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アムスホルン大陸記  作者: EDA
第三章 紡がれる運命
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Ⅱ-Ⅴ 牢獄の少年

2017.8/5 更新分 1/1

「やあ、気分はいかがかな?」


 レイフォンが呼びかけると、その少年は光の強い瞳で見つめ返してきた。

『裁きの塔』の、牢獄の一室である。薄暗い石造りの牢獄の真ん中で、その少年はひとり黙然と座り込んでいた。


「……べつだん、気分は悪くない。ただ、首を刎ねるなら首を刎ねるで、さっさと済ませてほしいものだと考えている」


「君が首を刎ねられるほどの罪を犯したとは思えないね。ともあれ、力は失っていないようで何よりだ」


 この少年が王都に連れてこられてから、すでに二日の時が過ぎていた。 

 その間に、彼がいわれもなき罪で処刑されてしまわないように、ティムトが裏で手を回してくれたのだ。幸い、彼は黒羊宮で見たときと同じままの姿であり、手ひどい拷問などを受けた様子も見られなかった。


 肩までかかる髪は赤褐色をしており、肌は日に焼けた黄褐色。まなじりの切れあがった大きな目は、琥珀のごとく黄色に光っている。

 ティムトとそれほど年齢も変わらなそうな、ごく若い少年である。ずいぶん落ち着き払っているが、せいぜい十五、六歳といったところだろう。


 小柄で細身の体躯をしているが、粗末な布の服からのびた手足は革鞭のように引き締まっており、いかにも屈強の狩人めいている。彼はシャーリの川で大鰐を狩る、グレン族という自由開拓民の末裔であるのだった。


 鉄の檻ごしにそれと相対するのは、レイフォン、ティムト、ディラーム老の三名である。このような苦境にありながら、そのグレン族の少年ロア=ファムは力強い眼差しでレイフォンらを見やっていた。


「君の身柄は、第二遠征兵団から私のもとに移された。ただし、私が君から有益な情報を引き出せない限り、その身柄はまたあちらに戻されてしまうだろう。そうなったら、何をどう弁明しようとも首を刎ねられてしまうかもしれないね」


 レイフォンの言葉に、ロア=ファムはうろんげに首を傾げた。


「よくわからないが、俺の知っている話はすべて打ち明けている。というか、もともと俺にはそれほど語るべき話はないのだ」


「それは、聞き手の度量にもよるのじゃないのかな。私たちが何を知りたがっているのかがわからなければ、君も語りようがないだろうからね」


 あくまでも穏やかに、レイフォンはそう言いつのった。

 ロア=ファムの身柄が第二遠征兵団に戻されたら、今度こそロネック将軍の憂さ晴らしで首を刎ねられてしまうかもしれない。レイフォンとしては、何としてでもそんな運命から彼を救い出したかったのだった。


「まず、以前に聞いた話をもう一度確認させていただこう。グレン族の中でカノン王子を名乗る一党に身を投じたのは、君の姉君であるメナ=ファムという人物ただひとりであるのだね?」


「ああ。だから、他の民たちに罪はない。馬鹿な姉の罪を問うならば、どうか俺ひとりの首で勘弁してもらいたい」


「君の姉君は、どうしてそんな怪しげな一党に身を投じてしまったのかな?」


「……それは、あいつが馬鹿だからだ」


「馬鹿でも馬鹿なりに理由はあるはずだろう。銅貨でその腕前を買われたとか?」


「いくら馬鹿でも銅貨のために故郷を捨てたりはしない。あいつは……たぶん、その王子と名乗る人間に同情したのだろうと思う」


「同情?」と不思議そうに言ったのはディラーム老であった。

「ああ」とロア=ファムは首肯する。


「理由はわからない。ただ、あいつはその王子と名乗る人間のことを放っておけないのだと述べていた。百人もの傭兵どもに守られた人間の、何がそんなに心配だったのか……やっぱり、馬鹿なのだろう」


