルムは、メルにとってジョークに過ぎなかった。

ここには存在しない兵器だから…。

安心安全。


「それでもってさぁー。各国が核弾頭をミサイルの先っぽにつけて、敵国に飛ばすわけ。そんなことしたら、世界が壊れちゃうよねェー。だから、それぞれの国が報復兵器として核弾頭を保有することで、抑止力としていたんだ。戦争が起きないように…。決して、発射してはイケナイのです。なんか、おかしな感じだよ。とっても皮肉っぽい…」

「これを沢山…」

「さすがは、妖精女王陛下であらせられる」

「素晴らしい…」


「わたしは知ってるだけだよ。こんなの所持してないからね!」


メルは知らなかった。

概念とイメージを繋げられたなら、妖精たちは如何なる兵器も再現できると…。


「メル司令官殿、お願いがございます」

「何ですかぁー?」

「我々に異世界の情報を与えてください。もっと、大量に…」


「んーっ。兄貴に頼んでみる…。たぶん、いっぱい送ってくれるよ♪」


メルは妖精母艦のショップで購入したポテチを食べながら、妖精たちに頷いた。

軽い気持ちで請け負った。


機嫌よく笑ったら、カイゼル髭が剥がれて落ちた。




「えーっ。コホン。それでは本日の会議を始めさせて頂きます」


広い会議室に、妖精打撃群の士官クラスが顔を揃えていた。

地水火風の攻撃部隊を率いるリーダーたちである。


「それでは副司令官くん…。議題をお願いします」


議長を務めるのは、妖精打撃群司令官のメルだった。


「あーっ、諸君。本日の議題は、帝都ウルリッヒの防衛についてである…。ミッティア魔法王国のガジガジ虫どもが、我らの尊き精霊樹を齧り倒そうとしておる。これを座視することは出来ぬ。なので害虫どもの殲滅が、議題の要点となる…。作戦内容と問題点は、参謀より詳しい説明がある」


妖精打撃群副司令官が一同を見回してから、席に腰を下ろした。


「参謀くん。説明をお願い致します」


メルが参謀を促した。


地の妖精である参謀が挙手をしてから、立ち上がった。

参謀はインテリメガネの、地味な小父さんだった。


「えーっ。それでは、わたくしから作戦内容の説明を…。此度の注目点は、敵の特殊部隊が携行する装備にあります。先ずは、こちらをご覧ください」


会議室の巨大スクリーンに、丸い物体が映し出された。

厚みのある円盤だ。


「こちらの円盤が、妖精を吸引して捕獲する魔法具であります。ミッティア魔法王国軍では、魔素収集装置、通称ポットと呼ばれております」

「なんと…。忌々しい!」

「ミッティア魔法王国の奴らめ…。許せん。許せんぞ!」

「怪しからん。ぶちのめしてくれるわ!」


会議室が怒りの声でどよめいた。


「静粛に…。落ち着くのだ、諸君…!」


メルが妖精たちを黙らせた。


「説明を続けたまえ…」

「はっ。妖精女王陛下…。特殊部隊は、それぞれに魔法遮蔽術式を装備しています。総勢十名と頭数は少ないですが、地下迷宮の防衛隊だけでは心許ありません。せめて魔素収集装置と魔法遮蔽術式は、妖精打撃群で破壊しておきたい」

「方法は…?」

「妖精母艦メルによる直接攻撃が、もっとも効果的でしょう。しかし、ここは折角の機会でもあります。魔素収集装置の耐久度を確認するために、飽和攻撃を仕掛けてみるのも一興かと考えます」


「妖精航空部隊の特攻で、妖精捕獲器(ピクシー・トラップ)を破裂させるのか…。それは面白い!」


血の気が多い副司令官は、参謀の提案に賛同した。


「魔素収集装置が、妖精航空部隊の飽和攻撃に耐えきる可能性は…?」


メルが心配そうに訊ねた。


「まず、あり得ませんな。しかし…。そのような事態が生じたときは、妖精母艦メルで体当たりを敢行します。ブーストをかけて頭から当たれば、大概のターゲットは砕け散る事でしょう。今のところ妖精母艦メルの物理攻撃は、最強です」

「ふむっ、よろしい…。本作戦名をマディー・ストリーム(濁流)と定める。他に問題となりそうな要素は、あるかね?」


「はい…。大きな問題点がひとつ残されております」


参謀が困ったような表情を浮かべた。


「作戦の開始日時をこちらで決める事が出来ません」

「それで…?」

「そうなりますと、妖精母艦メルを帝都ウルリッヒの地下迷宮に転移させるタイミングがいつになるか…。しかも敵が作戦行動に移れば、こちらには一刻の猶予もありません!」


「えーっ?」


ここに至り、メルにもマディー・ストリーム作戦の問題点が見えてきた。

昼夜問わずに、異界ゲートへと飛び込まなければいけない。

パジャマ姿での出撃も、あり得た。


「何とかならんの…?」

「こればかりは、相手次第ですので…」


夜中の出撃とか、勘弁してほしかった。

ヨイ子のメルには大問題だった。


(もぉー。イヤな予感しかしないんですけど…!)


