Ⅳ 残されし者たち
2020.11/7 更新分 2/2
・本日は2話同時更新です。読み飛ばしのないようにご注意ください。
宮殿の前庭である石畳の広場に、シムへと出立する面々が居並んでいた。
ダリアスは、新王ベイギルスのかたわらに控えて、それらの人々と相対している。
カノン王子、ヴァルダヌス、リヴェル、チチア、タウロ=ヨシュ。
シルファ、メナ=ファム、ロア=ファム、ラムルエル。
イフィウス、ティムト、ゼラ、ドンティ。
クリスフィア、キャメルス。
メルセウス、ギリル=ザザ、ホドゥレイル=スドラ、ジェイ=シン、リミア・ファ=シン。
気心の知れた人間もいれば、そうでない人間もいる。
しかし誰もが、《まつろわぬ民》を打倒するために手を携えた同志であるのだ。
これらの人々と、無事に再会することはかなうのか――占星師ならぬダリアスに、そんな運命を読み取ることはかなわなかった。
そんなダリアスのかたわらに居並んでいるのは、新王ベイギルス、レイフォン、ディラーム老、イリテウス、フゥライ、リッサ――そして、ラナという顔ぶれだ。
こちらの側には王を守るための近衛兵が整列し、あちらの側にはアブーフとジェノスの兵士たちが整列している。アブーフの兵士はキャメルスがグワラムから率いてきた部隊であり、ジェノスの兵士はメルセウスが王都を来訪する際に同行させていた警護の部隊であった。
アブーフの兵の大半は城門の外で出立の時を待っているはずだが、この場にもジェノスの兵士と合わせて二百名ばかりは立ち並んでいる。その中心に、カノン王子と彼らを乗せるトトスの車が並ばされていたのだった。
「それでは、吉報を待っているぞ、カノンよ。……其方の無事な帰りを待っている」
ベイギルスが、ゆったりとした声音でそのように申しつける。
昨晩の戴冠式から、新王はどこか様子が変わっていた。傲岸に振る舞うこともなく、かといって怯えた顔を見せるでもなく、常にない落ち着きを見せているのだ。ぶくぶくと肥え太った姿に変わりはなかったものの、その双眸からは脂ぎった光が消えて、ごく穏やかな光が宿されていた。
もちろん、一夜にして王としての威厳や風格が生まれたわけではない。
むしろ、すべての虚飾を剥ぎ取られて、凡庸な素顔が明らかにされたかのように思える。
しかしそれは、誰にとっても喜ばしい変化であるはずだった。
前王カイロスは苛烈であり、威厳と力にあふれた存在であったが、それゆえに、弱き存在を軽んじる無慈悲さと、自分の意見を曲げない頑迷さを備えていた。それもまた、王国を繁栄させる資質に成り得たのかもしれないが――このベイギルスであれば、それとは異なる形で王国を統治できるのかもしれなかった。
「この生命を懸けて、《まつろわぬ民》を根絶することをお約束いたします。……ただ、その後の振る舞いに関しては、お目こぼしをいただきたいところですね」
旅装束のカノン王子が、すました顔でそのように応じた。
ベイギルスはその無礼をとがめることなく、相好を崩す。
「何も王宮で王子として暮らすべしと申しつけているわけではない。余としては、それがもっとも望ましい行く末であるのだが……十六年もの長きの時間を、神殿の地下室で過ごしてきた其方であるのだ。そんな其方であれば、自由気ままな暮らしというものがもっとも得難く感じられるのであろう」
「…………」
「しかし、これを今生の別れとしてしまう気にはなれん。王国を救うという使命を果たしたあかつきには、せめてその苦労をねぎらわせてもらいたいのだ。手間をかけさせるが、ひとたびは王都に戻ってきてもらいたく願うぞ」
「……では、余力があればということで」
カノン王子は、いささか感情を持て余している様子で、そのように答えていた。
