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糸を作る準備

誤字脱字の指摘、大変助かっております。

「糸を紡いだり機を織ったりできる人は見つかった?」

 俺はランヴァルド王(オッサン)に聞いてみた。

「居ることは居たのだが、協力してくれなかった」

「なぜ?」

「それはな、紡いだ糸や機を織って作った布はその貴族の領土にとって重要な産物だからだ。その技術が漏れることで収入が減る可能性があれば、貴族たちは渋る」

「他のところで安くて良い布が作られたりしたら死活問題になると……」

「まあ、そういう事だな」

 食い扶持が減る可能性があるか……。

「おっさん的には、もう何もできないって事か?」

「いいや、今すぐは無理だが時間を貰いたい」

「できるだけ早くしたいから、俺も自分で探してみるよ」

「わかった、こちらも努力する」

 俺は、王の部屋を離れ家に戻った。


「うーん、上手くいかないもんだなぁ。意外と糸をつむいだり、機を織って布を作ったりするところは多いような気もするんだが……」

 ボソボソと独り言を言っていると、

「ご主人様、どうかなさったのですか?」

 心配そうにフィナが聞いてきた。

「フィナか、いやな、新しい布を作りたいんだ。だから、糸をつむいだり、機を織ったりできる人が見つからない。見つかったとしても、産業として成り立っているから囲われて協力してくれない。まあ、金が絡んだら面倒って事なんだろうな」

 フィナが

「糸を紡ぎ、機を織る? それでしたら私がやりましょうか? ……と言っても、母親を手伝った程度ですが……。私の村では自分たちの着る服は自分の家で母親が作っていました。ですから、そういう事もやっていたのです。機織り機は大きなものではなく手作りの小さなものでしたが、構造は同じでしょうから扱えると思いますよ」

