表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アムスホルン大陸記  作者: EDA
第八章 再生の道
214/244

Ⅴ-Ⅳ 暗闇の死闘

2020.5/2 更新分 1/1

 ドエルの砦の地下に広がる、鍾乳洞の闇の中――メナ=ファムたちは、おぞましい鬼火の群れと相対することになった。

 鬼火の正体は、妖魅の眼光である。まだその正体は闇の中に隠されていたが、メナ=ファムがこの不気味な気配を見誤ることはなかった。


 慄然と立ち尽くすシルファのかたわらでは、黒豹のプルートゥが凶悪な面相でうなり声をあげている。彼にはこの眼光の主がどれだけ恐るべき存在であるか、嫌でも察知できるのだろう。いっぽう、他の人間たち――エルヴィルとラムルエルとダックの三名は、わけもわからぬままに後ずさっているようだった。


「あれが、妖魅だと……? 夜光虫か何かではないのか?」


 腰の長剣に手をかけつつ、エルヴィルがうめくように言った。

 すでに半月刀を抜いているメナ=ファムは、「違うね」と言い捨ててみせる。


「あんたたちだって、あたしと同じぐらい妖魅と出くわしてるだろ? それなのに、この薄気味悪い気配を感じ取れないのかい?」


「はい。わずかに、寒気、感じますが、理由、わかりません」


 灯篭を掲げたラムルエルは、感情の読めない声でそのように答えた。


「ただし、プルートゥ、警戒しています。危険な存在、疑い、ありません」


「ああ。この世であれほど危険なやつなんざ、そうそう他には存在しないだろうさ」


 言いながら、メナ=ファムはこちらに後ずさってきたダックの姿を横目でねめつけた。

 自らが手にした灯篭によって、その横顔が照らし出されている。外套の頭巾を深く傾けているので判然としなかったが、その意外に若い顔は驚愕に引きつっているようだった。


「ねえ、ダック。まさか、あんたがあたしらを罠に嵌めたんじゃないだろうね?」


「も、もちろんでございます……わたしを、お疑いなのですか……?」


「いんや。ただ、ろくに知らない相手に背中を預けるってのは、なかなかにおっかないもんなんでね」


 もちろんメナ=ファムも、本気でこのダックを疑っているわけではなかった。彼がメナ=ファムたちの破滅を願っていたならば、もっといくらでもやりようはあったはずなのだ。

 ダックはごくりと生唾を呑み下してから、おもむろに外套の内側へと手を差し入れた。


「わたくしは、自分の主人たるゼラ様の……ひいては、ゼラ様と手を携えることとなられたレイフォン様のしもべにございます……その証を、お目にかけましょう……」


 ダックが懐から取り出したのは、何の変哲もない革の小袋であった。

 人間の拳ぐらいの大きさで、紐で結ばれた口からは、黒いこよりのようなものがちょろんと垂れ下がっている。


「妖魅には、こちらが有効であるとうかがっています……」


 ダックはその手の灯篭の隙間から、袋のこよりを差し込んだ。

 赤い炎に焙られて、黒いこよりの先に火が灯される。するとダックは、その袋を鬼火の群れに向かって投じた。


 こよりに灯された小さな火が、闇の中に軌跡を描く。

 そうして袋が、地面に落ちると――凄まじい勢いで炎が燃えあがり、妖魅たちに奇声をあげさせた。


「油にラナの葉などを混ぜた、火の罠となります……すべての妖魅は、火を忌むという話でありましたので……」


「へえ、なかなか気のきいたことをしてくれるじゃないか」


 メナ=ファムの体内に渦巻いていた闘志と恐怖の念は、闇の中に噴きあがった炎に呼応するかのように、大きく跳ね上がることになった。


 炎によって、妖魅たちの正体があらわにされている。

 それは、漆黒の獣毛を有する、きわめて醜悪な怪物たちであった。

 獣毛がぞろりと生えのびているので、どのような形状をしているのかは定かではない。人間の子供ぐらいの大きさで、べたりと地面に這いつくばっており、やたらと平べったい姿をしている。左右に離れた双眸は鬼火のように青く光り、ぱっくりと裂けた口からは小さな牙が無数に生えていた。