叔父と甥という近しい間柄でありながら、まだおたがいに相手をどのように扱うべきか、決めかねているのだろう。
すべての使命を果たした後、カノン王子が王都の外で生きることになったとしても、せめてその複雑な関係性を解きほぐしてから巣立ってもらいたいものだと、ダリアスはそのように考えていた。
「イフィウスも、頼んだぞ。其方のために、十二獅子将の座は空けておくからな」
小脇に兜を抱えたイフィウスは、略式の礼で王の言葉に応えた。
「では、じゅっばづいだじまず。おうどにぜいぼうじんのびがりあらんごどを」
イフィウスの号令で、カノン王子らは車に乗り込んだ。
自らトトスにまたがるのは、イフィウスとクリスフィアとキャメルスのみだ。白銀の兜をかぶったクリスフィアは、トトスの背中からダリアスに笑いかけてきた。
「では、王都は任せたぞ、ダリアス殿。必ずや、よき報せを持って帰るからな」
「うむ。武運を祈っているぞ、クリスフィア姫」
二百名からの兵士たちとそれに守られた何台かの車が、城門に向かって進軍していく。
その先頭が城門をくぐると、たちまち遠雷のごとき歓声が聞こえてきた。あちらでは、城下町の人々が出立の時を待ちかまえていたのだ。
「これでようやく、ひと区切りだね。我々も、自分の使命に励むこととしよう」
兵士たちが城門の向こうに消えていく姿を見守りながら、レイフォンがそのように語りかけてきた。
ダリアスは「そうだな」と応じてみせる。
「しかし、妖魅でも現れない限り、俺には為すべきこともなかろう。そちらは、大変な苦労を担わされてしまったな」
「うん、まあね。ゼラドやマヒュドラとの外交には、これまで以上に手をかけなければならないし、王国内の各領地に関しても、ただ使者を飛ばしただけで終わりにすることはできないだろう。妖魅に対する警戒を働きかけると同時に、まずはそれが冗談事でない重大な危機的状況だということを知らしめなければならないし……ああ、それに銀獅子宮や黒羊宮や大聖堂だって、いつまでもあのままにはしておけないよね。まったく、ティムトがこれまでどれだけの苦労を担っていたか、今さらながらに思い知らされた心地だよ」
これまでは、レイフォンの従者たるティムトがそういった雑事を担わされていたという話であったのだ。すべての知略はティムトの発案であり、このレイフォンには何の才覚も備わっていないのだという話であったが――不思議とダリアスは、不安に駆られることもなかった。
「何か俺で役に立てることでもあれば、いくらでも助力するからな。遠慮なく声をかけてくれ」
「ああ。大いに頼らせてもらうよ」
レイフォンは普段通りの優美な微笑を見せてから、ディラーム老のほうに近づいていった。
そして今度は、ベイギルスがダリアスに呼びかけてくる。
「では、我々も白牛宮に戻ることとしよう。昼の食事の前に、いくつかの議題を片付けておかなければならんからな」
「あ、陛下……金狼宮に少々用事を残しているのですが、そちらに立ち寄るお許しをいただけるでしょうか?」
ベイギルスは鷹揚に笑いつつ、「うむ」とうなずいた。
「其方は近衛兵ではなく、遠征兵団長であるのだからな。今後は余のそばに控える必要もないので、自分の仕事を果たすがいい」
「……それでよろしいのでしょうか?」
ベイギルスは笑いながら、自分の咽喉もとをまさぐった。
「この護符を携えておれば、よほどの妖魅でない限り、余に近づくことはできのであろう? また、ヴェヘイムの砦が再建できた現在、この王都は西方神の加護に守られているのだと聞く。ならば、むやみに怯える必要もあるまい」
カノン王子は確かにそのように言っていたが、かつてのベイギルスであれば聖剣を携えたダリアスを決してそばから離そうとしなかったはずだ。
ダリアスもまた、微笑をたたえながら一礼することになった。