「ふむ。それでも、その者たちが王都に戦を仕掛けようなどと考えていたのならば、心配で済む話ではなかろうな。もっとも、おぬしの姉が助力したところで、十万を数える獅子の軍勢を相手に百名の傭兵では、何をどのようにしても太刀打ちはできまいが」


「ああ。だからやっぱり、馬鹿なのだろう」


「しかし、その者が王殺しの疑いをかけられたと聞けば、義侠心をかきたてられたとしても不思議はあるまい。……あくまで、その者を真のカノン王子と信じれば、であるが」


 そう言って、ディラーム老はゆっくりと首を横に振った。

 きっと、王子とともに銀獅子宮で朽ちたヴァルダヌスのことを思い出してしまったのだろう。燭台の火に照らされるその面には、きわめて沈痛な表情が浮かべられていた。

 それを気の毒に思いながら、レイフォンは質問を再開する。


「それで、君の姉君とカノン王子を名乗る人間の出会いについてだけど……その人物がシャーリの大鰐に襲われたところを、君の姉君が救ったのだそうだね。さしもの傭兵たちでも、大鰐が相手ではなすすべもなかったのかな?」


「いや。そいつは側近の傭兵と二人きりで、シャーリの川に浸かっていたらしい。うぶな小娘でもあるまいし、こそこそと隠れて身を清めようなどとするから、そのような災いを招いてしまうのだ」


「側近の傭兵」と、今度はティムトがつぶやいた。

 しかしそれ以上は何も語ろうとしないので、レイフォンが続きの言葉を発する。


「それで、そのカノン王子を名乗る人物は、銀色の髪に血の色を透かした瞳を持つ白膚症であったわけだね?」


「いや、俺はそいつの姿を見ていない。一族の、別の人間が目にしていたのだ。それはまるで、どこぞの姫君のように美しい男であったと言っていた」


 そのように述べてから、ロア=ファムは赤茶けた髪をかき回した。


「どうでもいいが、その男の呼び名が長ったらしくてわずらわしい。あれはやっぱり、偽物の王子であったのか?」


「うん、まあ、いまだに確証はないけれどね。我々は、偽物であると見なして話を進めているよ」


「ならば、偽王子とでも呼ばせてもらおう。その偽王子は、確かに銀色の髪と赤い瞳を持っていたと聞いている。それに、カロンの乳のように白い肌をしていたそうだ」


「なるほど。その人物が本物であれ偽物であれ、白膚症であることに間違いはないらしい。それで、その一党はどこから姿を現したのだろうか?」


「知らん。そいつらがシャーリの集落に姿を現す前から、その近辺では盗賊団に喧嘩を売る謎の一党が暴れ回っているという噂が流れていた。俺が最初に話を聞いたのは……バルドの内海まで船を出している船頭からだったな」


「バルドの内海か。確かにその一党は、セルヴァの中央区域で活動を続けていたようだね」


 そろそろ前置きは終了である。

 レイフォンは姿勢をあらためて、ティムトから授かっていた質問をロア=ファムにぶつけることにした。


「ロア=ファム。その一党に、傭兵らしからぬ人間は加わっていなかったかな?」


「うむ? どういう意味だ、それは?」


「我々は、宮廷に出入りをしていた人間が、その一党に力を貸しているのではないかと考えているんだ。カノン王子が白膚症であることを知っている人間などはごく限られているので、その人物が偽王子という存在を作りあげたのではないかと疑っているのだよ」


