開店
誤字脱字の指摘、たいへん助かっております。
オセーレの王宮で出されているケーキとプリンは好評であり、どこで生産されているのかということも話題になっているそうだ。どこかから漏れたとしても俺んちまで来る勢いがある貴族は居ないだろう。
そして、
「近日中にオセーレとセリュックでケーキとプリンが食べられる店が開店する」
と、貴族のご婦人方の噂になっているそうだ。
ちなみに現在サラの弟子は五人になっており、その弟子たちの作る物の味もサラとほぼ変わりがない。
皆には白い服、白い帽子、マスクを着用してもらっている。
サラとその弟子たちは腕を上げ既にケーキとプリンの生産体制はできていた。
ベンヤミンに依頼していた氷の冷蔵庫は完成。
氷の制作はサラが行うようだ。
ガラスを取り付けショーケースになっている。
そしてオセーレ、セリュック店も完成。
その冷蔵庫兼ショーケースをカウンター代わりにして置く。
店は別に広くはない。カウンターのほかに奥には四人掛けのテーブルが二つ、食べて帰ることも可能だ。馬車が停められるような場所も確保。どうせデカい馬車に対して降りてくる者はそう多くないだろう。
中には八分割のホールケーキ四個分、つまりショートケーキ三十二個、プリンは五十個を陳列。
ケーキは八個ずつ、プリンは十個ずつで飾りと味を変えるという話になっている。
種類を増やすことで更に希少性を上げるらしい。
追加の生産はせず、ショーケースの中の物がなくなれば終わりということにする。
さて、どうなることやら……。
そして当日。オセーレ店の停車場には「どこにそんなに貴族が居たんだ」と言うくらいに馬車が停められてれていた。
ずらりとメイドと執事らしき者たちが入口に並ぶ。
金に飽かせて買い占める可能性もあるので、一人につきケーキ、プリンともに二つまでの制限をつけた。
俺は店内から列を覗く。
「後ろの方の奴等、絶対買えないよな」
俺が、子供達に言う。
すると子供の一人が
「マサヨシ様、まず無理かと……」
と言う。
用心棒兼店長代わりのクリスが、
「『上位貴族が下位の貴族に圧力をかけて取り上げる』なんてのも起こるかもしれないわね」
などと言っていた。
「結局、生産量を増やせって事か? ギリギリの生産じゃないとは思うが」
「いいえ、これでいいのです」
王宮からやってきたマリーさんが言った。
「権力を使って取り上げようとする貴族など潰してしまえばいいのです」
マリーさん、恐っ。
ケーキのために潰された貴族ってなんか情けないような気がする。
俺は紙に数字を書き、並んだ順番に数字を書いた紙を渡した。つまり整理券だ。
その後、マリー王妃様登場で店の前がざわつく。
「私から言っておきます。多分並んだ者全てがこの店のお菓子を買えるわけではありません。ですから買えないからと言って文句を言わないように! 権力を使って取り上げようとする貴族が居たと聞けば王に言って厳罰に処します。買った者が食べればいいのです」
ケーキで厳罰って……。
実際に食べるのはどこぞの貴族のご婦人か子供ってところなのだろうがね。
これで、貴族は下手なことができなくなった訳か……。
そして開店。
テキパキと店舗スタッフは動き、客を捌く。
うちのケーキとプリンはあっという間に売り切れた。
並んだ者の半分も買えなかったのではないだろうか。
ケーキに至っては、きっちり十六人で売り切れた。
肩を落とし去っていくメイドと執事たち。
主人の期待に応えられなかったからか?
貴族も怒らなければいいが……。
そして、馬車は俺たちの前から消えた。
オセーレの店からセリュックの店に移動してみると、
「主よこんな感じだ」
開店後のピークが去り、暇そうなリードラが居た。
リードラも用心棒兼店長だ。
ケーキもそこそこ売れ残っていた。半分ぐらいかな?
そりゃ、庶民に手が出るような菓子ではないからなぁ。
それに知名度が上がっているのはオセーレの貴族だけだろうし。
「買い物に来る客も、貴族も居たが商人が多かったようじゃ。貴族や同業者のお茶うけになるようじゃな」
比率的に、オセーレ七、セリュック三ぐらいで良さそうだ。それでもオセーレは足りないだろうが……。
セリュック側の店には少しお金を持った商人の夫人が数人でテーブルで紅茶と一緒に食べる姿が見えた。
こっちは喫茶店ぽいか……。
初日はオセーレの店は完売、セリュックの店は七割が売れた。二店舗で売り上げが約金貨十枚。原価は小麦代ぐらい? 炎は精霊なのでタダ。建物と土地はオセーレもセリュックもタダでいいと言っているが結局一か月金貨二枚を払うことにしている。
原料費、場所代のために金貨1枚積み立てるとしても、九枚は残る。
そのうちいくらかは子供たちの積み立てにするとしても……ぼったくりだな……。
残ったケーキとプリンは、家に帰ったあと店舗スタッフの子供たちで食べることにした。
明日以降は余ることは少ないだろうからね。
ただ、なぜか居るマリー王妃。
「マサヨシさん、すみません。お母様、セリュックで売れ残っているのを聞いて無理矢理来たんです」
イングリッドが俺の耳元で囁いた。
「マサヨシさん、ケーキは披露宴で出るんでしょ?」
「ええ、まあ、そのつもりですが」
「だったらいいの。期待してるわね」
まあ、派手にするならウエディングケーキぐらいは作ろうかと思ってはいた。
「期待しているわね」のあと、余ったケーキの下へ行くマリー王妃。
結局そっちなのね。
「一人一つ以上はあるけど……、どうなのかしら」
マリー王妃が言った。
「『どうなのかしら? 』とは?」
俺が聞くと、
「いいえ、はしたない考えですから……」
要は、二個食いたかったのね。
「とりあえず、一人一個です。残りは俺の収納カバンに保存しておきます」
「私が欲しいと言っても?」
「権力を使って手に入れてはいけないんでしょ?」
「うう……」
残念そうなマリー王妃。
「まあ、マリーさんは私の母になる人です、あとでこっそりお渡しします。内緒ですよ?」
ちょっと離れたところに居たイングリッドが話を聞いて苦笑いしていた。
まあ、どちらにしろ、増産はしなきゃいかんだろうな。あとアイスクリームも脇で売るようにするかな。溶けるから店舗限定ってことで……。
いろいろ考えさせられる開店であった。
仕事が忙しいため更新が滞っています。申し訳ありません。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