「承知いたしました。では、中天の後に御前へ参じさせていただきたく思います」
「うむ。兵団の再編成に関しては、しかと頼んだぞ」
そうしてベイギルスはレイフォンやリッサたちとともに、白牛宮へと立ち去っていった。
ダリアスは、ラナやディラーム老たちとともに、金狼宮である。
「ゼラドもマヒュドラも妖魅の恐ろしさを思い知らされたとはいえ、いつまでも大人しくしているとは限らんからな。改めて、一時休戦の約定を結ぶための使者を送る必要があろう。それを警護する部隊の編成も決めておかなければならんな」
金狼宮に向かう途上で、ディラーム老はそのように語らっていた。
ダリアスは、ひそかに胸の奥が騒ぎ始めるのを感じながら、「ええ」と答えてみせる。
「のちほど、ディラーム老の執務室に参じます。ただ……一刻ばかり、時間をいただけるでしょうか?」
「ああ。そちらの娘の父親たちを、城下町に帰すのだったな」
ラナのほうに視線を移しながら、ディラーム老は静かに微笑んだ。
「あの者たちもずいぶん長きに渡って金狼宮にかくまっていたので、いささか物寂しく思ってしまうな。出立の準備ができたならば、儂にも挨拶をさせてもらいたく思うぞ」
「……もったいなきお言葉でございます」
侍女のお仕着せに身を包んだラナは、恐縮した様子で頭を下げた。
そしてその瞳が、いくぶん不安そうにダリアスを見る。『聖剣の鞘』たるラナはダリアスのもとに留める他ないと伝えているのだが、いまだに不安を消し去れないのだろうか。
(そうしてラナを不安にさせてしまうのは、俺の不徳ゆえであろうな)
そんな風に考えると、ダリアスはいよいよ胸苦しくなってきてしまった。
ダリアスは今日、ひとつの覚悟を固めていたのである。
金狼宮に辿り着いたならば、ディラーム老とイリテウスに別れを告げて、自分の執務室に向かう。先日から、ギムとデンはそちらにねぐらを移していたのだ。
執務室の扉を開くと、そこには予想外の人物が待ちかまえていた。
ダーム公爵トレイアスの侍女たる、レィミアである。
「レィミア……どうしてお前が、このような場所にいるのだ?」
「あら、ご挨拶ね。ダームに戻る前に、声をかけておこうと思ったのよ」
浅黒い肌を持つ妖艶なる侍女は、にっと唇を吊り上げる。
そのかたわらには、留守番を申しつけていた副官のルブスが世にもだらしない面相で脂下がっていた。
「それはわざわざ、ご苦労なことだが……まさか、俺の部屋でよからぬ行いに耽っていたのではなかろうな?」
「とんでもない! いつダリアス殿が戻るかもわからないのに、そんな不埒な真似をするわけがないでしょう?」
しかし彼らは、かつて主人と下僕の関係にあったというのだ。なおかつ、騎士団の騎士であったルブスのほうが下僕であったというのだから、ダリアスとしては溜め息を禁じ得ないところであった。
「トレイアス殿は、どうしたのだ? お前たちの関係は、トレイアス殿には秘密であったのだろう?」
「秘密だからこそ、こうして何食わぬ顔で出向くことができたのよ。まあ、あまり長引くと怪しまれてしまうだろうから、そろそろ戻ってさしあげないとね」
レィミアはくびれた腰に手をあてて、ダリアスに妖しい流し目をくれてきた。
「あなたと主様が和解することができて、心からほっとしたわよ。その調子で、今後も健やかな関係を築いてくれることを願っているわ」
「是非もない。王国の内部で対立しているいとまなど、俺たちには存在しないのだ」
そうしてダリアスは、自分も礼を言っておくことにした。
「また、かつてお前が助力してくれたために、俺たちは王都に迫りくる災厄を退けることができたのだ。あらためて、礼を言わせてもらうぞ、レィミアよ」
「ふん。わたしはあなたこそが災厄の権化であるように思えたから、とっととダームを出ていってほしかっただけよ。礼を言われる筋合いはないわね」
