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私はただ錬金術を極めたいだけです  作者: 雪華
第一章
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009.イズミ、教わる 前編

 シーグルア紀23年4月2週目静の日



 今日はすべての者が休む日と言われている静の日だ。

 といっても本当に全ての人が休むわけではない。あくまで言われている日なだけだ。

 なぜなら宿屋や医者が全て休んでいたら仕事にならないだろうし、冒険者なんかとくに曜日関係なしに働いて休んでいる。

 普通の店は基本的にこの日に休むから買い物は闇の日までに済ませているし、一度に休めない医者などは街内の同業者と話し合ってそれぞれの休暇日を決めている。


 シオンさんは薬師ギルドに所属しており、期間内に決まった薬を納品するスタイルでお金を稼いでいる。

 カイルさんやメアリーさん、キースさんに聞いたけれど、シオンさんはかなり腕のいい薬師なのだけど、本人が店を構えるのを嫌がったため委託販売になっているらしい。


 そして今日、約束通りシオンさんに薬師としての薬作りについて教わる日でもある。



「それじゃぁ、今日から嬢ちゃんに薬作りについて教えていく」

「はい」

「が、本格的に学ぶ前にまず材料となる薬草について学んでいくべきだと俺は考えてる。わかるな」

「はい」


 それもそうだ。薬になるものの正しい知識がなければ薬を作ったつもりで毒を作ったのかもしれないなんてことは自分も嫌だ。


 ちなみに、この世界のアイテムは基本的に十段階でランク付けされており、rank1となった薬は毒薬になる。ダメージは些細なものだろうが、それでも本来の効果とは真逆の効果を出すのだ。



「と、言うわけで、今日はミシュア草とピルシュに関しての授業だ。その後は薬草を保存する際の注意点を教えながら実際にやってもらうからな」

「はい!!」



 といった流れで、今現在私は昨日私とカイルさんが採取したミシュア草とピルシュをもとにシオンさんに教わっている。


 薬草のどの部分が重要なのか、どの部分をどういった風に刻み、すり潰すのか、加工過程で気を付けるべきことを事細かく教わった。

 けど実際に加工するのはシオンさんだ。今の私はただ知識を詰め込むことを優先されている。


 ただし、乾燥させて保存することは実践してもいいと言われているので、今現在シオンさんと一緒に作業している。



「そうだ、葉が重ならないよう気を付けつつな」

「はい」


 薬草を一株から一本一本丁寧に抜き出して綺麗に洗い、水気を拭き取ってから机の上に葉ができる限り重ならないように気を付けつつ、全体の葉のバランスが均等になるようにできたら茎をまとめて縛る。


 この薬草はこのまま乾燥させ、薬を作るときの材料になるのだ。薬草によっては乾燥させることで薬としての効能を高めることもある。





 薬草全般に共通する注意点や、いざという時に使える薬草を使った即興傷薬による応急処置なんかまで教わっていたらいつの間にか日暮れが近づくほど時間が経っていた。


 お昼ご飯すら食べていないのに時間が経っていたことに気付かないほど没頭していた私とシオンさんは、お腹が鳴る音にどちらといわずとも顔を見合わせ苦笑を浮かべる。

 私は慌てて作業台の上の薬草をシオンさんとともにしまってから台所に向かう。


 元々はお昼用にと作っておいたサンドイッチとスープがそのままあるので、お肉を追加で焼いていこうと思う。

 食材庫の一部に床下の収納部分から大きな葉に包まれた肉を取り出す。これは昨日カイルさんが午後外に狩りに行った魔物の肉だ。


 このお肉をフライパンで焼き、中まで火が通ったら元いた世界で醤油と言われていた調味料――ディーパと砂糖を混ぜた簡易タレを投下。そのままタレが煮詰まるまで火にかけ続ける。これで照り焼きの完成だ。