「なんとも、ぞっとしない姿だね。ラムルエル、あれが何なのか、説明できるかい?」


「いえ。あのような妖魅、知識、ありません」


 そんな風に言ってから、ラムルエルはその内心を示すかのように、手にした灯篭をわずかに揺らした。


「ただ……黒き獣毛、おぞましい、思います。プルートゥ、美しい毛並み、まったく異なります。あの姿……グリュドの砦、思い出します」


 瞬間、メナ=ファムの脳裏にも、グリュドの砦にへばりついた巨大なる妖魅の異形が蘇った。

 もしやあれは、伝説の邪神の一体である、猫神アメルィアなのではないか――ラムルエルにそう言わしめた、おぞましき怪物だ。言われてみれば、目の前の妖魅どものごわごわとした黒い獣毛は、あの怪物と似ていなくもないようだった。


「……ふん。邪神なんざが相手だったら、人間風情に太刀打ちするすべはないんだろうけどさ。こんな妖魅どもに音をあげるつもりはないよ」


 半月刀を握りなおしながら、メナ=ファムは再びダックへと呼びかけた。


「ダック、まだ火の罠ってやつは残ってるのかい?」


「はい……残りは、四つとなります……」


「だったら、あと二つぐらい、ぶん投げてやりな。こう暗くっちゃ、あたしらもやりづらくってしかたがないからね」


 さきほどの炎は、通路の真ん中で燃えあがりながら、ぶすぶすと黒い煙を吐き出している。鍾乳洞が煙で満たされるのは危険であったが、それでももう少しは目の頼りが欲しいところであった。


 ダックは新しい袋を取り出すと、さきほどよりも右側の位置へと投げつけた。

 袋は途中で壁の岩盤にぶつかり、空中で燃え広がった炎が妖魅どもに降り注ぐ。その炎を頭から浴びることになった一匹の妖魅は、耳をふさぎたくなるような断末魔とともに、消滅した。乾ききった藁くずのように、その醜い姿が一瞬で燃え尽きてしまったのだ。


 そして残りの妖魅どもは、ぎゃあぎゃあと濁った声をあげながら、地面の上を右往左往していた。それこそ、巣の中に火を投じられた虫のような様相である。地面を這いずって逃げまどう姿も、奇怪な虫そのものであった。