「宮廷に出入りしていた人間というと……つまりは、お前たちのような貴族ということか? そんな立派な身なりをした人間は見かけなかったと思う」


「身なりは自由に変えられるからね。貴族やそれに連なる身分でありながら、粗末な甲冑を身に纏い、傭兵に化けていたという可能性もあるだろう?」


 ロア=ファムはしばらく考え込んでいたが、やがてあきらめたように首を振った。


「俺が見た限りでは、そんな怪しげな人間はいなかった。もちろん、百名以上もいた傭兵どもの姿をすべて間近から見たわけではないので、確かなことは言えないが」


「そうか。それは残念だ」


 最初の矢は、外れたようである。

 では、次の矢を――と、レイフォンが口を開きかけたところで、ティムトが初めて声をあげた。


「その、偽王子の沐浴に付き添っていた側近というのは、どういった人物であったのでしょう? あなたはその人物の姿を見ていますか?」


「ああ。そいつは傭兵の束ね役だ。姉と俺が言葉を交わしているとき、ずっと忌々しそうにこちらをにらみつけていた」


「忌々しそうに? それは、誰に対してなのかな?」


 思わずレイフォンが口をはさんでしまうと、ロア=ファムは仏頂面で肩をすくめた。


「もちろん、馬鹿な姉に対してだ。あの男は、姉が一党に加わることをとても迷惑がっているようだった。腕は立っても、あいつは馬鹿だからな。迷惑がられるのが当たり前だ」


「それで、その人物はどういう風貌をしておられるのでしょう?」


 レイフォンをさえぎるようにして、ティムトがまた声をあげる。

 ロア=ファムは、遠い記憶に思いを馳せるように目を細めた。


「どういう風貌と言われてもな……年の頃は二十を少し過ぎたぐらいで、背の高さはそこのお前ぐらい。茶色い髪と瞳をしていて、肌は俺と同じぐらい日に焼けていた」


 そこのお前というのは、レイフォンのことである。

 西の民としては、それなりに長身であるということだ。


「あれはかなりの手練だったと思う。俺の姉でもそう簡単には倒せないぐらいの力量だろうな」


「ほう。ということは、君の姉君はそれ以上の手練なのだね」


「馬鹿だが、腕は立つやつだったのだ。背だって、お前より拳ひとつ分は大きいしな」


 自分よりも長身の女性など、レイフォンはこれまでに見たこともなかった。北部の生まれであるクリスフィア姫とて、レイフォンよりは指三本分ほど小柄であるのだ。


「その人物は、本当に傭兵であったのでしょうか? 王都生まれの騎士か何かが傭兵に身をやつしていた、とは考えられませんか?」


「いや、あいつはそんな上等な生まれであるようには思えなかった。手負いの獣のように荒んだ目つきをした、剣の腕だけが頼りである人間に見えたぞ」


「そうですか……」とティムトは目を伏せてしまう。珍しいことに、その明敏な洞察力から生じるひらめきが外れてしまったらしい。

 すると、ディラーム老がかたわらから声をあげた。


「しかし、茶色い髪と瞳だけでは、何の手がかりにもなりはしないな。日に焼けた肌というところで、南部寄りの生まれであると察せられるぐらいだ。他に何か特徴はなかったのか?」


「特徴か……そういえば、左の頬に大きな古傷があったな」


 古傷ぐらい、傭兵であればいくらでも負っていることだろう。

 レイフォンはそのように考えたが、何故かディラーム老の目の色が変わっていた。


「左の頬に、大きな古傷? 顔立ちは、いったいどのようなものであったのだ?」


「どのようなと言われてもな……まあ、あんな目つきをしていなければ、女に気に入られそうな顔立ちではあった。わりあい、身体つきもすらりとしていたしな」


 ディラーム老は、興奮気味にレイフォンたちを振り返ってくる。


「レイフォンよ、それはもしかしたら、エルヴィルであるのかもしれんぞ」


「エルヴィル? ……とは、どなたのことでありましたっけ?」


「何を寝ぼけたことを言っておる! ヴァルダヌスの旗下にあった千獅子長であった男だ! あやつもちょうどおぬしと同じぐらいの背丈であり、左の頬に古傷を負っていたのだ! 年の頃も、ちょうど二十を過ぎたぐらいであったはずだぞ!」


