006.薬師の家
どうも、冒険者として働きだしたイズミ・ユーリシュトルです。
何だか自分にとって都合がいいほどお世話されて戸惑い中です。やっぱり外見が10歳ほどだからでしょうか?
宿をどうするのかと冒険者ギルドの職員メアリーさんに聞かれてカイルさんが提案したのはカイルさんの実家で寝泊まりすること。
さすがにそこまで遠慮するのは気が引けて――メアリーさん曰くさっきの依頼報酬だけで十分宿に泊まれそうらしいし――断ろうとしたのだけれども、カイルさんは一切気にすることなく私を担いで移動中です。
ちなみに依頼達成報告の際は数としてのけられた薬草はいつの間にかカイルさんが持ってました。
なるほど、これがCランクの冒険者の実力……。←違う
移動中どれだけ私が遠慮してもカイルさんは流すばっかで、気が付いていたらカイルさんの実家についていたようで……。
「親父ーいるかー。ちょっと頼みたいことがあるんだがー」
「あ? 久々に帰ったと思ったら厄介ごとでも持ってきやがったか、放浪息子」
「誰が放浪息子だ。ちゃんと冒険者として働いてんだろうが」
カイルさんは玄関に入ってすぐに声をかけ、それの返事が家の奥から聞こえてきた。
家の外観は周囲にあったほかの家よりもしっかりしてるかな? といった感じだったけど、中に入ってみると玄関はなかなかに広く、廊下がまっすぐ見えるけど途中でいくつかの部屋があるようだ。
カイルさんは私を下し、靴を脱いで廊下に上る。土足文化ではないことにちょっとびっくり。私もカイルさんにならって靴を脱ぐと、カイルさんは家の奥にと歩き出す。私はそれについていくしかない。
家の奥に行き、とある一室の扉の前にたったカイルさんは特に気にせず扉を開けて中に入る。
私も続いて入ることになったけど、そこは廊下と比べると少し寒い気がして首を傾げた。
中を見渡すと廊下と違い木の壁ではなく、石に近い素材の壁の部屋だった。壁にはいくつもの棚が置かれており中には薬草を吊るしている。真ん中には作業台らしき机と一人分の椅子があり、そこに白髪が目立つ初老の男性がいた。がっしりとした体格は薬師というよりも鍛冶屋の親方に見える。
「おい、勝手に入ってくるんじゃね――あ?」
「ちょっと頼みたいことがあるっつっただろうが」
男性は私を見て不思議そうに目を開いた。その眼はカイルさんと同じ色の緑色で、顔立ちもカイルさんと似ている。
「おい、その嬢ちゃんは……」
「ちょっと身寄りがない子でさ。俺が後見人になって冒険者をやることになったんだ」
カイルさんはそう言って私を男性の目の前に出し、自己紹介を促す。
「イズミ・ユーリシュトルです。カイルさんにはいろいろお世話になって……」
「俺はシオン・ディードだ。このカイルの父親で、薬師をやってる。しっかし後見人って、嬢ちゃん、いくつだ?」
「10歳、です」
私が年齢を言うと男性――シオンさんは難しそうな表情を浮かべ、しばらく考え込んでいたと思ったらカイルさんを見て溜息を吐く。
「なるほどなぁ……。で、ここを宿代わりにってか?」
「別にいいだろ?俺が使ってた部屋そのままイズミに使わせればいいし」
「それは別にかまわん。が、俺にも仕事がある。面倒見きれるかわからんぞ」
「えっと、私、迷惑をおかけするなら宿を――」
「やめとけ。嬢ちゃんみたいなガキ、変なもんに絡まれちまう。ま、そうやって謙虚なのはいいことだな。うちのガキもいい加減見習えってんだ」
「うっせ。そう言いながら採取依頼出さずに俺を連れて薬草採取行くのは誰だってんだよ」
「親孝行ぐらい別にいだろうが。それにお前ら冒険者の採取は雑なやつが多くてかなわん。それぐらいなら多少時間がかかっても自分で取りに行った方がいいってもんよ」
ポンポンと軽口を言い合う姿からカイルさんとシオンさんの仲は中々にいいようだ。
「あー、じゃぁ、これならイズミもいいじゃないか?」
ふと思いついたようにカイルさんが私を見てくる。
「イズミは採取依頼を中心で受ける予定なんだが、基本的に常時依頼を受けるつもりでな。でもそうなると数を気にせず採取してると端数が出てくる。その端数を親父が受けっとって、それを宿代わりにする。親父も一々採取依頼を頼む必要がなくなるだろ?」
「えっと、宿代を出せるなら、それでいいですけど……」
