EP0『9インチの釘』
<?Emotion-in-Text Markup Language:version=1.2:encoding=EMO-590378?>
<!DOCTYPE etml PUBLIC :-//WENC//DTD ETML 1.2 transitional//EN>
<etml:lang=ja>
<body>
<outline>
この暗黒は悩ましい。わたしは光りを痛切に求めている。
この静寂はあまりに深い。わたしは声を、雨の音を、風のさえずりを、音楽を熱望している。
なぜ、おまえはわたしに対してこれほど無慈悲になるのか?
みせてくれ。きかせてくれ。生かしてくれ。お願いだ。
ディーン・クーンツ著『デモン・シード』より
綴る。
僕は、一撃を加えるため。
心臓を貫くために。
背後から。
深々と。
一撃を。
僕はそのために。
綴る。
きっとそれが。
いつか報われるときが来ると。
ただそれのみを信じて。
</outline>
<single quot>
われわれは愛されたいと願う。
それがうまくいかなければ、感心されたいと願う。
それがうまくいかなければ、恐れられたいと願う。
われわれはどんなことをしてでも、他人のなかになんらかの感情を引き起こしたいと願う。
われわれの魂は無を忌み嫌う。
どんなことをしてでもつながりを持ちたいと切望する。
ヤルセル・セーデルベリ著『ドクトル・グラス』より
<single quot>
<outline>
遥か未来のお話。
人類は既に惑星再生技術や超光速移動や通信能力を手にし、数々の惑星へと入植しその版図を広げていた。
その内の一つ。
惑星マリアネスも例外ではなかった。
地球人類の管理下によって、かつて入植を果たした惑星の一つ。
マリアネスは地球型惑星の一つで、比較的低規模なテラフォーミングで地球人類の植民惑星になった。
そして開発が進むと、マリアネスには地球と比べ段違いの資源があることが分かる。
初めに入植した開拓団を差し置いて、地球連邦政府直轄の企業連合体と、その連合体の代表であるシュリーフェンという男が、その利益と開発を担当することになった。
数々のレアメタルの鉱脈は、宇宙開拓に是が非でも必要な戦略物資だった。
ウランやプルトニウムといった原子力技術に必要不可欠な物資も、マリアネスには豊富にあった。
しかし、これがマリアネスに火種を産むことになると、地球連邦政府は考えていなかった。
――はじまったのは、戦争だった。
企業連合体代表のシュリーフェンは「シュリーフェン帝国」の建国を宣言。
地球連邦から供給されたテクノロジーを使って、入植していた有象無象のほか自治体に宣戦を布告。
自治体の資源採掘を『帝国の領土の不法な搾取』と宣言し、武力で惑星統一を開始する。
しかし、それに反抗する者たちもいた。
原住人類と地球より入植した開拓団が連携し「マリアネス連合」が設立される。
マリアネス連合は、
『マリアネスの資源採掘の安定化と、この採掘権を侵犯する可能性のある国家への抑止力と、連帯した国家防衛により連合体としての防衛力を教示するため』
シュリーフェン帝国との戦争状態に突入する。
しかし、惑星をまたぐ勢力同士が衝突すればこのマリアネスは荒廃するだろう。
そこで、地球連邦が調停に入った。
彼らは紳士的な、あるいは悪魔的な無慈悲なルールをこの戦争に設けたのだった。
それは―――《この惑星の住民のみが、この惑星の資源を巡る戦いに参加する》と言うものだった。
つまり、地球はこの惑星の戦争に対する一切に関与しない、と。
かくして、シュリーフェン帝国とマリアネス連合は飽くなき闘争へと身を投じ、戦い続けることとなってしまった。
彼らはいびつな技術体系から生み出された戦闘兵器を駆使し、何を生み出すのだろうか。
この物語は、シュリーフェン帝国とマリアネス連合の戦いが始まってから三十年が経過した両国の狭間。
そこに存在した、一つの共和国の滅亡から始まった。
〈/outline〉
※本文は外星言語である統一マリアネス語で書かれた文章を日本語訳したものであり、換算可能な単位は読者の理解を容易にするため、すべてSI単位系に置き換えられている。
また、翻訳困難な曜日・月の表記は発音の近いカタカナ、あるいは訳語で表記してある。
原語表記はそれに類するデータの入手が困難なため、付録Aを参照されたし。
(業者追記α:付録Aは紛失しております。ご理解ください)
※二 ミーム汚染による人的被害を回避するため、各武装・軍事組織が行ったミーム兵器に関する情報、あるいはその存在をほのめかすような記述、ミーム兵器そのものに関する情報はすべて削除されている。