 それでレイフォンも思い出すことができた。ディラーム老が是非とも自分の旗下に加えたいと願って調べたところ、千獅子長の身分を剥奪されて王都を追放されていた人物である。


「ええと、その人物は、どうして王都を追放されてしまったのでしたっけ?」


「とある官女がその人物に懸想してしまい、それに怒った貴族の子弟が決闘を申し込んだのだという話でありましたね。もともと傭兵あがりで千獅子長にまで成り上がることになった人物であるので、それを快く思わない人間も多かったのでしょう。その決闘において相手を深く傷つけてしまったため、王都を追放されてしまったのですよ」


 そのように述べてから、ティムトはロア=ファムを振り返った。


「いかがでしょう? その人物は、エルヴィルと呼ばれたりはしていませんでしたか?」


「ううむ……そこまでは覚えていないな。違う名で呼ばれていたという覚えもないが」


「あやつはたしか、バルドの生まれであったはずだぞ。ヴァルダヌスからそのように聞いた覚えがある。王都を追われて故郷に戻り、そこで銀獅子宮を見舞った災厄について聞き及ぶことになったのではないだろうか?」


 ディラーム老は、すっかり興奮しきってしまっていた。

 しかし、ティムトはあくまで沈着である。


「現段階では、その可能性もある、といったところですね。でも、非常に有益な情報であるかと思われます」


「ここまで話が出揃っているのだから、公算としては五分以上であろう! ……しかしそうすると、これはどういうことなのだ? あやつはもしかして、ヴァルダヌスの仇を討つために、偽物の王子などを担ぎあげることになったのであろうか?」


「あるいは、ずっと王都の近辺に潜伏していて、本物の王子を災厄から救い出した、とか……?」


 おそるおそるレイフォンが口をはさむと、「それはない」とディラーム老は首を横に振った。


「儂は燃えさかる銀獅子宮をこの目で見ておる。あそこから王子を救い出すことなど……何者にもかなわぬ所業であろう」


 そのように述べてから、ディラーム老は無念そうに唇を噛みしめた。

 ちょっと重苦しい沈黙がその場にたちこめる。

 しばらくしてそれを破ったのは、獄中のロア=ファムであった。


「俺にはよく話がわからぬのだが、あなたにとってカノン王子というのはそれほどまでに大事な存在であったのか、ご老人よ?」


 ディラーム老はけげんそうにロア=ファムを見た。


「いや、儂にとって大事であったのは、カノン王子や前王とともに魂を返すことになった、ヴァルダヌスという男のほうだ。あやつは……儂にとって、息子も同然の存在であったからな」


「そうか」とロア=ファムは息をついた。

 なんとなく、ほっとしたような面持ちである。


「ロア=ファム、どうして君はそのような話が気になったのかな?」


「うむ? ……いや、そのご老人にとってカノン王子というのがそれほどまでに大事な相手であったのなら、偽王子などに与する俺の姉などは許せぬ存在であろうからな。そうでないことに安心しただけだ」


「なるほど。君はずいぶん情が深いのだね、ロア=ファム」


「……俺のことをからかっているのか?」


 ロア=ファムが、ぶすっとした顔でレイフォンをにらみつけてくる。

 そうすると、彼は年齢相応の可愛らしい少年に見えた。


「何にせよ、王子の名を騙るなどというのは王国において大罪なのだろう。俺の姉はそんな大罪に加担してしまったのだから、俺は首を刎ねられても文句は言わん。ただ、集落の皆だけは、どうか許してもらいたい」


「何もそのように死に急ぐことはあるまい。また、姉の罪を弟につぐなわせる法など、このセルヴァには存在せぬのだ。おぬしを罪人扱いしたロネックの部下どもこそ、鞭で打たれるべきであろう」


 威厳に満ちみちた声で、ディラーム老はそのように言い放った。

 そして、強い眼差しをレイフォンに向けてくる。


「レイフォンよ、これでもう用事は足りたのではないか? ロネックたちが聞き出せぬことを、我々は聞き出すことがかなった。今後は新王も、我々がこの若者をどのように扱おうとも文句は言いたてまい」


