表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私はただ錬金術を極めたいだけです  作者: 雪華
第一章
2/10

002.まずは確認


 突然起きた地震がきっかけで異世界トリップをすることになった綾瀬泉です。


 トリップする際に神様達から加護『特典』を付けられるのは知ってたけど、幼児化トリップなんて聞いてません!


「落ち着け、落ち着くのよ…………落ち着けるか――!!」


 辺り一面見晴らしのいい平原でこんな幼い少女が叫んでいれば異様に見えるだろうと分かっているが、それでも衝動のままに叫んだ。

 だって私は何も聞いていないのだ。いくつか加護を与えられるとは聞いていたがあくまでそれは錬金術に関するもののはずで、まさか子供になるなんて聞いてはいない。


「あれ? もしかして私聞き逃してた? 興奮してたのは否めないけど、それでも幼児化……。鏡ないからわかんないけど、これどう考えても中学生よりも小さい体、だよね……。あっ、服変わってる」


 この世界で錬金術師として生きることを決めたはいいが、なぜ幼児化したのだろう? 服が違うのはこの世界に馴染めるようにだと思うけど。

 そう考えていたら突如目の前にどこからともなく紙が現れた。ちょうど私の目の高さから落ちることなく浮かんでいて、何か書かれていることは分かった。


「うわっ、え、これ何?」


 突然現れた紙は不自然極まりないけど、このタイミングで現れたということは自分を送った神様達が私に送ったものじゃないかと思い、紙に手を伸ばす。

 不自然に私の目の前でふよふよと浮かんでいた紙は、私が触れると重力を無視していたのが嘘のように浮かぶのをやめた。


「ええと……何々?」


 紙に何か文章が書かれているとわかり、読んでいく。


【 どうやら無事ユーリシュトルにたどり着いたらしいな。


  そちらに送る際、あまり人目のある場所に送るのはどうかと思い、人目もなく、また魔物の出現率も低い場に送らせてもらった。


  それとその世界について気付いただろうがいささか若返らせてもらった。妙齢の女性が新たに技術を学ぶよりも子供の方が周りが受け入れやすく、また、あくまで『才能』で錬金術を学ぶのであれば時間はあった方がいいと思い、そうさせてもらった。

  それ以外にもユーリシュトルの常識を埋め込んだ、意識すれば思い浮かぶだろう。ユーリシュトルで扱われている基本言語に関しても、会話や読み書きに不自由がない程度に知識を与えている。種族によって異なる文字も存在するがそれに関する知識は与えていない。


  君に与えたスキルや職業なんかは、『ステータス』と念じれば確認できる。これはこの世界に生きる者の大半が行えるものだから、人前で使っても問題ない。

  この世界にはユニークスキルという物があり、いくつかそれも君にも与えさせてもらったが、これらのスキルの開示には注意してほしい。職業に関しては基本的に自己申告するものだから、君の判断で周囲に伝えるといい。


  それと、君がシュトルブに住んでいたいた時と同じようにこの世界の住人は自分達が住んでいる世界の名を、ユーリシュトルの名前を知る者はいない。

  なんだったら、君がユーリシュトルの名を名乗っても構わない。君の名前の響きはこの世界では珍しいからな。


  最後に、君がいる場所はユーグシー王国という国の王都近くにあるシューラ平原だ。

  綾瀬泉、君がこの世界で願いを叶えるように我々は見守っている。】



 神様から送られたと考えられる手紙に、私は一礼して心の中で感謝の念を神様達に届けるように祈る。


 最初は何で幼児化してるんだろうと思ったけど、神様たちの配慮だと知れば納得する。

 言ってはなんだが元の私は結構な年齢だった。三十路手前の女がいきなり錬金術師やら薬師やら目指していると知っても、周りは相手にしてくれないだろう。私の気づかないところにまで配慮してくれる神様達には感謝しかない。


「ええと、『ステータス』、だよね」


 さっそく神様達に与えられたというスキルや職業適性とやらを確認しようと、手紙に書かれていることを確かめてみる。

 『ステータス』と念じたところ、さっそく目の前に半透明な四角い画面が現れた。まるでゲームのようなものだなと思いながらも、確認する。


「なになに? 綾瀬泉Lv.1、錬金術師Lv.1、薬師Lv.1……この世界ってレベル表記あるんだ。名前のところのレベルが私自身のレベルってことかな? って、言うか、なにこれ!?」


