街へ行こう
奴隷商人の懐に地図があったので、字が読めるのか確認することにした。
「この先に街? ドロアーテでいい?」
「そうよ、ドロアーテ」
通じたね。
「私はドロアーテで奴隷として売られる予定だったの。でも街としては大きいからマサヨシが活動するには良い所かもしれないわね」
あまり行きたくないのか、クリスは嫌な顔をする。
「行かない方がいい?」
俺が尋ねると、
「いいえ、マサヨシが行くなら、ドロアーテに行くわ」
と、何かを決心したように言った。
「じゃあ、まずドロアーテへ」
馬が殺されたので歩くしかない。まあ、馬が生きていても俺には扱えない。歩くしかないのか。
ふと、移動も『イメージ』で何とかならないかな……?と思った。やっぱ「平原を走る(疾走する)」といえば、「〇ム(ド〇ワッジでもヨシ!)」。ジャイアントなバズーカを持って中腰のホバーで走る。子供のころブラウン管テレビで見ていたのだ。そのド〇をイメージして……いけた。足が数センチ浮き上がる。そして前進をイメージすると移動を始める。意外と安定。俺の体型も〇ムっぽいからかな? 二秒ぐらいでクリスが点になった。俺的に、この移動を高速移動と名付けよう。
勝手に満足していると、ありゃ? クリスがちょっと怒ってる。やばっ、と思い急いで戻った。
「魔法を使ってしまいました。ごめんなさい」
先手で謝る。嫁さんが怒っていた時はこれが一番だ。
「ずるい。放っていくなんて……」
えっ? クリスがちょっと涙目だ。何とか許してくれないかな?
「うーん、だったらこうやって連れていくことにする」
そう言って抱き上げた。俗に言う「お姫様抱っこ」。
嫁との結婚式以来か? 前撮りでウエディングドレスの嫁を抱っこさせられたっけ。滑りやすい生地だったから苦労したよな。などと思い出す。
ん? クリスはおっさんに抱っこされるのは嫌かな? おっと、顔を赤らめて手を首に回してくる。許容されたようだ。細い体だが、出るところは出ている。気になるが気にしないように努力する。
「さて、ドロアーテへ行こう」
全速で街道をホバー移動開始。意外と音しないのね。エンジン使ってないからか? 後方へエアらしきものが噴き出す音が「シュー」ってするだけ。
うーん、町までの距離感がわからん。あの適当な地図じゃ仕方ない。マップ表示できんかな? そう思うと、手に入れた地図よりも正確な地図が視界の右上に表示された。拡大すると半透明になり、視界全体に現れ縮尺も調整できた。
さすがにナビゲーションは無理だろう。あれ? マップ上に矢印が表示。地図上にもルート表示。道なりに行けって?
なら、レーダーとかも? 周囲の魔物黄色、敵対者赤表示、その他、白表示……すると、光点が表示された。とりあえず近くに敵は居ないことがわかる。
どれくらい速度が出てるだろう。そういや〇ムって、時速九十キロメートルぐらい出るらしい。クリスは速度に慣れていないか、抱き着いて目をつむったままだ。胸のふくらみが当たるのだが、それは役得ってことで……。
そういえば道に人が居ない。ゴブリンたちが原因なのかもしれない。あの奴隷商人のように、わざわざ危険を冒してまでこの道を選ばないか……。お陰で目立つことなくドロアーテへ近づくことができた。




