ん?
「あなたバケモノ?」
クリスが急に訳の分からないことを俺に言った
「何もわからんよ、だってこの世界に来て一時間経ってないんだぞ? ステータスなんか知るはずないだろ?」
本当にわからん。
「この世界?」
クリスは不思議そうに俺を見た。
「ああ、俺この世界の住人じゃない。信用してもらうしかないが向こうの世界で事故にあって飛ばされてきたんだ。ほらこんな服見たことある?」
俺のスーツの襟を持ちアピールをする。
「確かに珍しい服だとは思ったけど……そんなもんかなって……」
クリスにスーツを「そんなもん」で片づけられた。
「だから俺はこの世界のことを全然知らないんだ。クリスが色々教えてくれるとありがたい」
一般常識も何も知らないのだから正直必死だ。
クリスは少し考え、
「わかったわ、私がフォローしてあげる。助けてもらった恩返しもしたいしね。でも、この格好じゃちょっと……」
確かにクリスの服装は奴隷用の汚れた貫頭衣を一枚着ているだけである。ちょっと動くと下からは金色の茂みがチラチラと見えるのだ。
「クリス、確かにこれじゃ男に襲ってくれって言っているようなもんだね」
「でもマサヨシは何で襲わない?」
「そのつもりが無い。妻に悪い。それにクリスが綺麗すぎて触れないからかな?」
「え? 結婚してるの?」
そんなに驚くこと?
「正確には結婚してた」
「ごめん」
察したのかクリスはシュンとする。
「ああ、別に気にしなくてもいいよ。はいこれでも羽織ってて」
俺は上着を脱ぎクリスの肩にかけた。
さてと、何か残っていないかな?
馬車の荷台にはいくらか荷物があった。
それを漁ってみると袋が出てきた。中には女性用? 白いレザーアーマー、装飾されたレイピア、あとは袋の中に服と下着。
ふむ、馬車には奴隷商人とクリスしか居なかったはず……奴隷商人は男性だから、女性の持ち物と言えば?
「これって、クリスの?」
ニヤリと笑ってパンツらしき下着を広げてクリスに聞いてみた。
「バカっ!!」
クリスは服の入った袋とパンツらしき下着を強引にむしり取ると馬車の陰に隠れた。
お着換えですか?
しばらくすると、そこには冒険者クリスが現れた。
「これが本当の私」
羽織っていた上着を返してくれる。
白い服とデニム系のパンツ。そして白いレザーアーマー。白銀のレイピア、白で統一された装備を付けたクリスは輝いていた。
「それ、すっごく似合ってるね。その格好のほうがクリスらしそうだ」
「バッ、バカ恥ずかしいじゃない!」
クリスの顔が真っ赤になった。
「やっぱり、あなた強い?」
クリスは気になるのかもう一度聞いてくる。
「うーん、何度聞かれてもわからない。どうかした?」
「マサヨシ、魔物や人と隷属の契約する場合、契約される者、契約する者のどちらか強い方に能力が引き上げられるの。前の奴隷商人の時、私は強くならなかったけど、あなたとの契約に移行した瞬間凄い力が湧いてきた。ちょっとステータス見てみるわね」
クリスは何か声を出そうとしたが、
「ステータス見えるの?」
俺の質問で遮ってしまったようだ。
「ああ、冒険者ギルドのカードにはその冒険者の能力を表示できる機能があるの。数値じゃなくてランクだけどね。ちょっと失礼、ステータスオープン!」
ん?……クリスが焦っている?
「力が、AからSSに上がってる、えっ他も軒並み二段階上昇?」
後で聞いたのだが、ステータス画面にはHP・MP・STR・INT・AGI・DEX・VITが表示される。HPはその人の生命力、MPは魔力、STRは物理攻撃力、INTは魔法攻撃力と魔法防御力あと知識も、AGIは素早さ、DEXは器用さ、VITは物理防御力を表すらしい。
STR・INT・AGI・VITのランクはF~EXまであるらしく、段階としては、F→E→D→C→B→A→S→SS→SSS→EXと強くなる。
Eランクは一般人程度、Aランクが一万人に一人、Sランクが十万人に一人、それ以降は十倍毎に一人程度という事だ。
クリスのSTRがSS、百万人に一人のレアな人になったのか……良かったね。
11/7 AGIに器用さ補正があることを追加しました。