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アムスホルン大陸記  作者: EDA
第三章 紡がれる運命
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Ⅴ-Ⅱ 石の部屋

2017.5/13 更新分 1/1

 ゼラドの大公ベアルズとの会見を終えた後、偽王子の一行はオータム城の一室へと案内された。

 どこもかしこも石造りの城である。ただ、部屋にも回廊にもあちこち窓が切られているため、それほど暑苦しいことはない。一行が案内された二階の客間も、三人でくつろぐには十分すぎる広さがあり、そして窓から心地好い風が吹き込んでいた。


「それでは、御用の際は何なりとお申しつけください」


 三人をここまで案内してきた小姓は、部屋と回廊の間に存在する次の間という場所に控えるようだった。長槍を携えた衛兵たちは、その外側の扉の前で見張りの役を担っているはずである。


「ふん。木造りの家で育ったあたしには文句のつけようもない立派な部屋だけどさ。こいつだけは、どうにもいただけないね」


 そのように述べながら、メナ=ファムは窓に嵌められた鉄の格子を軽く揺さぶってみせた。

 格子は石の壁にがっちりと埋め込まれており、メナ=ファムが揺さぶってもびくともしない。刀を奪われた上にこの仕打ちでは、どう画策しても逃亡は不可能なようだった。


「さて、それじゃあどうするんだい? 今後の展望ってやつを聞かせてもらえたら幸いだねえ、エルヴィル」


 さらにメナ=ファムがそのように言葉を重ねると、エルヴィルは険しい表情で「おい」と顔を寄せてきた。


「迂闊なことを口走るなよ。この部屋には、おそらく伝声管が仕込まれている」


「伝声管? 何だいそりゃ?」


「部屋での会話を盗み聞きするための手管だ。たとえ姿が見えなくとも、常にゼラドの人間に聞かれているつもりでいろ」


「はん、そいつは心温まる話だねえ」


 そのように答えてから、メナ=ファムはシルファを振り返った。

 シルファは偽王子としての毅然とした姿を保っていたが、いささかならず顔色が悪い。まだ怪我が治りきっていない上に極度の緊張を強いられて、すっかり参ってしまっているのだろう。


「とりあえず、王子殿下は楽にしてなよ。この先にどんな騒ぎが待ち受けているとしても、先にぶっ倒れちまったら大ごとだ」


「うむ。……甲冑はまだ身に纏っているべきなのだろうか?」


 その言葉は、エルヴィルに向けられたものだった。

 エルヴィルは少し迷うような表情を見せたが、やがて決然と首を振った。


「いえ、ゼラド大公もさしあたっては客人として遇してくれると約束してくれたのですから、こちらも敵意がないことを示すべきでしょう。メナ=ファム、甲冑をお外しになるのを手伝ってやれ」


「ほいほい、了解だよ、団長殿」


 だいぶんくたびれてきた白銀の甲冑を、ひとつずつシルファの身体から外していく。その下に着込んでいるのは分厚く頑丈な布の衣服で、おまけにシルファは胸もとが平らになるようにきつく包帯を巻いていたので、甲冑を脱いでも何とか男性らしい体裁を保てていた。


「腕の傷の具合はどうだい? 薬を持ってこさせようか?」


「いや、大丈夫だ。それよりも、少し休みたい」


 そう言って、シルファは長椅子にぐったりと座り込んだ。

 それを見下ろすメナ=ファムの鼻先に、エルヴィルが水で濡らした布巾を突きつけてくる。


「お顔と足ぐらいは拭ってさしあげろ。またすぐに呼びつけられるかもしれないからな」


「……ねえ、本当にこの先はどうするつもりなんだい? このままじゃあ、シルファは身体も心も持ちやしないよ?」


 メナ=ファムはせいいっぱい声を潜めてみせたが、それでもエルヴィルにきつくにらまれてしまった。


「二度とその名前を口にするな。その御方は、セルヴァの第四王子カノン殿下なのだ」


 同じように潜められた声が、メナ=ファムの耳に吹き込まれてくる。

 メナ=ファムは溜息をつきながら、汗と砂塵で汚れたシルファの顔をぬぐってやった。


 その部屋には身体を清めるための水瓶や、それに酒瓶と酒杯などまで準備されていた。確かに客人として遇しようという気持ちはあるのだろう。しかし、今のシルファに必要なのは、心からくつろぐことのできる空間であるはずだった。


(こんな茶番、絶対に長続きするはずがないじゃないか)


 ゼラドの兵に囲まれて過ごしたこの十日間でも、いつシルファの正体が露見するかと薄氷を踏むような思いであったのだ。このように閉ざされた場所で、四六時中見張られていたら、シルファが女性であることを隠し通すことなどとうてい可能だとは思えなかった。


(仲間とは引き離されて、刀も奪われて、力ずくで逃げることもできそうにない。いったいエルヴィルは、この先をどうやって切り抜けるつもりなんだ?)