そんな風に言ってから、レィミアはふいにくすりと笑った。
「あなたと話すと、調子が狂うわね。それじゃあ、わたしは帰らせてもらうわよ」
「うむ。トレイアス殿とともに、息災にな」
レィミアはひらひらと手を振って、執務室を出ていった。
それと同時に、ルブスは「ああ……」と嘆息をこぼす。
「まさか再びレィミア様とお会いできるとは、考えてもいませんでしたよ。ダリアス将軍、いずれダームにおもむく機会など生じたら、絶対にお声をかけてくださいね!」
「ふむ。お前は二度とダームの地を踏めぬという話ではなかったか?」
「十二獅子将の副官にまで成り上がっちまえば、公爵様だって迂闊に手は出せないでしょう。というか、そもそもダリアス将軍と公爵様が和解したんだったら、俺の背信を取り沙汰する気にもなれないはずです」
「まあ、何でもかまわんがな。しばらくは王都で大人しくしていることだ」
苦笑しながら、ダリアスはラナを振り返った。
「待たせたな。ギムたちのもとにおもむこう。……ルブスは、こちらに控えていてくれ」
「はいはい。どうぞごゆっくり」
ダリアスはラナをうながして、寝所のほうに足を向けた。
扉を開くと、ギムとデンが弾かれたように立ち上がる。
「どうも、ダリアス様。ご用事は済んだんで?」
「うむ。カノン王子の一行は、無事に王都を出立した。お前たちにも、ずいぶんな苦労を負わせてしまったな」
「とんでもない。こんな立派な貴族様の宮殿で、何日もかくまっていただけて……本当に、なんべん頭を下げたって足りやせん」
ギムはそのように語っていたが、そもそもダリアスを自分の家にかくまってくれたのはギムのほうなのだ。ギムはそのために深手を負い、幽閉までされて、二ヶ月以上も家に戻ることができなかった。彼の鍛冶屋は残された職人たちの手で何とか切り盛りされているという話であったが、それでも多大な迷惑であるはずだった。
「俺などと関わってしまったために、お前たちにはこれほどの不自由を強いることになったのだ。ラナにも幾度となく、危険な目にあわせてしまったし……心から申し訳なく思っている」
「滅相もない。うちのラナが少しでもダリアス様のお役に立てたんなら、そいつは光栄の至りってもんです」
ギムは日に焼けた顔に皺を寄せて、温かく笑ってくれた。
その隣では、デンもにこにこと笑っている。
「俺も家族がどんな顔で出迎えてくれるのか、今から楽しみでなりませんよ。……それで、ラナは王宮に残るんだろう?」
デンの言葉に「ええ……」とうなずいてから、ラナはまた不安げにダリアスを見上げてきた。
ダリアスは呼吸を整えながら、その瞳を見つめ返してみせる。
「ラナよ。俺が聖剣を振るうには、お前の存在が必要だ。《まつろわぬ民》が再び王都に毒牙を向ける可能性は低いとされているが、俺たちは用心に用心を重ねなければならない。よって、お前を城下町に戻すことはできないのだと、どうか理解してもらいたい」
「はい、承知しております」
ほっとしたように、ラナは口もとをほころばせた。
今後もダリアスのそばにいられることを、喜んでくれているのだ。
ダリアスは心臓が激しく高鳴るのを感じながら、ラナの手を取ってみせた。
「しかし、それとは関わりなく――お前には、俺のそばにいてほしいと願っている」
「……え? それは、どういう……?」
「《まつろわぬ民》を討ち倒さぬ限り、王国に真の平和が訪れることはない。だから、それまでは身をつつしまなければならないが……王国に真の平和が訪れたあかつきには、お前を伴侶として迎えたく思っている」
ラナは愕然とした様子で、目を見開いた。
その目に、ゆっくりと涙がふくれあがっていく。