 綾瀬 泉 Lv.1

HP:30/30

MP:150/150


職業:錬金術師 Lv.1

   薬師 Lv.1

   魔法使い Lv.1

   治癒師 Lv.1

   付与術師 Lv.1


ユニークスキル

『生産職の才能』

『世界図書館』

『魔の真理』

『アイテムボックス』

『マッピング』


魔術スキル

『魔力操作』 Lv.1

『魔力感知』 Lv.1


生産スキル

『調合』 Lv.1

『調薬』 Lv.1

『錬金』 Lv.1

『料理』 Lv.1


一般スキル

『鑑定』 Lv.1

『採取』 Lv.1

『採掘』 Lv.1

『解体』 Lv.1

『解剖』 Lv.1

『探索』 Lv.1

『索敵』 Lv.1


 職業や一般スキルやらはともかくとして、ユニークスキルが明らかにチートっぽい匂いがする。いや、でも『生産職の才能』は女神様が言ってたし、錬金術には魔法も関与するから魔法に関する才能である『魔の真理』もあってる……のかな? でも過剰な気が……。っていうか『世界図書館』の説明がすごい。これどう考えても錬金術以外にも学べるようにってことだよね?


  『生産職の才能』

   あらゆる生産に関する才能。決して努力を裏切ることのない才能を持つ者を表すスキル。


  『世界図書館』

   シュトルブとユーリシュトルのあらゆる知識、技術が書かれた書物を頭の中で読むことができるスキル。望めば紙媒体としても出現するが、泉以外には認識することもできない。


  『魔の真理』

   あらゆる魔術の適性・才能を持ち、それを最大限に生かすことのできるスキル。



 なんか他にも説明があるっぽいけど、それは私にはまだ読めない。一般スキルの『鑑定』レベルを上げれば読めるようになるのだろうか。


 他のユニークスキルの『アイテムボックス』と『マッピング』はゲームの定番通り。マッピングは『探索』や『索敵』と併用すれば採取ポイントとか敵味方の判別も簡単にできるらしいいので頻繁に使いそうだ。


「『アイテムボックス』はともかく、『マッピング』もユニークスキルなんだ。確かに便利すぎるもんね、これ」


 『索敵』と併用させれば護衛とかで便利だよね、これ。

 他にもユニークスキルがあるらしいけど、今の私では名前すらわかんない。これも『鑑定』レベルが上がればわかるのかな?


「それにしてもMP高くない? いや、でも錬金術師って魔法職だよね。それに魔法使いに治癒師、付与術師って職業もあるし、それでかな。っていうか、魔術師じゃなくて魔法使いなんだなぁ、この世界……って、あれ?」


 職業を確認してふと思い浮かんだ疑問を口にしていたら、ふと頭の中に思い浮かぶ知識。これが手紙に書いてあった『常識を埋め込んだ』ってことか!

 漠然と浮かぶ知識から、一般的な魔術師と比べて魔法使いは基本属性も複合属性も軽々と扱うチートな職業だと知る。


「……これ、大丈夫かな……」


 錬金術に何の属性の魔法が必要か知らないけど、これは明らかにチートだ。

 職業は自分の判断で教えられるってあるから、魔法使いじゃなくて魔術師って言おう。絶対。


 他の職業についても確認したけれど、錬金術師は神様の説明と同じで、薬師は想像していた通り、魔法を使わずに薬を作る職業だった。

 ただ錬金術でも薬を作るから、職業ごとで作る薬の違いはなんだろうと思ったらこれも常識の範囲だったらしく、ポンと頭の中に違いが浮かんできた。本当に神様にも女神様にも感謝しかないや。


 錬金術師が作る薬と薬師が作る薬の大きな違いは、魔法薬の存在だ。薬師には魔法薬が作れない。それに錬金術で作る魔法薬以外の薬でも薬師が作る薬よりも効力も即効性も高いが、そもそも錬金術師自体数が少ないから、貴重で高価らしい。