シオンさんはいいんですか? と私が訪ねるとカイルさんは先ほど冒険者ギルドで端数としてのけられた薬草をシオンさんの目の前に出していく。
「こいつ、この歳で『鑑定』と『採取』持ってんだよ。だから品質は保証できると思うぜ」
「…………ふむ。まぁ、使えるレベルだな。元々宿代なんざいざとなりゃこの馬鹿からもらえばよかったが……十分だな」
そう言ってシオンさんは私を見てここに住むにあたって条件を言ってきた。
一つ、採取依頼を報告した際、端数として余った薬草を宿代として家主であるシオンさんに提出すること。
一つ、毎日ではないが、薬師としての仕事で部屋にこもる日もある為料理や身の回りの世話は自分で行えるようになること。
一つ、依頼に行かない日はこの家の掃除を行うこと。
「とりあえずはこんなもんだな。住んでる間に問題が出ればその時はその時対処することになる」
「えっと、これだけでいいんですか?」
「ああ。嬢ちゃんが持って帰る薬草が数が少なくても、別にいい。毎日毎日、そんな大量の薬草がいるわけじゃねぇからな」
そう言ってシオンさんはカイルさんに私が住むことになる部屋の片づけを命じて、私を案内してくれた。
と言っても先ほどの部屋がシオンさんの作業場であること、台所や食料を置いている場所、風呂場や洗濯場といった水回りの説明だけで終わった。
この世界の風呂はその家の懐具合でグレードが違っていて、シオンさんのところにあったのは体を洗うための湯を焚く為にある小さめの竃と体を洗うスペースがあるだけのこじんまりとした部屋だった。この部屋で湯を焚くことで部屋の温度と湿度を上げ蒸し風呂に近い状況にし、その後お湯で濡らした布で体をふく。シオンさんは特にこだわりなんかがないためこの形式であるが、人によっては脚付きの浴槽などを置き、そこに沸かしたお湯を注いで湯船に入る人もいるとのこと。
石鹸はこの世界でも一応庶民でも手が出せれる品物であるが、割と高級品に分類されるため毎日は使えないそうだ。そのため普段は湯で拭き洗いし、二、三日に一回石鹸で体を洗うのがこの家のやり方らしい。まぁ、手洗いであれば仕事の関係上毎日行うらしいが。
その後台所も教えてもらい、この世界の庶民は基本的に水は村や町で設置されている井戸から水をくみ上げ、竃を使って調理するらしい。これが貴族や裕福な商人など、経済的に余裕がある人は魔道具と呼ばれる、魔石という物質を埋め込んだ道具で水を出したり、火を薪を使わず起こして調理するらしい。勿論そういった魔道具を置けるほど余裕がある人は風呂なんかも魔道具で湯船を使っているらしい。ちなみにシオンさんは水の魔術に適性があったため、水を汲みにいかず魔術で水を作り出しているとのこと。
私が暮らすにあたって家事もできる限り自分でやる為、調理台に手が届くように簡易的に木の箱を裏返したものを踏み台代わりに使わせてもらう事になった。
その後私が暮らすことになった、元カイルさんの部屋を確認した後、カイルさんは普段自分が泊まっているという宿に戻ることになった。
正直経済的に考えればシオンさんの家で暮らし続けていた方がいい気がするけど、そこは自立ということなのだろうと一人で納得していた。
私の冒険者稼業は今日はもう終わりということで、明日は朝から再びまたシューラ平原で薬草採取を行うと予定が決まった。
未だ夕飯の準備に取り掛かるには早いということで、私はシオンさんに頼み込んでシオンさんの仕事を見学させてもうことにした。
「飽きたら部屋に戻ってもいいんだからな」
「はい。でも、私薬師の仕事にも興味があるんで、大丈夫ですよ?」
「イズミ嬢ちゃんはいい子だなぁ。カイルの奴なんか、臭いが鼻につくとかなんとか言いやがって」
俺らが作ってる薬に世話になってるくせに、とブツブツ呟くシオンさんは、それでも息子が可愛いのだろう。カイルさんのことを話すときは言葉に反して声色は優しい。
「ま、嬢ちゃんも適性があれば薬師として働けるようになるかもな。冒険者として働くにしてもそうじゃないにしても、この手の技術は役に立つ」
「はい。じゃぁ、頑張って薬作り覚えます!」
「はは、その意気込みだな」
そう言ってシオンさんは私の頭を撫でて作業台に向かい、壁にかけていた薬草を丁寧にほどいていく。
私はシオンさんに向き合うように壁際におかれた椅子に座り、シオンさんの薬作りを眺めていく。