 煮物と一緒で味が馴染むにはある程度冷めるのを待つ必要があるので、それまでに簡単にサラダを用意する。


 サラダを準備しながらふと思う。この世界の食生活は割と豊かだと。

 よくある転生やトリップ系のお話だと料理は全部塩味だったり、パンも黒くて固い物だったりするけど、この世界はそんなことはない。塩以外にもある程度調味料はあるし、パンも白くてふんわりしている。


 魔法によって科学の発展はないようだけど、料理に関してはある程度発展しているようだ。

 うんうん、やっぱり三大欲求のうちの一つでもある食欲は大切だよね。


 でも正直言って日本で暮らしていた私からすると今の調味料だけでは物足りない。

 ある程度慣れたら日本で使っていた調味料を再現しよう。レシピなら『世界図書館』を使えばいいんだし。




 そんなことを考えていたら照り焼きお肉がいい感じに冷めてきたので皿に移し、包丁で切り分けていく。

 ちょうどいいタイミングで、シオンさんがやってきた。


「あ、シオンさん、もう食べれますよ」

「おう、ありがとよ」


 お皿にナイフ、フォークを二人分テーブルに用意し、サンドイッチにスープ、照り焼き肉とサラダを並べる。




「イズミ嬢ちゃんがやってきてから食生活が一気に豊かになったな」

「簡単なものしか作れないんですけどね」


 調味料が豊富でない今では味の幅を広げにくい。

 長時間料理時間がいる料理は時間がなくて作れないし……。


「いやいや、これだけでも十分すぎるほどだ。カイルの奴も褒めてただろう?」


 確かに。

 昨日も簡単な物しか作っていかなかったというのに、カイルさんは大袈裟なほどに喜んで食べていた。


「でもやっぱり、私なんてまだまだですよ」

「しかしすでに『料理』を持ってるんだろう? なら焦る必要はないさ。今のままでも十分美味しいしな」


 『料理』スキルに関しては既に話している。

 ちゃんと食べれる料理を作れているし、この歳から持っていれば将来有望すぎるとカイルさんに言われた。


 うぅ、私はまだまだ納得できていないというのにっ。


「ああ、それとステータスは後で確認しておきな」

「? いつも寝る前に確認してますけど……」

「さっき程度の教えでも筋がいい奴は既に薬師の職業を得れるんだよ。だから嬢ちゃんももしかしたらと思ってな」


 いえ、実を言うと元から持っていますとも言い辛い。

 しかしこれは渡りに船。確認して職業得れましたと言える。


 ちょっとステータス確認しておこう。





イズミ・ユーリシュトル Lv.1

HP:42/42

MP:185/185


職業:錬金術師 Lv.1

   薬師 Lv.2

   魔法使い Lv.2

   治癒師 Lv.1

   付与術師 Lv.1


ユニークスキル

『生産職の才能』

『世界図書館』

『魔の真理』

『アイテムボックス』

『マッピング』


魔術スキル

『魔力操作』 Lv.5

『魔力感知』 Lv.5

『瞑想』 Lv.1

『魔術:火』 LV.3

『魔術:水』 LV.2

『魔術:土』 LV.1

『魔術:風』 LV.1

『魔術:光』 LV.1

『魔術:闇』 LV.1

『魔術:雷』 LV.1

『魔術:氷』 LV.1

『魔術:木』 LV.1

『魔術:時』 LV.1

『魔術:空間』 LV.1

『回復魔術』 Lv.1

『付与魔術:火』 LV.1

『付与魔術:水』 LV.1

『付与魔術:土』 LV.1

『付与魔術:風』 LV.1

『付与魔術:光』 LV.1

『付与魔術:闇』 LV.1

『付与魔術:雷』 LV.1

『付与魔術:氷』 LV.1

『付与魔術:木』 LV.1


生産スキル

『調薬』 Lv.1

『調合』 Lv.1

『錬金』 Lv.1

『料理』 Lv.2


一般スキル

『鑑定』 Lv.4

『採取』 Lv.4

『採掘』 Lv.1

『解体』 Lv.1

『解剖』 Lv.1

『探索』 Lv.2

『索敵』 Lv.1



 ごふっ。

 いつの間にか職業が二つもレベルアップしてた。レベル上がりやすいにもほどがあるでしょ。


 スキルもいくつか上がってたし、増えてる。

 生活魔法って言われてるものしか使ってないけど、これだけで結構上がってるのはちょっとおかしい気がする。ユニークスキルの影響?