又もやメルの口もとから、ヒラヒラとカイゼル髭が剥がれ落ちた。




◇◇◇◇




炊き出しを終えて事務所へと戻ったフレッドは、ワレンからの報告を受けて眉をひそめた。


「つまり、ナニか…。あのガキ共は、地下迷宮に降りちまったのか?」

「手下たちの報告を信じるなら、そう言うことだ」

「いや、しかし…。普通は、そんな真似をしないだろ!」


「まぁー、そうだな。おれでも余程のことが無い限り、アソコへは降りねぇ…。あーんな、クソみてぇな場所は、お断りだ。おっかねェー!」


探索、追跡、隠密行動を得意とする狩人のワレンが、帝都ウルリッヒの地下迷宮を悪しざまに罵った。


「そんで若い連中も、尾行を止めちまったのか…?」

「正しい判断と言えるな…。その先、ついて行かなかったから、無事に帰って来れたのさ」

「いや、そうじゃねぇだろ!何でガキ共を止めなかったんだよ」


「あのアホ共に、自己判断なんかできるかよ。ヨルグに殴られ過ぎて、オツムが幼児レベルなんだぜ!」


ワレンが無理ムリと、顔のまえで手のひらを振った。


「フレッド…。それほど心配する必要は、無いと思いますよ」


貴公子レアンドロは美しい金髪を黒い飾り紐で縛りなおしながら、フレッドとワレンの会話に割り込んだ。

涼しげなアイスブルーの瞳が、穏やかに笑っていた。


「地下迷宮の危険は、皆が思っているほど無差別じゃありません。迷い込んだのが健気な孤児たちなら、きっと目こぼしをしてくれるでしょう」

「ハハッ…。まさに、経験者は語るだな…」


かつてレアンドロは、地下迷宮の亡霊に助けられている。

ワレンが厭味ったらしく口にした経験(・・)とは、緑色に光る三人の女と言う怪談話である。


「死霊、怨霊の類が徘徊する地下迷宮だぞ。そんなもん目にしただけで、心臓が止まるわ!」

「そうだぜ。甘い。甘々だよ。レアンドロ…。オマエさんを助けたのは、姉ちゃんの亡霊だからなぁー。特別待遇はヨォー。美青年に限られるんじゃないか…?薄汚れた孤児や人相の悪いチンピラは、頭から齧られちまうかも知れないだろ!」

「ちょっと、ワレン。フレッドも…。わたしに絡むのは止めてください。そんなに心配なら、わたしが探しに行きましょう」


レアンドロが、二人を突き放して言った。


「まじかよ、おい!」

「本気か、レアンドロ…?」


「フッ…。それが良識ある大人の務めと言うモノでしょう…」


余りのイケメンぶりに、フレッドとワレンが黙り込んだ。


「さあ、ワレン。行きますよ!」

「えっ。なんでおれ…?」

「アナタの探索魔法がなければ、孤児たちを探せませんからね」

「イヤだよ。おれは行きたくねぇ!」


「このチームでは、ツーマンセルが原則です」


レアンドロは有無を言わさずに、ワレンを引っ立てた。



ワレンは亡霊が大の苦手だった。






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【エルフさんの魔法料理店】

3巻発売されます。


よろしくお願いします。


こちらは3巻のカバーイラストです。

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こちらは2巻のカバーイラストです。

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ミケ王子

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なろうの書報へ跳びます!
― 新着の感想 ―
[一言] 調査隊のみならず、彼らの母国であるミッティア魔法王国もそのうち何とかしなきゃならないかも? 核反応の仕組み教えたら、妖精達が勝手に核絨毯爆撃とかしそうでコワイかも。
[一言] メルのカイゼル髭は”泡立ちココア”のおヒゲの方が良いと思います(o゜▽゜)
[気になる点] なんか話があっちへ飛んだりこっちへ飛んだり夢の中の話だったりアジトの中の罵り合いだったりでわけわからんちんですわー。 部分部分1話ずつとかに分けて書けんかったもんやろかと思ってしまう読…
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