 メナ=ファムがそのように考えたとき、扉が外から叩かれた。


「失礼いたします。連隊長のラギス様がお見えになりました」


 こちらからの返事も待たず、扉が開かれる。

 そこから姿を現したのは、謁見の間で別れたばかりの若き武人であった。


「邪魔するぞ。なかなか上等な部屋を与えられたようだな」


 ラギスも鎧を纏ったままで、ただ兜だけは小脇に抱えていた。

 くせのある黒褐色の髪と、日に焼けた黄色い顔が剥き出しになっている。この十日間でも何度か見たことのある彼の素顔であるが、その黒い瞳にはやはり爛々とした光が宿っていた。


「客人がたに話がある。お前は下がっていろ」


 ラギスが言うと、小姓は困惑しきったように両手をもみしぼった。


「は、ですが、このような際には同席するよう命じられておりますので……」


「どうせこの部屋の会話は盗み聞きしているのであろうが? 目障りだから消えろと言っているのだ」


 ラギスににらみつけられると、気の毒な小姓は真っ青な顔をして扉の向こうに引っ込んでいった。


「ふん。小姓風情までもが俺の存在をなめくさっている。ゼラドの安寧は誰に守られていると思っているのだ」


 ラギスは大股で進み出てくると、シルファの正面に置かれた長椅子に荒っぽく腰を下ろした。甲冑の腰あてが上等な敷布を傷つけてしまいそうであったが、そんなことは気にする風でもない。


「さすがに疲れた顔をしているな。気分はどうだ、カノン王子よ?」


「……わたしのように寄る辺ない存在を客人として迎え入れていただき、深く感謝している」


「ふん。いつ首を刎ねられるのかと冷や冷やしているのだろう? まったく難儀な運命を選び取ったものだ」


 にやりと笑いながら、ラギスは横目でエルヴィルをねめつけた。


「まもなくこの部屋に書記官が訪れる。貴様の氏素性を聞きほじって、それが真実であるかどうかを確認するのだそうだ。……貴様はアルグラッドの千獅子長であると名乗っていたそうだが、まさかすぐに露見するような虚言は吐いておらぬだろうな?」


「……虚言などは吐いていない。ゼラドにそれを真実と見極められる力や手段が備わっていることを祈るばかりだ」


「案ずるな。アルグラッドにだって、我らの間者は幾人も潜んでいる。このていどの真実を探るのに不都合はない」


 そうしてラギスは、満足げに唇を吊り上げた。


「では、その点に関して嘘はないのだな。千獅子長でありながら王都を追放されたそうだが、貴様はいったい何をやらかしたのだ?」


「……あなたは壁の外からでも謁見の間の言葉を聞くことができるのだな、ラギス殿」


「おお、さっきの仕返しか? 確かに俺は謁見の間を追い出されようとも何が語られているかを知ることができるし、大公殿下だってそれぐらいのことはきちんとわきまえている。だからこそ、伝声管の仕込まれたこの部屋でも、誰をはばかることなく会話をすることができるのだ」


 そのように述べながら、ラギスは中央に置かれた卓に手をのばした。

 陶磁の瓶から酒杯に赤い果実酒をそそぎ、それを美味そうに飲み下す。火のように両目を燃やしつつ、この若者はこの若者なりに上機嫌であるように感じられた。


「王城や宮殿などというのは、みなこのようなものであろう? 誰も彼もが覗き見や盗み聞きをして、自分が損をしないように立ち振る舞っている。俺とて、剣の腕を磨くだけでは、とうてい生き長らえることはできんのだ。これもまた、ゼラドの流儀なのだよ、お客人」


「…………」


「それで、そっちの女は自由開拓民の狩人であるそうだな。なかなか腕は立ちそうだが、よく見れば色気がないわけでもないようだ」


 答えるべき言葉を見つけられなかったので、メナ=ファムはひとつ肩をすくめてみせた。

 新たな酒を酒杯に注ぎつつ、ラギスはまだにやにやと笑っている。


「それで、いちおう聞いておきたいのだが……貴様は王子殿下に夜伽も申しつけられているのか、女狩人よ?」


「あたしの名前はメナ=ファムだよ。そんな質問に答えるいわれがあるのかい?」


「大いにある。が、まあ、大事なのはこれまでのことではなく、これからのことだ。仮に夜伽を申しつけられていたとしても、今後は控えることだ。若いみそらで魂を返したくなければな」