 意外と身近なところから人材が見つかった。


「ますたぁーーー! お呼びですかぁーーー!」

 いつもの勢いでやってくるアグラ。

「おう、呼んだぞ」

 俺の右肩に乗ると、

「で、何の用でしょう?」

 テンションが戻り素の言い方で聞いてきた。

「マジックワームの階層を作りたい」

「畏まりました、えーっと、幼虫、蛹、成虫とありますが」

 食べ物の店で注文している感じに思える。

 ふと気になったことがあったのでアグラに聞いてみた。

「一つ聞いていいか?」

「何でしょう」

「あのな、ポチたちは俺の魔力で生活できるって言ってたんだが、マジックワームとしてはエサが要るのか?」

「はっ」っと、アグラは何かに気付くと、

「えーっと、あのぉ、エサは要りませんね」

 申し訳なさそうにアグラが言った。

 ふむ……。

「いや、怒ってはいないんだよ。アグラが居てくれたことで俺は凄く助かっているからな」

 俺はアグラを撫でた。

「それじゃ、シュガーアントのところでマジックワームの幼虫を出して、隷属化して糸を出してもらうか……だったら、ダンジョンは要らないな」

「それじゃ、シュガーアントのところに行ってみましょう」


 久々のシュガーアントの巣。

 働きアリも兵隊アリも増え、巣の中を所狭しと動いていた。

 そう言えばサラから、

「お菓子用の砂糖の消費では、シュガーアントたちが持ってくる砂糖を消費しきれません」

 と言う報告があった。巣が大きくなった分、出来上がる砂糖も増えたのだろう。

 俺が中に入ると、シュガーアントたちは両端に分かれ俺の前に道ができる。

 すると奥からシュガーアントの女王アリであるミヤが現れた。

「どうしたのです、マスター。何かありましたか?」

 ミヤが聞いてきた。

「悪い、魔物を出したいんでここを使わせて欲しいんだ」

「それは問題ありません。仲間の魔物だということも周知できますから丁度いいでしょう」

 その話を聞き、

「ではさっそく」

 少しアグラが輝くと。茶色い十匹のイモムシが現れた。

「じゃあ、俺もさっそく」

 契約台を出し、それぞれに隷属契約をした。

 白いモス〇と黒いモ〇ラになる。

「あのー、マスター、マジックワームじゃなくなりました」

「えっ?」

「ヘブンワームとヘルワームの幼虫に変わりました。この糸から布を作り服にするのですよね。糸が切れるハサミがあるのでしょうか……不安です」

 白がヘブンでクロがヘル、天国と地獄。

 と言うか、糸が切れるかどうかわからないレベルなんだ、最悪ドランさんにハサミ作ってもらおう。

「お前ら、俺の言うことわかる?」

「キッ」と言って頷く〇スラたち。

「今後、君たちを『ワームズ』と呼ぶ。いいかい?」

「キッ」と言って再び頷くワームズだった。


「これじゃ、売れないよな」

「多分、売らないほうがいいかと……」

「進化したら、マジックワームになる魔物は何になる?」

「シルクワームですね」

「シルクワーム?」

 シルクと言う名前に反応してしまう。

 この世界でもシルクは高級だったと思う。

「ちなみにシルクワームになる魔物は?」

「ウッドワームですね。そんなに聞いてどうするんですか?」

 不思議そうに俺を見るアグラ。

「じゃあ、シルクワームとウッドワームをニ十匹ずつでよろしく」

「畏まりました」

 そう言ってアグラが出したシルクワームとウッドワームを隷属契約をすると、思惑通り

「あっ、マジックワームとシルクワームになりました」

 とアグラが言った。

「えーっと悪いんだけど、お前等呼ぶときは『マジックワーム』と『シルクワーム』だから」

 マジックワームとシルクワームはちょっと残念そうな雰囲気で「キッ」と言って頷いた。

 ちなみに、ワームズたちの体長は三メートル、マジックワームは一メートル、シルクワームが五十センチぐらいだった。

 シルクワームってカイコだと思っていたが、大きさ全然違う。

 それにワームズが成虫になったらどうなるんだろう……。

「人に危害を与えられない限り攻撃をしない。攻撃しても殺さない」というルールを芋虫たちに教えたあと、芋虫たちは、俺の家の敷地を闊歩することになった。

最初は皆大きさに引いていたが、何人もの子供が芋虫部隊の背に乗って遊ぶ姿が目撃されるようになる。その芋虫の側面にはチョークで花や空の絵が描かれていたりした。

わんこ部隊にも周知して問題はない。


 俺はアグラと共にカールの居る支店に行く。

「いらっしゃいませ……。あっ、マサヨシ様」

「マサヨシ様だ!アグラちゃんもいる」

 意外と人気があるアグラ。

「おう、頑張ってるか?」

 カールの手伝いをしている子供たちが俺の周りに集まってきた。

 獣人三人。犬系の獣人で尻尾をブンブン振っていた。

「はい、カールさんに色々教わっています。帳簿の付け方も教わりました」

「そうか、頑張れよ」

 頭をワシワシと撫でると、獣人たちは目を細めていた。

「騒がしいと思えば、マサヨシ様でしたか。子供たちは凄いですね。私が言わなくても動いてくれます。正直、リンミカの店に居る店員よりもよく働きますね。コレなら我が商会で雇い入れても問題ないぐらいです」

