ノーラの仕事
誤字脱字の指摘、大変助かっております。
久々にノーラの所へ行く。
出来上がったケーキを届けるためだ。
ノーラの部屋から出てくる俺にメイドが驚いていたが、俺が後見人であり、婚約者みたいなものだと言うのは知っているので、直ぐに表情は戻った。
「コンコン」執務室のドアをノックする。
「俺だけど大丈夫?」
「ああ、あなた。ちょっと待って開けるから」
相変わらず机の上に書類が溜まった部屋が見えた。
軽い衝撃がある。
俺の胸を見るとノーラが俺の胸にもたれかかっていた。
ノーラがこんな事をするのは珍しい。
「ちょっとお疲れか?」
「そうね、やってもやっても終わらないの。お父様がどれだけ有能だったか、私がどれだけ無能か、思い知らされるわね」
「ふむ」
精神的にも疲れているみたいだねぇ。
俺はノーラと応接セットのソファーに座り。
「ちょっと休憩しよう。新しいお菓子を持ってきた」
「えっ」
新しいお菓子に反応するノーラ。
勝手に机の上の鈴を鳴らすと、メイドがやってきた。
「紅茶を二つ持ってきてもらえないか。あと、小さめのフォークも……。 今からノーラに休憩をさせるんでね」
メイドもノーラを心配していたのか、
「はい、畏まりました。すぐにお持ちします」
と返事をして部屋を出ていった。
残ったホイップクリームのゴッペケーキ、ワンホールについては、既に八等分し皿に載せてある。
その一つをテーブルの上に置いた。
「あっ、綺麗」
思わずノーラが呟く。
しばらくするとメイドがトレイに載せ、紅茶を持ってきた。
ケーキを見て一瞬「えっ」という顔をしたがすぐに取り繕い部屋を去った。
「ほい、紅茶と一緒にこれを食べてくれ。ああ、甘い紅茶が好きならゴッペジャムを入れてもいいし」
紅茶の横にケーキを差し出す。
「これがお菓子……」
スプーンで一掬いして口に入れる。しばらくの沈黙のあと、
「甘酸っぱくて美味しい。こんなの食べたことない」
美味しさに驚いたのか、目を見開いて言った。
「疲れている時は甘いものをとるといいぞ」
「これを私のために?」
「んー、ノーラのためって言うなら違うかな。俺が食べたいから作った。で、ノーラに食べてもらおうと思って持ってきたわけだ」
「私のためって理由じゃないのは残念ね」
ちょっとむくれるノーラ。
「代わりに休憩の理由にはなるんじゃないかな?」
「確かに休憩をとって紅茶を飲む理由にはなったわね。ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
「美味しいお菓子を頂いたから、そろそろ仕事に戻らないと」
書類が積んである机に向かうノーラに、
「俺に手伝えることは無いか? 少々なら書類を見るぐらいはできそうだけど」
と聞いてみた。
唇に人差し指を置いて考えるノーラ。
「これ見てもらえる? 農地関係の書類なんだけど……」
俺は十数枚の書類に目を通す。
「開墾はできたけど水源が無い?」
「穀物の生産量を上げたいの、でも開墾しても水が無ければ植物は育たない」
「井戸は?」
「無闇に井戸を掘ってもね。精霊にでも訊けば……あっ」
何かに気付いたようだ。
「そういうこと、現場に行ってスイに聞けば掘る場所を教えてくれるかもしれない。何ならクレイに頼めば穴を掘ってくれるかも」
「そんなことをしてもらっていいのですか?」
「ノーラ、俺は後見人だぞ? だから面倒なことは甘えていいと思うが」
ノーラは少し考えると、
「じゃあお言葉に甘えて、手伝いをお願いします」
嬉しそうにノーラが言う。
「おう、任された。」
井戸掘り確定になったあと、再びノーラが俺の前に書類を持ってきた。
「あなた、これもお願いしていい?」
「ん? 見せてみて」
ノルデン侯爵領の森で魔物が増えているということだった。俺にとっては取るに足らない魔物ではあるが、住人にとってはそうはいかんだろうな。
「このオクニって村の近くに森があるんだな?」
「昨日村からの陳情が入ったのですが。冒険者を探すにも難しく。領内の騎士団に通達を出し、討伐の準備をしているところなんです」
既にマップにはオク二村が表示されている。
意外と近い。高速移動で一時間程度?
「じゃあ、コレは俺が行ってくるよ。騎士団だと経費がかかるだろう?」
俺はそう言って立ち上がった。
「今からですか?」
「ああ、今からだ。領民が困っていると言うなら早いほうがいい」
「いっ、一緒に行っても?」
モジモジモードのノーラ。
「それは構わないが、なぜ?」
「私はあなたが戦っている姿を見たことがありません」
「魔物が居るから危険だし、見ても気持ちのいいモノじゃないと思うぞ?」
「危険はあなたが何とかしてくれるのでは? それに、私も剣は扱えます」
「仕事は?」
「これも仕事です」
じっと俺を見るノーラ。
聞きやしねえ……。
「わかったよ」
「えっ、あなた、いいのですか?」
ノーラは許可が出て喜ぶ
甘いねぇ俺も……。
精霊を護衛に付けておけば何とかなるかな?
「今回だけだぞ? 領主が怪我したってことになったら目も当てられない」
「はい、今回だけです。あぁ、嬉しい」
「じゃあ、汚れていい服にでも着替えてこい」
「わかりました」
ノーラはそう言うと、執務室を飛び出し自分の部屋へ駆けていくのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




