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討伐報告

 炎の風の討伐も根城の家探しも終わった。

「さて、町に帰ろう」

「どうやって?」

「さっき作った扉。ドロアーテの入口近くまで行こう。テレレレッテテー! どこでも行けるとびらぁ」

 定番の効果音とともに満を持して、どこにでも行ける扉を収納カバンから出す。似てないだろうが、大山のぶ〇バージョンで未来の猫型ゴーレムの真似までした。

「「「……?」」」

 あれ? 盛り上がらない? 

 何なら、三人から氷点下まで冷めた目で見られている。

「テレレレッテテー。って要るの?」

「その効果音は必要ないと思います」

「意味わからない」

 三人が口々に言った。

 更には、

「何の声?」

「何か物まねですか?」

「何の物まねかわからない」

 三人に散々言われた。

 あぁ、異世界のギャップを感じる。俺はやはりあの世界の人間なんだ。

 一人盛り上がった俺は三人との温度差を感じ、しゃがみ込んで地面に「の」の字を書いてしまった。悲しかった。

 俺はしょぼんとしながら、どこにでも行ける扉を出し、ドロアーテの入口近くに移動できるようにした。

「はい、皆行って……」

 俺のあまりの落ち込みように、

「元気出して」

「マサヨシ様なら大丈夫」

「マサヨシ頑張れ」

 と、三人が慰めてくれた。

 ふう、気を取り直して頑張るか。


 さて、俺も扉を越えた。すぐに、どこにでも行ける扉を仕舞う。

 俺の時計は夜明けを六時に設定し使っている。その指示は十時半を少し過ぎていた。

 列に並んで門番と入街手続きを行うと意外とすんなり? 

「クリス、今回入街税が取られなかったのは?」

 クリスに聞いてみると。

「ああ、それは依頼書があったから。冒険者ギルドなんかで仕事を依頼されていると、街のために働いているということになって入街税は取られないの」

「知らなかった」


 街の中に入ると、クリスが小走りに冒険者ギルドへ向かう。

「どうして? 急がなくてもいいだろう?」

 俺がクリスに聞くと

「だって、冒険者ギルドの鼻を明かしてやりたいじゃない。あれだけ無理だって言ってたのよ! あの焦げ付いた依頼をこれだけ早く討伐を終わらせればギルドはぐうの音も出ないわ!」

 悪いクリスになってる。

「仕方ないなぁ」

「カッとなったら、大変なんです」

「めんどくさい」

 アイナの言葉がきつい。

 ランクが一番高いクリスがこのパーティーのリーダーになっている。俺たちはクリスを先頭に冒険者ギルドに向かった。


 バン!! 

 両開きのスイングドアをクリスが勢いよく開け、大きな足音をさせて受付に向かう。昼過ぎのギルドは人もまばらで音が大きく響いた。珍しく美女いじりもない。

「あなた、この依頼の終了処理をして!!」

 クリスは、受付けへ勢いよく依頼書を叩きつける。更に腰に手を当て受付を見下ろす。

 こりゃ、依頼受けるとき揉めたのを根に持ってるな。

「えーこれは、炎の風の討伐? 今朝、依頼受けましたよね?」

 リムルさんは信用していないようだ。まあ、数か月焦げ付いていた依頼を「朝受けて昼になる前に終わらせる」なんてのは信用できなくて当然だろう。

「本当に終わったんですか?」

「ええ、終わったから終了処理をしてほしいの」

「証明できます?」

「証明する物が必要なら準備するわよ?」

「では、頭であるリューイの首とかはありますか?」

「マサヨシ、見せてあげて」

「はいはい」

 俺は収納カバンのリストを探す。リューイリューイと……死体の所に確かにある。

「首でなくて死体でいいかな?」

 何もないギルドの床に、リューイと呼ばれる男の遺体が出てきた。

「何そのカバン?」

 リムルさんが驚き目を見開く。

「ん? 収納カバン、何でも入って結構便利なんだ」

 俺のいつもの回答。

 遺体を見たリムルさんは、奥に向かって叫んだ。

「ギルドマスター!! 炎の風を討伐したというパーティーが来ました。確認をお願いします」

 すると、素早く筋骨隆々の男が出てくる。見た目〇ナン・ザ・グレー〇? 