「ますますわからないね。あたしと王子殿下が情を交わし合ったら、どうして魂を返すことになっちまうんだい?」


「それぐらいのこともわからないのか? さすがは開拓民の蛮人だな」


 メナ=ファムにはわけがわからなかったし、また、わかりたいとも思わなかった。どのみち、女同士であるシルファと情を交わし合うことなど不可能であるのだ。


「もしも貴様が王子殿下の子を孕んだとしたら、何とする? 世継ぎを巡って争うのは王家の宿命だ。ましてや下賤な開拓民の子などが嫡子となることは許されぬのだから、ゆめゆめ俺の忠告を忘れぬことだ」


「ああ、そういうお話かい。でも王子殿下は、王位なんちゃらの権利を奪われてるって話だったよね」


「それでも前王カイロスの子であれば、誰よりも正統な血を引いていることになる。……新王ベイギルスさえこの世から消え失せればの話だがな」


 そう言って、ラギスは再び果実酒をあおった。

 立て続けに二杯の酒をあおっても、まったく酔っている様子はない。ただ、その目はいよいよ黒い炎のように燃えさかっていた。


「大公殿下のお手間を、ここではぶいてやるとしよう。もしもこのエルヴィルという男の素性が確かで、お前がセルヴァの第四王子であると認められた場合は……お前は王都アルグラッドを陥落するための旗印に祭り上げられることになるのだ、カノン王子よ」


「……アルグラッドを陥落するための、旗印?」


「おお。お前とて、新王ベイギルスは不当な手段でもって玉座についたのだと弾劾し、兵を募っていたのだろう? それにゼラドが手を貸して、正しき後継者に玉座を取り戻す。そうでなければ、苦労をしてお前を手に入れた甲斐もあるまい」


 メナ=ファムは内心で息を呑むことになった。

 それは、エルヴィルの思惑と完全に合致する申し出であったのだ。

 ただし、シルファが偽王子であることを隠した上での合致である。


「そうして玉座を取り戻したあかつきには、ゼラドの人間を王妃としてもらう。残念ながら、大公殿下の直系に女児はおらぬが、妃の候補に困ることはあるまい。これにて百年に及ぶ王都とゼラドの戦いには終止符が打たれ、セルヴァは正統な支配者のもとに平定されるということだ。誰にとっても幸福な未来であろう?」


「わたしを、セルヴァの新たな王に……ベアルズ大公は、本当にそこまでのお考えであられるのかな」


 長椅子の背にけだるげにもたれたシルファは、血の色の透けた瞳で静かにラギスの顔を見返していた。

 動揺も、困惑もしていない――していたとしても完全にそれを包み隠した、沈着なる眼差しだ。


「それぐらいのお考えでなければ、お前を助ける甲斐もなかったということだ。お前とて、それだけの覚悟があってこのオータムにまでやってきたのだろう、王子よ?」


「……むろん、わたしの悲願は、父とヴァルダヌスを悪辣な手段で弑したベイギルスの首を獲ることである」


「いい返答だ。それにはまず、そこのエルヴィルなる男の素性を確かめる必要があるがな」


 そこでメナ=ファムは、ついに黙っていられなくなってしまった。


「ずいぶん団長殿の素性を気にかけているんだね。あんたがたが気にするべきは、王子殿下の素性なんじゃないのかい?」


「うん? カノン王子は幼子の頃から幽閉されていたので、その姿を正しく知る者さえいないのだろう? それでは素性の確かめようなどない。白銀の髪と、血の色の透けた瞳と、ジャガルの民よりも白い肌――と、噂で伝え聞く特徴はそのままであることだしな」


「いや、だけど――」


「ああ、エイラの神殿の修道女というものが、唯一その姿を知るのだったか。そのようなものは、気にかける必要もあるまいよ」


 ラギスは、野獣のような顔で笑った。


「万が一にも、その修道女めがたわけたことを口走るようであれば……虚偽の罪で首を刎ねてやればいいだけのことだ」


「何だって? それじゃあ、あんたたちは――」


「重要なのは、民が信じるかどうかなのだ。王子と親交のあったヴァルダヌスの配下であった人間が、その無念を晴らすために立ち上がったのだと触れ回れば、それを真実と押し通すことはたやすい。王子とヴァルダヌスの顛末については、すでにセルヴァ中の人間の知るところであるのだからな」


 ラギスは座したまま身を乗り出して、シルファの不思議な色合いをした瞳をすくいあげるようにねめつけた。


「前王弑逆の疑いをかけられていた第四王子が実は生きていて、新王こそが真なる叛逆者であると告発する。……実によくできた筋書きだ。王位継承権を剥奪されていた忌み子の王子よりも、王弟ベイギルスのほうが、前王を殺害する大罪人には相応しい。玉座のために兄とその子供たちを皆殺しにした男など、民は決して王と認めないだろう。それならば、理由も明かされぬまま幽閉されていた悲運の美しき王子のほうが、よほど王には相応しいと認められるだろうさ」