 あと『瞑想』はあれかな、『魔力操作』と『魔力感知』のレベル上げ頑張ってたから増えたのかな? あとでどういったスキルなのか確認しなくては。



「えーと、シオンさん」

「ん?」

「増えてました職業。薬師です」

「はははは!! 本当に増えていたか! これは教えがいのある弟子だ!」


 やっぱりシオンさんも本気で私がいきなり職業得るとは思ってなかったんだろうな。

 それでも軽快に笑い飛ばしてくれた方が私としてはありがたい。変に持て囃されたり、腫物扱いはよろしくないしね。


「いやはや、これだけ筋がいい奴はアレックス以来だな」

「アレックスさん、ですか?」


 あれ、聞き覚えある名前が出てきたぞ? 確か……。


「アレックス・エンハイムさんですか?」

「おお、カイルから聞いたのか?」

「ギルドで個人依頼がありまして……」

「なるほどな、あいつは俺と一緒で材料も厳選するやつだからな、高ランクだっただろう」

「はい、rank8以上のマーリン草とピルシュでした」


 あの時は運が良かったから揃ったけど、それ以外で採れた薬草はrank5~7が殆どだった。そう考えると何気に達成し辛い依頼だったんだな。


「rank8以上か……。なかなかに厳しい条件だな」

「はい。結構大変でした」

「なんだ、嬢ちゃんたちが受けたのか」


 目をぱちくりと開いてシオンさんが聞いてきた。

 うん、確かに難しい依頼だよね。受けた時は何とも思わなかったけど。結構あっさり片付けれたけど。


「運がよかったんですよ」

「カイルも自慢しとったからな。嬢ちゃんの採取の腕はかなりのものだな」


 カイルさん、なんで自慢してるんですか?!

 さすがに恥ずかしくなってきて口にサンドイッチを詰め込む。そんな私にも笑みを浮かべるシオンさんは年を重ねた貫禄を感じた。




 お風呂も出て魔術で洗濯した服をたたみ、昨日買った寝巻に着替える。

 ワンピースタイプの寝巻で、色は淡いパステルイエローだ。


 部屋は『光球(ライト)』で照らし、『世界図書館』で出した魔術教本を読む。

 実は明日、カイルさんが紹介してくれる魔術師から魔術を習うことになっており、その予習でもある。


「明日からは、シオンさんが用意してくれたあれを読むんだけどね」


 そう呟きながら見るのは机の上に詰まれた薬草に関する本達。

 あれは今日、シオンさんから次教わるまでに読めるだけ読んでおけと言われた本だ。

 すぐに実物を使って教わることはないだろうけど、知識は詰め込めるときに詰め込んでおいた方がいいからと渡された。


 しかし意識はすぐに手元にある本に移される。


「付与魔術を表立って使えれるようになれば、街中の依頼だったらカイルさんのお世話にならなくてもこなせれるようになるよね」


 街中の依頼の多くは力仕事だったりするから、今の私ではカイルさんは一人で依頼を受けさせてはくれない。

 けど付与魔術で身体能力を強化できるようになれば、少なくとも街中の依頼は一人で受けてもいいと判断されるはず。


「でも、あんまり人前で魔術使うのはなぁ」


 カイルさんに釘を刺されていたことを思い出す。

 でも、師匠がいるか独学かで周りが受ける印象は変わるはず。そのあたりは明日聞いて確かめるしかない。


 そう考えながらふと新しく手に入ったスキルについて確認していなかったことに気付き、ステータスを表示して説明を読んでいく。


「えーと、つまり『魔力操作』で大気のマナを吸収することでMPを回復するスキルってことか。ちょっと難しそうだなぁ」


 大気のマナ、ってのがまだつかめないんだよね。レベルが上がればわかるのかな?



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