服を買おう、再び
「お前、服買うとこわかる? お前くらいの年齢の」
コクリ
アイナは頷くと、俺を引っ張り歩き出した。しばらく歩くと、俺たちが使った衣料品店とは違う小さな店に出る。
「ここ」
俺は、アイナを連れて、店に入った。
「いらっしゃい、何か用かい?」
ちょっとコロッとした女性、ちょっと色黒? ああ、ドワーフって奴か。でも皴とかから見たらおばちゃん? んーわからん。
「この子の服を見繕ってほしい。俺じゃセンス無いんでね。この子と相談しながらやってもらえると助かる」
「予算は?」
「ああ、この時期に一週間旅ができる程度で、服、下着、靴下、靴があれば靴もね。金貨一枚までなら問題ない。納得できれば二枚でもいい」
「金貨一枚だって? どこのお嬢様だい?」
そういや、金貨一枚って百万円、金銭感覚マヒしてるな。
「冒険者として戦闘もあるかもしれないから、そういう服もね」
「わかったよ。嬢ちゃんおいで」
アイナはおばちゃんに手を引かれて奥へ行った。
時間がかかると思い、俺は服を見て回る。あぁ、これってメイド服に近いね。へアドレスとかもある。アイナはこういうのが好きなのか? 色々なアクセサリーも並ぶ。そりゃ、女性はアクセサリーも好きだよな。あまり嫁には買ってやらなかった。今更の反省か……。
ん? これはバレッタって奴? そういや、髪を纏めやすいからって嫁が使ってたな。濃い緑、銀、あとは黄色? 三人の髪に合わせるか。って、三人は嫁の代わりじゃあるまいに。
俺は、無造作に並んでいるバレッタの中から、同色の物を取り出す。その横にヘアブラシを見つけたのでそれも手に取った。そしてカウンターへ向う。
俺がカウンターに着くと、すでにアイナの買い物は終わっているようだった。アイナの服も新品に変わっている。クリスやフィナより早い。
「はいよ、金貨一枚分の服だ。これだけあれば、旅だろうが冒険だろうがどこでも行ける。普通の靴とブーツにしたからちょっと足が出たがいいかい?」
相場は知らないが、アイナは納得しているようだったので気にしなかった。
「これも入れてくれる?」
バレッタとヘアブラシをカウンターに並べる。
「それで、いくら?」
「一万二千リル」
「じゃあ、これで」
金貨一枚、銀貨二十枚を渡す。
「まいどありー。あんたらみたいな客だったら、いつでも歓迎だよ。また来ておくれ」
服の入った袋をもらい、俺たちは店を出た。
そのまま宿に帰る。カウンターでカギをもらい、部屋に戻った。
「あー、あいつらまだ起きてない」
リビングには誰も居なかった。
まだ夕食には早いかな? 飲み疲れているんだろう、放っておくか。