「…………」


「だから重要なのは、貴様の氏素性なのだ、エルヴィルよ。素顔を知るものもいない第四王子よりも、貴様の身もとこそがこの筋書きを真実たらしめるのだ」


「それじゃあ、王子は偽物でもかまわないってのかい?」


 メナ=ファムが口をはさむと、ラギスは「ああ」と口もとをねじ曲げた。


「大公家の悲願は、セルヴァを平定することだからな。大公家の人間がセルヴァ王の子を孕めば、その悲願は達成される。大事なのは王ではなく王妃の血筋なのだ。お前が本物であろうと偽物であろうと、民が第四王子であると信ずることができれば、それでかまわないのだ。……少しは心が軽くなったかな、カノン王子よ?」


 シルファは何も答えようとしなかった。

 メナ=ファムは、ひたすら呆れるばかりである。


 要するに、ゼラドの者たちは王都を攻める口実と、その後の大公家による王国の支配にしか興味がないのだ。

 それならば――シルファが男でさえあれば、偽物であるということを隠す必要すらなかったということであった。


(何てこった。どうしてあんたはよりにもよって、女のシルファを偽王子なんかに仕立てちまったんだよ、エルヴィル)


 メナ=ファムはそのようにも思ったが、本当の第四王子もシルファも白膚症という珍しい病気の人間であったのだ。なおかつ第四王子は魔物のように美しい容姿である、と噂されていたようなので、その条件に合う他の人間を捜し出すことなど不可能であったのだろうとも思えてしまった。


 逆に考えると、性別の他はすべて条件の合ってしまうシルファが、エルヴィルの目の届くところに存在してしまっていたことが、悪い偶然であったのだ。メナ=ファムとしては、そんな運命神の悪戯心を呪わずにはいられなかった。


「……しかし、まったく惜しいことだな」


 と、ラギルがいくぶん声を低めながら、そのように囁いた。

 その目は、食い入るようにシルファを見つめている。


「お前が女でさえあれば、話はもっと簡単であったのだ。大公殿下には二名もの未婚の子息がいるし……それ以外にだって、セルヴァの玉座に相応しい人間がいないでもない」


 シルファはほんの少しだけ眉をひそめて、ラギスの顔を見返していた。


「しかもお前は、そのような美貌だ。つくづく惜しいぞ、カノン王子よ。……まあ、お前が女であったりしたら、あの色欲に狂った二人の子息が、我を失って奪い合いを始めていたところであろうがな」


「……ならば、わたしが男児であって幸いであったな」


 シルファがそのように応じると、ラギスは「ちっ」と舌を鳴らした。


「まあいい。今日のところはこれぐらいにしておこう。エルヴィルとやらの素性を確かめるのには相応の時間がかかるだろうから、それまではせいぜいくつろいでいるがいいさ」


 ラギスは勢いよく立ち上がり、長椅子に放りだしていた兜をひょいっと拾いあげた。

 そうして扉に向かおうとしてから、何かを思い出したように振り返る。


「そうそう、もうひとつ話があったのだ。あのお前たちと同行していた東の民についてなのだが」


「ああ、ラムルエルも無事でいるのだろうな?」


「今のところは、息災だ。しかし、ゼラドはジャガルと縁の深い地なのでな。敵対国たるシムの人間を兵舎などに置いておいては、のちのち災いになるやもしれん。今の内に首を刎ねておこうかと思うのだが、どうだ?」


 その言葉に、シルファはゆらりと身体を起こした。


「首を刎ねるとはどういうことだ。あの者はゆきずりの商人にすぎないのだから、邪魔になるのならば追い出してしまえばよかろう」


「たとえゆきずりでも、あいつは俺たちが王都の軍を蹴散らす姿を目にしている。まあ、どうせ生き残りの兵どもが王都に逃げ帰るとしても、口をふさいでおくに越したことはあるまい」


「そのようなことが、許されるものか! それがゼラドのやり口だというのか!?」


 ひさかたぶりに、シルファが裂帛の気迫をあらわにした。

 ラギスは、にやりと笑っている。


「いい気迫だ。それならば、お前を真なる王子と信じさせることも難しくはないだろう」


「……わたしの問いに答えよ、ラギス。あのラムルエルは、わたしの生命を救ってくれた恩人でもあるのだ」


「そうか。それでは、生かしておいてやろう。ひとつ貸しだぞ、カノン王子よ」


 笑い声をあげながら、ラギスは部屋を出ていった。

 シルファは、再びぐったりと長椅子の背にもたれかかる。

 そうしてまぶたを閉ざしたその姿は、もはや弱々しい娘のものでしかなかった。


 メナ=ファムは鱗の外套を脱ぎ捨てて、シルファのかたわらにそっと寄り添う。

 エルヴィルは、ラギスの出ていった扉をきつい眼差しでにらみつけていた。

 こうしてシルファたちは、客人とも虜囚ともつかぬ扱いで、オータム城に身を置くことを余儀なくされてしまったのだった。

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