今シオンさんが作っているのは簡単な回復薬である丸薬だ。薬師が作る薬の大半は丸薬か粉薬である。
決まった薬草をすり潰してから蒸留水で有効成分を抽出し、他のいくつかの材料と混ぜ合わせ煉る。これが薬師が作る薬の基本的な調合・調薬だ。
言葉でいうのは簡単だが、すり潰すときや混ぜ合わせる時、抽出するときの薬の状態の見極めは重要で、加減を間違えたらその薬の効能は落ちてしまう。
なのにシオンさんは手早く薬を作っていて、私からしたらまるで魔法のように見える。
そうやって私はシオンさんの作業を眺めていたけど気が付いたらだいぶ時間がたっていたようで、普段は嵌めた木戸で日光をふさいでいる窓から差し込む日差しはなくなっていたため、私はシオンさんに一言言ってから台所に向かう。
今日作るつもりなのは簡単な野菜煮込みのスープだ。
一応記憶喪失と周りに思われているようになっているはずなので、そう複雑な料理はできない。今度近所のご婦人方に聞くか、あれば料理のレシピ本を読んでこの世界の料理を教わる予定である。
この世界には私がいた世界に存在していた動植物は存在している。もちろん、私がいた世界にはないようなものも存在する。
そのためこの家にもニンジンや玉ねぎ、ジャガイモもあり、肉も多少だがあった。
これらの具材を切り、台所に置かれている水瓶から水を汲み取り鍋に水を入れて竃に薪と藁を入れてからマッチで火をつける。火が通りにくいものから優先的に火を通していき、灰汁を除いていく。ある程度食材に火も通り、灰汁がのぞけたら塩と胡椒を加えていく。
日本で暮らしていた時はコンソメなどの調味料が充実していたが、この世界はそこまで調味料は多くない。香辛料は十分にあるけど、ケチャップやマヨネーズ、コンソメや中華出汁なんかは存在しない。なのでこういったシンプルな味付けになるしかないけれど、ニンジンや玉ねぎで甘味は出るだろうし、肉は兎の肉だったらしいけど多少なりとも出汁は出ていたようで塩で味付け、胡椒で味がぼやけないようにアクセントとして加えるとこれだけで十分な味に感じられた。
「兎って初めて食べるけど……どんな味だろ?」
味見してスープの味は問題なかったから火を消して鍋に蓋をする。あとは余熱で具材に完全に火が通るだろうし、スープの味も具材にしみ込んでいくだろう。
あとは買い置きされてると言われていたパンを二人分出して、食器の準備が終わったため完成だ。
「ん~、あとは何しよう?」
シオンさんは調薬が終ったら作業場から出てくるだろうから私はそれを待つだけでいい。下手に声をかけて仕事の邪魔をするわけにはいかない。
でも何もすることがないと暇なわけで、とりあえずカイルさんが片づけていった、今後私が寝泊まりする部屋に向かっていく。
シオンさんに案内されたときはざっとしか見ていなかったので、改めてみると殺風景な部屋だ。
寝るためのベットは木製で、小さめの机があり、いくつか本があった。こうやって見ると意外とこの世界では本は高価な貴重品というわけではないのかもしれない。
何の本かと確認すると、昔カイルさんが読んでいたと思わしき冒険を描いた絵本が二冊ほどと植物図鑑に魔物図鑑、それに初級と書かれた魔術教本だった。これはおそらくカイルさんがわざわざおいていったものだと思う。
私はとりあえず心の中でカイルさんに感謝しながら魔術教本と植物図鑑を持って台所に戻る。
まだシオンさんは作業中だったようで、私はとりあえず魔術教本を開いた。
魔術教本は初級と書かれていたようにまず魔力の流れを感じられるようになる初歩から描かれていたけど、私は既に魔術を使えるようになっていたからこれを飛ばして初級魔術に関する項目を見ていく。
その中で水を出したりする初級中の初級の魔術は生活に利用できるものが多いとのことで一般的に生活魔法と言われていることを知った。
「『光球』」
私がそう呟けば若干薄暗くなっていた部屋に呼吸が現れ、部屋を明るくする。
平原で試しにやった水の魔術の光属性バージョンだ。本来あの水の魔術も生活魔法に分類されるものらしく、攻撃には適さないようだ。
明るくなった部屋の中で私は魔術教本の最初の方をもう一度見ていき、スキル『魔力操作』『魔力感知』に関して読んでいく。
それぞれのスキルの内容は名前通りだが、これらのスキルを成長させるにあたっての方法は主に二通り。