「本当か? 何組のパーティーで攻略したんだ?」

 唾を飛ばしながら言う。

「それが、一組なんです」

 興奮しているのかリムルさんも結構声が大きい。

「ここの領主の討伐隊でも無理だったんだぞ? それを一組のパーティーで?」

「とにかく、死体の確認をお願いします」

「わかった」

 そう言うとギルドマスターはリューイという名の男のを手配書を持って確認を始めた。

「間違いないな、容姿や傷跡の位置がすべて合ってる」

「でしょ? だから終了処理をお願い」

 クリスが急かす。しかし、ギルドマスターは俺たちが使った方法を知りたかったのか、詳細を確認しようとした。

「私はギルドマスターのグレッグだ、どうやって討伐したか教えてくれないか?」

「それはパーティーの秘密。商売の情報だから教えてあげられないわ」

「では、他の手下はどうなった?」

「それなら、広い場所を準備してもらえます? この中に死体が二百以上あるので……」

 俺は収納カバンを叩きアピール。

 リムルさんがグレッグさんに耳打ちする。

「わかった、ギルドの戦闘訓練所ならば広い、そこに並べてもらえるか?」

「マサヨシ、いい?」

 クリスが俺に確認を取る。

「ああ、場所を教えてくれ」

 グレッグさんがリムルさんに俺を戦闘訓練場に連れていくよう指示を出した。

「来て」

 言われるままに俺は付いていく。すると直径百メートル程度の円形闘技場のような所に出た。

「ここでいいのか?」

「ええ」

 遺体は等間隔で並べ、見やすいように置く。さすがに二百以上の遺体を並べたら、壮観だった。

「これで全部。あとで確認しておいてね」

 俺はリムルさんに言うと受付へ戻った。


「クリス、遺体は全部置いてきた」

「ご苦労様」

 クリスが労ってくれる。

 フィナとアイナは奥の食堂の机に座って話していた。

「で、報酬はどうなった?」

 俺が聞くと、

「もともとの報酬が、一千万リル、白金貨十枚、あと、リューイとかは賞金首になっているみたい。その分が加算される。それと、遺体が持ってるお金の回収や武器や防具の売却益も報酬になる。ただ、時間がかかると思うわ。これでいい?」

 クリスが説明してくれた。クリスも本当にこれで良いのかグレッグさんに聞き直す。

「ああ、間違いない。お前たちの成果が大きすぎるんだ。少し時間をもらわないと報酬は計算できないな」

 グレッグさんはヤレヤレという表情で答えた。

「ふむ、どれぐらい時間がかかる?」

 俺がグレッグさんに問うと、

「依頼の報酬とリューイの賞金は今すぐ。他の賞金首と、装備の売り上げについては、今から全部確認するとなると、一週間はかかるぞ?」

「では、依頼の報酬とリューイの賞金は今すぐにもらうってことで……。あとのことは一週間待ちます。装備については、魔法がかかっているものを売らないでおいてもらいたい。それ以外は、全部売ってもらって結構」

「わかった、今すぐ準備させよう」

 グレッグさんは後ろに居たスタッフに指示を出した。


 グレッグさんが俺をまじまじと見る。

「ところで、お前がこのパーティーの本当のリーダー?」 

 メタボリーダーじゃダメか? 

「ん? ランクはFですけど、実質はそうなるかな。パーティーに居る女性陣三人の主人です」

「奴隷か?」

「俺は奴隷として扱っているつもりは無いんですけど……。色々あって、まとめ役をするようになりました」

「ふむ、ギルドとしては強いパーティーが居るのは助かる。奴隷だからと言って問題は無い」

 まあ、今回は「強い」と言うよりも「ずる」をしたってのが本音なんだが……。

「役に立てるかはわかりませんが、できるだけ依頼を受けるようにします」

 話しているうちにリムルさんが報酬を持ってきたようだ。

「ギルドマスター、報酬の千二百万リルです」

 受付嬢が白金貨を十二枚と小さな袋をカウンターに置く。十二億だってさ。

「おう、これがお前たちの報酬だ。依頼の報酬一千万リルとリューイの賞金二百万リル、金貨で出そうかと思ったのだが千二百枚は無くてな。白金貨でいいか?」

 俺は金貨だろうが、白金貨だろうがどちらでもいいんだけど、

「かさばらないほうが良いので白金貨で貰います」

 と言うことにした。

「それじゃ、依頼達成のサインをここに頼む」

 グレッグさんはサインの場所を指差す。

「クリスお願い。一応お前が受けたからな」

「はいはい」

 クリスは羽根ペンでササっとサインをする。


「これで、依頼達成ね」

 クリスが嬉しそうに言った。

「初仕事が完了か。あっという間だったが」

「はあ」

 グレッグさんは一つため息をついた。

「あっという間に終わらせるお前たちに問題がある」

「ギルドマスター。マサヨシとアイナはランクが上がったりしないの?」

 クリスがグレッグさんに聞くと、

「ああ、ギルドマスター特例で二人はCランクにするつもりだ。そうすれば、ダンジョンにも入ることができるぞ? 本音を言うと、うちのギルドに強いパーティーが居れば、ギルド側も難易度の高い依頼の達成率が上昇するから助かる。今回のが難易度の高い依頼そのものだがな」

 そういうことらしい。

「ありがとう。正直ランクを上げたかったからね。何か依頼があったら言ってくれ」

 俺はそう答えた。



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