「そんな……十二獅子将たるダリアス様に、わたしなどがそのようなことを望むわけには……」
「望んでいるのは、俺のほうなのだ。誰にも文句など言わせたりはしない」
まぶたからあふれた涙が、ラナの頬を伝って落ちた。
「身分のことなど考えず、お前の正直な気持ちを聞かせてほしい。俺という人間が、お前の伴侶に相応しいかどうか……それだけを考えてほしいのだ」
「わたしの気持ちは……最初から決まっています」
ラナは両手でダリアスの手を握り、そこに自分の額を押し当ててきた。
その温もりに胸を満たされながら、ダリアスはギムを振り返る。
「いきなりの話で、申し訳ないが……父たるギムにも、許しをもらえるだろうか?」
「ラナは……早くに魂を返しちまった妹が遺してくれた、あっしの宝です。そいつをダリアス様みたいに立派なお人にもらっていただけるなら……何の文句もあろうはずがありやせん」
そのように語るギムもまた、皺深い顔に涙をこぼしていた。
「ラナの本当の親である妹とその伴侶も、天の上で喜んでいるでしょう……ありがとうございやす、ダリアス様」
「お前とて、ラナにとっては親そのものだ。お前のように心正しき人間に育てられたからこそ、ラナはこのように立派な人間であれたのだろう」
そうしてダリアスは、デンのほうにも視線を巡らせた。
「すまん、デン。ラナにはお前のような相手が相応しいなどと言っておきながら……俺も自分の気持ちを止めることができなくなってしまったのだ」
「な、何を言ってるんですか。そりゃあまあ、ラナのことは大事に思ってましたけど……やっぱり俺なんて、出来の悪い弟分が相応ってもんですよ」
そう言って、デンは無邪気な笑みを広げた。
「どうかラナを、お願いします。俺にとって、ラナは姉貴みたいなもんなんですから……どうぞ幸せにしてやってください」
ダリアスは「うむ」とうなずいてから、目の前のラナに向きなおった。
ラナはいつしか面を上げて、また涙に濡れた目でダリアスを見上げている。
「あの……デンがわたしに相応しいとは、いったいどういったお話なのでしょうか?」
「あ、いや。デンの力を借りて王都に戻ろうとしていたとき、そのような話になったのだ。俺は魂を返す覚悟であったから、お前にも幸福になってほしいと願って……」
「……それはあまりに、ひどい仕打ちです。デンばかりでなく、わたしにもです」
透明の涙を流しながら、ラナは幼子のように笑った。
「もう二度と、そのようなお言葉は口にしないでください。わたしは魂を返すその瞬間まで、ダリアス様のおそばにありたいと願います」
「……ありがとう、ラナ」
ダリアスは精一杯の思いを込めて、ラナの手を握り返してみせた。
胸の中には、ラナに対する情愛があふれかえっている。この二ヶ月半ほどの間に、ダリアスの中にはこれだけの想いが育まれていたのだった。
(レイフォンなどには、何を呑気なと笑われてしまうかもしれんが……しかし、俺には必要なことであったのだ)
ダリアスはラナの存在を、王国の行く末と同じぐらい大事に思っている。
だからこそ、全身全霊でどちらも守り抜く覚悟であった。
またそれは、決して無関係の話ではないのだ。
これからラナが生きていく世界に、安寧をもたらしたい。人間の幸福と世界の安寧は、分かちがたく結ばれているはずだった。
カノン王子もまた、自分が大事に思う者たちのために、王国の平和を守りたいと願っている。人間にとっては、そういった思いこそが最大の力になるのだろうと、ダリアスはそのように信じていた。
(守ってみせる。どちらも、必ず。俺は、そのために剣を振るうのだ)
ラナの温もりを指先に感じながら、ダリアスはそのように決意を新たにした。
ダリアスを見つめるラナの透き通った眼差しが、そんな決意にいっそうの力を与えてくれているようだった。