「ああ、ええ、そうですね……」


 レイフォンは判断をあおぐべく、ティムトを横目で見る。

 ティムトはすました顔で「そうですね」とうなずいた。


「まずは、偽王子の側近がエルヴィルという人物であるかもしれない、という話を新王にお伝えいたしましょう。その上で、もっと有益な情報を引き出せるかもしれない、ということで、彼の身柄を金狼宮に移すように提言してみてはいかがでしょうか?」


「金狼宮に? そこで彼をかくまうのかい?」


「名目上は、そこで尋問を続けるのですよ。幸いというか何というか、金狼宮には同じような境遇にある客人がすでに滞在しておられますからね」


 それは、ギムとデンのことである。

 ディラーム老にあてがわれた一室は、ますます騒がしいことになりそうであった。


「そうしてほとぼりが過ぎるのを待てば、ロネック将軍の矛先も別に向かうでしょう。もとより、彼を処刑したって事態が好転するわけではありませんからね。レイフォン様の仰る通り、罪もなき人間を憂さ晴らしで処刑させるなど、断じて許すことはできません」


 それはティムトの本心ではなく、おそらくロア=ファムに聞かせるための言葉であるのだろう。ロア=ファムがレイフォンに恩義を感じるように仕向けているのだ。


(それでもまあ、ロア=ファムの安全を確保するのが第一だからな)


 気を取りなおして、レイフォンはロア=ファムを振り返った。


「それではね。我々はいったん戻るけれども、近日中にまた顔を出せると思う。そのときには、もう少しまともな待遇を君に与えられると思うよ」


「……よくわからないが、俺のために尽力してくれているならば、礼を述べさせてもらう」


 ロア=ファムは片方の拳を床につくと、ぐっと頭を下げてきた。

 それに別れの言葉を告げて、レイフォンたちは『裁きの塔』を後にする。


 しかし、そこには思わぬ人物が待ち受けていた。

『裁きの塔』を出て、徒歩で宮殿に戻ろうとすると、道の片隅に小さな人影がたたずんでいたのである。


「お待ちしておりました、レイフォン様……ディラーム様も、ご機嫌うるわしゅう……」


「ゼラ殿か。このような場所で、いったいどうされたのかな?」


「危急の事態が生じてしまったのです……白牛宮まで足を運んだところ、『裁きの塔』に出向かれたというお話であったので、こちらでお待ちしておりました……」


 明るい日の下で見ても、陰気なゼラである。

 この祓魔官を好いていないディラーム老は、うろんげに顔をしかめてその小さな姿をにらみつけていた。


「危急の事態とは? いったい何が起きたというのだ?」


「はい……さきほど、ダーム公爵邸から使者が到着したのです……」


 その言葉に、レイフォンは息を呑むことになった。

 クリスフィア姫が滞在しているダーム公爵邸で、いったい何が起きたというのか――しかも、ティムトの推測によると、その地にはダリアスまでもが潜伏している公算が高かったのだった。


「まさか、クリスフィア姫が何か災いにでも見舞われたのではなかろうな?」


 ディラーム老が、気色ばんでゼラに詰め寄った。

 ゼラは、「いえ……」と首を振る。


「クリスフィア様は、ご無事であられるようです……しかし、公爵邸に賊が押し入ったとのことで……」


「公爵邸に賊だと? それで何が、危急だと言うのだ? はっきりと申せ!」


「はい……驚くべきことに、十二獅子将シーズ様を始めとする騎士団の人間の何名かが、それで生命を落とすことになった、との報告でありました……」


「十二獅子将のシーズが……死んだ?」


 ディラーム老は、慄然と立ちすくんでいた。

 もちろんレイフォンも、同じように驚愕していた。

 それはまさしく、青天の霹靂としか言いようのない凶報であったのだった。

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