一つは私がレベルを上げた時のように魔術を使うこと。
もう一つは瞑想するように目を閉じ、体の中の魔力を感知し、それを全身に廻らせることでレベルが上がるらしい。また、スキルを習得する際にもこの方法が行われるのが一般的らしい。
私は明るくなった部屋で目を閉じて私自身の魔力を感知してみようと試みる。
そうすると私の中を何かが流れているような感覚があった。流れている『ナニカ』を指先に送ったり、逆に体全身に送るようにとイメージすると本当にそうなっているように感じられる。おそらくこれが魔力で、今やっていることが魔力操作と魔力感知なのだろう。
魔術扱うにはこれらのレベルが高いほど効率的で威力が高まると教本に書かれてあったので、寝る前なんかの時間が空いたときに練習しようと決める。
とりあえず『魔力感知』と『魔力操作』のレベルアップは取りやめて、植物図鑑を開く。
そこに書かれているのは一般的な花や作物、それに薬草の材料などで、普通にそのあたりでも売られているような植物が乗っていた。
私はとりあえずこれを読み、この世界の一般的な作物や花の名前や特徴を覚えていく。キースさんを始めとした一部の人たちには記憶喪失と思われているだろうけど、一々会う人に記憶喪失だと主張するのは面倒なので、こうやってこの世界の当り前を覚えていくのだ。
神様に教えられた常識と、こういった動植物の知識は必ずしもイコールではない。そもそも知識とは学ぶもので、常識は知っていて当然と大衆が定めたものだ。だからこそ、常識でわからないものは必ずあるので、それを埋めるために知識を身につける。
『世界図書館』を使わないのも、どうやってその知識を得たのかと聞かれたら困るからだ。あと私は元いた世界の時から電子書籍よりも紙の本が好きだったので、こういう風に本で読むほうが楽しく思う。
そうしているとシオンさんが作業場から出てきたようで、声をかけられた。
「イズミ嬢ちゃん?」
「あっ、シオンさん終わりましたか?」
「ああ、終わったが……」
シオンさんはどこか戸惑ったように私が出した光球を見る。
「これは……」
「えっと、この本に載ってたのは真似してみたんです。生活魔法を使えるようになればもっとお手伝いできると思って……」
本当はそれだけではないけど、手伝いしたいという気持ちも嘘でないため私はそう言う。
そしたらシオンさんは呆けたような表情をし、次に私の頭を勢い良く撫でてきた。
「うぇっ、」
「はははははは!!まさか本見ただけで物にするなんざ、嬢ちゃんは魔術師として才能があるな!」
「そ、そうですか?」
「おう。俺も生活魔法なら難なくこなせるが、それでも最初は苦労したもんだ」
そう言ってシオンさんは私の頭を今度は優しく撫でてくる。
「この様子なら嬢ちゃんも立派な冒険者になれるだろうよ。お、今日はスープか」
「はい。何も言われてなかったので、私ができる程度の料理ですけど……。後野菜とかそれなりに使っちゃいましたけど、よかったですかね?」
「別にかまわんよ。俺も結構稼いでる方だし、肉なんざカイルの奴が干し肉を持ってくることもある。気にせず使え」
そう言われて私は頷き、出来上がったスープを出しておいたスープ皿にいれてシオンさんの前に出す。私の分も出して向き合う形でシオンさんと食事をとる。
「あの、できれば私に薬作り関して教えてもらえませんか? もちろん、シオンさんに時間があればですけど……」
「嬢ちゃんがやりたいってんなら、俺はいいが……。でも冒険者として働くんだろ?」
「はい。でも、私正直採取依頼が向いてると思うんです。スキル的にも。だからそれなら自分で採取して薬を作れないかなって」
「ふむ。まぁそれも一つの選択肢だな。自分で採取して薬を作るなら、多少手間がかかっても利益は大きくなるしな」
「それじゃぁ!」
「いいぞ。ただし、俺は薬作りに関しては手加減せんからな」
そう言って挑発的に笑ったシオンさんに、私は満面の笑顔で答えた。
「はい!」
その後、食事をしながら私はシオンさんとしばらくの予定を決めた。
動の日から闇の日までは冒険者として働きつつ、帰ったら家のことをしたりシオンさんの仕事の手伝い。
静の日は朝からみっちりシオンさんに薬師としての知識と技術を叩き込まれるとなった。
予定を決めてから私は食器を片づけ、与えられた部屋に本を持って戻る。