「そうか、だったらいいんだ」

 そう言う話を聞くと俺も嬉しい。嬉しくてニヤニヤしてしまう。


 するとカールは畏まり、

「今日は何か?」

 と聞いてくる。

「ああ、糸紡ぎ機みたいなものは手に入らないかと思ってね」

「それはまた珍しい。何か始められるのですか?」

 興味津々でカールは俺に聞いてきた。

「マジックワームの糸を使って服を作ろうかとね。シルクワームも手に入ったから、」

「マッ、マジックワームですか? 絶滅したと思われましたがどうやって?」

「ダンジョンで見つけたんだ」

 まっ本当の事だよな

 カールの手もみが始まる。商機を見つけたと思ったのだろう。

「えーっと、私どものところに卸してもらえるのでしょうか?」

「注文数のみと言うのなら考えなくもない。魔族の国に、世話になった商人が居るからそっちには数を卸して販売してもらうつもりだ」

「それで十分だと思います。少数のほうが希少価値が付きますから……」

 あっ、悪い顔してる。

 高く売るつもりか……。まあ、いっか。

「実際、糸紡ぎ機は手に入りそう?」

「わかりました、手配します。ただ、急なので時間はかかるかと……」

「だったら、どうせ後で使うから機織り機も同時に頼むよ。糸紡ぎ機を五十台、機織り機を十台で」

 まあ、余っても問題ないだろう。それに機織り機は自動化したい……。

「畏まりました。早急に手配しておきます」

 カールは俺に頭を下げた。そして、俺の耳元に近づくと

「最近、商会の扱う貴金属の量が増え、疑問を持つものが増えていると聞きます。従業員には口止めしておりますが……」

「そろそろ漏れる?」

「はい、その可能性が……。道も整備されましたので、この近辺へ来ることも容易になりました」

「でもな、カール。その辺の盗賊が俺んちのわんこ部隊から逃げられると思うか? 最後にケルベロスとフェンリルだぞ?」

 芋虫部隊も追加されたしな。

 少し考えるカール。

「ちょっと可哀想に思いますね」

「生かして捕まえるだろうから、契約で縛りつけて強制労働でもさせるさ」

 そう言って、支店を離れた。



 しばらくすると、カールから糸紡ぎ機が届いたと連絡があった。

 フィナと共に糸紡ぎ機を受け取り、ワームズのもとへ行く。

 カールも見てみたいと言って付いてきた。

「おーい、今空いてる?」

 ヘブンワームの一匹に聞くと、

「キッ」っと言って頷いた。

「えっ、これ聞いた事あるマジックワームと違うんですが……」

 ワームズの大きさにカールが引く。

「何言ってるんだい、これはマジックワームじゃないか」

 強引にマジックワームで通す。

「糸出せる?」

「キッ」

 ヘブンワームの口から糸が飛びだす。

「ちょっと止めて」

 吐き出した糸は細い糸がいくつも集まった物。一本の糸じゃないんだな。

 切ってみようとしたが、俺の力でも切れなかった。引っ張りに強いって奴か……。

「糸切れる?」

「キッ」

 すると、口からポロリと糸が落ちた。よく見ると粘液のような物で溶かして切っている。最悪、ハサミ代わりにワームズ使わなきゃいけないかな。でも、まずは一番硬いと言われているオリハルコンでドランさんにハサミを作ってもらおう。


「悪いが、さっきぐらい糸を少し出して止めてくれる?」

「キッ」と言うと、再び糸が飛び出して止まった。

 その先端をフィナは糸紡ぎ機の糸巻きに取り付ける。

「フィナが糸紡ぎ機で引っ張る速さで糸を出せる?」

「キッキィ」

 余裕って感じで鳴いた。

 ん? よく考えれば、念話でいけるじゃん。

 会話内容念話に変更。

「俺の言葉わかる?」

「アッ、ゴ主人様」

「さっき言ったの出来る?」

「ソコニイル、ふぃなサマニ合ワセレバイイ?」

「そう」

「マカセテ」

 俺はヘブンワームとの念話をやめ、フィナに糸紡ぎをするように言うと。

「わかりました」

 と言ってフィナが糸車を回し糸紡ぎを始める。

 すると、ヘブンワームはそれに合わせて糸を吐き出す。

 するとその糸が撚られ細くなって糸巻きに巻きついていていった。

 糸巻きのが結構な大きさになると、フィナが糸紡ぎを止める。

「こんなものですね」

 出来上がった糸を俺に見せた。透き通るような白。これで布を作れば皆に似合うだろう。

 再び念話で、

「どうだ、糸はまだ出せる?」

「ゴ主人様、ココハ魔力イッパイ。ズット出セル」

「お前らは機械じゃないからな、疲れたら休憩ぐらいはしろよ?」

「ワカッタ、疲レタラ休ム」

「頑張ってもらわないといけないからな」

 頭を撫でると身をよじって喜んだ。


「マサヨシ様、こんな良質の糸見たことがありません」

「カールは糸のこともわかるんだ」

「はい、私、そう言うのも勉強していましたから。マジックワームの服も一度見たことがあるんですよ? そう丁度、マサヨシ様の黒い服……の……よ・う・な……」

 びっくりしているカール。

 あっ、気付いた。

「えっ、これマジックワームの……」

「まあ、そういう事。カールが見たマジックワームの服とは違うだろうが色々あって俺の所にある」

 俺の布地と、糸を見て首をひねるカール。

「それでも、この糸のほうが美しい。そして魔力も感じます、本当にマジックワームなのかなぁ?」

「この服ができてから時間が経ってるから、出来たてとはちょっと違うんじゃないかな?」

「そうですかぁ?」

 疑いの目をするカール。

 マジックワームの上位などと言ったらちょっと問題になりそうだ。


 とりあえず試しで糸を紡いでみたけど、魔物に協力してもらえば意外と簡単にやれそうだ。できたら糸車を回す工程を自動にして糸を糸巻きに取り付ける時と糸巻きを取り外すときを人がやるようにすれば人が少なくてもいけそう。と言うか力がなくてもできる。

 ああ、つまり子供でも大丈夫って事か……。

 小さな子たちで手伝いたいという者が居れば手伝ってもらうかな。 


「マサヨシ様、マジックワームではなくていい、シルクワームでもいいので、糸と布を納めてもらえませんか?」

「別にいいけどまだだいぶかかると思うよ?」

 まずは婚約者優先だ。

「いや、先手を打っておきます。絶対に売れる」

 興奮気味のカール。

「わかった、量産体制ができたら連絡する」

「よろしくお願いします」

 そう言ってカールが去っていく。


「フィナ、皆に合うドレスを作りたいんだ。当然お前の分もね。だから、色々協力して欲しい」

「はい!」

 二人でカールを見送った。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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