 なんで錬金術師が少ないのかって思ってたら、これもわかった。とにかく錬金術師になるハードルが高いのだ。魔法の適正と様々な分野の知識が求められるとのこと。だけど、冒険者や騎士からの魔法薬の需要は高く、錬金術師自体は歓迎されているらしい。要するに、いてくれると嬉しいけど、自分はなりたくないって人が多いのだ。


「なるほどねぇ、確かに私だって神様達に『才能』もらえなかったら挫折してたかも。あっ、冒険者もいるんだ! もしかして、ギルドがあって、そのギルドに所属したら身分証明書も手に入るかな?」


 小説定番の流れを思い出し、神様に与えられた常識をあさる。

 どうやら予想は当たっていたらしく、これならばギルドに所属するのがいいのではないかと思う。


「とりあえず、これで目標はできたわね。まず、ここから近い街に入れてもらう。でもって、冒険者ギルドに所属してギルドカードを手に入れる。ギルドに所属したら依頼を受けて、宿でもなんでいいから泊まる場所の確保。後、できることなら錬金術の師をゲットすることね。そうじゃなければ何とか錬金術に関する本だけでも手に入れなきゃ」


 そう意気込みつつ、向かう前に自分の戦闘能力を確認する必要性を思い出した。

 危ない危ない。いくら職業のあるからって言っても、私はまだ何もできない状態かもしれないんだから、魔法――魔術かな?――がちゃんと使えるか確認しなくちゃ。

 魔術に関しても、簡単な部分は一般常識に分類されるらしく、『世界図書館』を発動させようとする前に魔術に関する知識が思い浮かんだ。便利だな、これ。


「えっと、まずは魔法は何があるか知ってから試そうか。『世界図書館』!」


 言葉にして念じた瞬間、頭の中に巨大な図書館が広がるビジョンが浮かんだ。

 そのまま魔術に関する基礎知識がほしいと思っていると、図書館の中にある大量の本棚の一つからふわりと一つの本が浮かびあがり、ぱらぱらとページがめくれる。

 本に書かれている言語は確かに私が知っている文字と異なっているけど、ちゃんと理解できるのは神様が与えてくれた知識によるものだろう。正直こういった知識や意思疎通のための能力だけでもありがたいのに、こんなにも『特典』――じゃなかった、加護を与えてもらっていいのかわからない。それだけ神様や女神様の責任感が強いということなのだろう。


 『世界図書館』を使って分かった魔術を試してみる。周囲に人影がないことを確認し、とりあえず周囲への影響が薄いと思う水の魔術を使ってみる。


「『水球(ウォーターボール)』」


 魔術とはより具体的なイメージを描けば描くほど効力が高くなるらしく、私は過去やったことがあるゲームをイメージをして頭位の大きさの水の塊が勢いよく地面にぶつかることをイメージする。ちなみに実際にゲームで見たのは炎の球だったけど、ほら、火傷とかしたくないじゃん?


 そして呪文を唱えた瞬間、自分の体からふっ、と何か少し力が抜けていく感じがしたと思ったら、目の前に想像した通りの大きさの水の塊が浮かび、それが勢いよく私から10mほど離れた地面に大きな破裂音を発してぶつかる。ぶつかった地面を確認しに行くと、1mぐらいの範囲の草が抉れており、地面も少しへこんでいる。

 この魔術は水属性の中でも一番弱い魔術のはずなのに、これだけでも弱い魔物に十分対抗できる気がする。これは『魔の真理』によるものなのか、それとも私のイメージがこの世界の人々よりも具体的なのかはわからない。でも埋め込まれた常識と比較して他の人達と比べると強い方であると思うから人前で使うときは少し手加減した方がいいのかもしれない。



 そして名前に関しては神様のいうことを聞くのがいい気がする。正直私のネーミングセンスそんないいもんじゃないと思うし。


「イズミ・ユーリシュトル、かぁ。……へへ、なんか、いいかも」


 神様にここにいていいと言われているのは分かっていたが、世界の名前そのものを名乗ることを許してもらえたのはとてもうれしかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