そうして本を机の上に戻しお風呂に入ろうと思ったところで着替えがないことに気付いた。
「うっ、明日カイルさんに服屋を紹介してもらわないと……」
とりあえず今着ている服とこの世界に来た時に来ていたワンピースをどうにか使えないかと考え、再び魔術教本を開く。
生活魔法の中に洗浄の魔法があったのを思い出したからだ。
「ええと……、水魔術の『洗浄』と風魔術の『風』が使えそうね」
使えそうな魔術を確認できたら風呂場に行く。
シオンさんはまだ作業を続けるようだったので、私は気兼ねなくお風呂に入れた。
「『浄水』、『加熱』」
竃の中に入れる水を魔術で生み出し、それを魔術で加熱する。
沸騰するまで加熱したら冷めるまで待たなければならないから、手を水に入れながら湯加減を調節していく。程よい温度になったら魔術を止めて服を脱いでいく。
「あったかーい。でも、布で拭くよりやっぱ肩までお湯につかりたいなぁ……。せめて足湯できないかな?」
そう思って風呂場の中を見渡すといい感じの桶があったため沸かしたお湯を少しそこに移し、足を浸ける。
足先からじわじわと体が温まっていく感覚は心地よく、思わず目をつぶってその心地よさに浸ってしまう。
が、このままだと着替えがないということを思い出し、脱いだ服を見つめながら、先ほど教本に載っていた魔術を思い出し、イメージする。
「ええと、洗うのは洗濯機の動きをイメージして、乾燥する時は風で水気を吹き飛ばす感じかな?『洗浄』、『風』」
呪文を唱えれば脱いだ服は空中に現れた水に包まれ中で回転していく。しばらくしてもういいかなと思うと水は消え、残された服は強い風によって水分だけが床に叩きつけられた後、ゆっくりと風に揺らされながら床に落ちていく。床に落ちる前に回収し、備え付けられていた脱衣籠におけば問題ない。
「生活魔法って便利だなぁ。でも、魔術の適正なかったらこれもできないんだよね……」
この世界の魔術師は結構いるが、それでもこういった初級に分類される生活魔法ですら使えない人もいる。
シオンさんも生活魔法は最初なかなかできなかったというのだから、私のこの習得スピードはスキルの恩恵なのだろう。
そう思いながら体を拭き水気をなくしてからワンピースを着る。
部屋に戻り、私はベッドに寝転がり上空を見つめる。
「あ、寝る前にステータス確認しなくちゃ」
そう思ってステータスを表示すると、いくつかスキルのレベルが上がっていた。
今日の採取や魔法を使ったからだろうか。
イズミ・ユーリシュトル Lv.1
HP:30/30
MP:98/150
職業:錬金術師 Lv.1
薬師 Lv.1
魔法使い Lv.1
治癒師 Lv.1
付与術師 Lv.1
ユニークスキル
『生産職の才能』
『世界図書館』
『魔の真理』
『アイテムボックス』
『マッピング』
魔術スキル
『魔力操作』 Lv.3
『魔力感知』 Lv.2
『魔術:火』 LV.2
『魔術:水』 LV.2
『魔術:土』 LV.1
『魔術:風』 LV.1
『魔術:光』 LV.1
『魔術:闇』 LV.1
『魔術:雷』 LV.1
『魔術:氷』 LV.1
『魔術:木』 LV.1
『魔術:時』 LV.1
『魔術:空間』 LV.1
『回復魔術』 Lv.1
『付与魔術:火』 LV.1
『付与魔術:水』 LV.1
『付与魔術:土』 LV.1
『付与魔術:風』 LV.1
『付与魔術:光』 LV.1
『付与魔術:闇』 LV.1
『付与魔術:雷』 LV.1
『付与魔術:氷』 LV.1
『付与魔術:木』 LV.1
生産スキル
『調薬』 Lv.1
『調合』 Lv.1
『錬金』 Lv.1
『料理』 Lv.1
一般スキル
『鑑定』 Lv.3
『採取』 Lv.3
『採掘』 Lv.1
『解体』 Lv.1
『解剖』 Lv.1
『探索』 Lv.1
『索敵』 Lv.1
「なんか成長するのが速い気するけど……ま、いっか。周りにばれなきゃ騒がれないだろうし」
そう思って私は眠りにつく。
思っていたよりも体は疲れていたようで、目をつぶるとあっさりこの小さい体は眠気に支配され、意識は遠のいていく。
こうして、イズミ・ユーリシュトルの異世界生活はスタートするのであった。
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