「よし、今度は左側にも投げつけてやりな。それでもあいつらがこっちに向かってくるようだったら、いよいよあたしらの出番だよ、エルヴィル」


「う、うむ……しかし、あのような妖魅を剣で退けることがかなうのだろうか……?」


 さしものエルヴィルも、惑乱を隠しきれずにいた。

 すると、新たな火の罠の準備をしながら、ダックが「はい……」と声をあげる。


「妖魅は炎ばかりでなく、鋼の武器をも忌んでおります……四大神の叡智こそが、魔なるものを退けるのだと……レイフォン様は、そのように仰っていました……」


「だとさ。ギリル=ザザだって、屍骸の妖魅を刀で斬り捨ててたろ? やってやれないことはないさ!」


 メナ=ファムは、自らを鼓舞するためにそう言い放った。

 胸中に渦巻く恐怖の念を、狩人の闘志でねじ伏せる。どのような怪物が相手でも、メナ=ファムはシルファを守り抜かなくてはならなかったのだった。


「プルートゥ、シルファを頼んだよ! ラムルエルも、一緒にくっついてな! ……さ、ダック、もういっちょお願いするよ!」


「かしこまりました……」


 ダックが、左の側に袋を投じる。

 それと同時に、恐るべき事態が発生した。

 妖魅どもが、一斉にこちらへと突撃してきたのだ。


 ダックの投じた火の罠は、その内の何体かを焼き滅ぼした様子である。

 しかし妖魅どもは仲間の死に心を動かされた様子もなく、メナ=ファムたちに襲いかかってきた。


「来るなら来な、化け物ども!」


 メナ=ファムは自らも前進して、半月刀を振りかざした。

 先頭を這っていた妖魅が、思わぬ敏捷さで跳躍する。その妖魅には手も足もなく、獣毛をざわざわと蠢かして移動しているようだった。


 頭上にまで飛び上がった妖魅の不気味な肉体を、メナ=ファムは半月刀で斬り捨てる。

 相手は獣毛の塊であるのに、泥沼に刀を突っ込んだかのような、重くてねっとりとした感触が伝わってきた。

 しかし、刀で肉体を寸断されると――妖魅は空中で弾け散り、そのまま黒い塵と化した。


(これなら、いける!)


 あとはもう、縦横無尽に刀を振りかざすばかりであった。

 敵は大して俊敏でもないし、細かな動作も不得手のようである。しかし、どれだけの数が潜んでいるのかも不明であり、行く手に広がる暗がりには、遥かな先にまで青白い眼光が瞬いていた。


 メナ=ファムのかたわらでは、エルヴィルも長剣も振るっている。エルヴィルの手傷が癒えていたのは、僥倖という他なかった。さすがにメナ=ファムひとりでは、これだけの数を相手取ることもできなかっただろう。


 メナ=ファムとエルヴィルは、ぶすぶすと燃える炎だけを目の頼りにして、迫りくる妖魅どもを斬り伏せていった。

 それは泥の沼に何度となく刀を叩き込むような作業であり、気づけばメナ=ファムはすっかり汗だくになっていた。


 疲労が、澱のように溜まっていく。

 しかし、弱音を吐いているいとまはなかった。

 それに――狩人として鍛えられたメナ=ファムの肉体は、長らく無聊をかこつていたのだ。メナ=ファムは疲弊を覚えるのと同時に、自分の五体がひさびさの躍動を喜んでいるのも知覚していた。


(こんな連中、シャーリの大鰐に比べれば、なんてことはないさ!)


 メナ=ファムが、そんな想念を思い浮かべた瞬間――

 シルファの悲鳴が響きわたった。


 背後を振り返ろうとしたメナ=ファムは、その途中で愕然と立ちすくむ。危急に見舞われていたのは、シルファではなくエルヴィルであった。エルヴィルは、上半身を平べったい妖魅の獣毛にすっぽりとくるまれた状態で、狂ったように長剣を振り回していた。


「メ、メナ=ファム、頭上です!」


 シルファの悲鳴が、再び響き渡る。

 メナ=ファムはほとんど本能に従って、半月刀を振り上げていた。

 その手に、ねっとりとした感触が伝わってくる。頭上から落ちてきた妖魅の肉体を、メナ=ファムの半月刀が断ち割ったのだ。


 この辺りは天井が高いため、炎や灯篭の明かりも届いてはいない。

 ただ――その暗闇の最果てに、いくつかの青白い輝きを見て取ることができた。妖魅どもの何体かが、壁から天井にまで這いのぼっていたのだ。


(……それよりも、今はエルヴィルだ)


 メナ=ファムは前方から襲いかかってきた妖魅をも斬り伏せてから、暴れ狂うエルヴィルのもとに駆けつけた。


「エルヴィル、動くんじゃないよ! どうにかしてやるから、暴れるのをやめな!」


 メナ=ファムの言葉が伝わったのか、あるいは力尽きただけなのか。エルヴィルは妖魅に纏わりつかれたまま、がっくりとひざまずいた。

 メナ=ファムは呼吸を整えて、エルヴィルの肩口に半月刀を振り下ろす。妖魅のねっとりとした感触が、革の肩当ての硬い質感に変じた瞬間、メナ=ファムはすかさず半月刀を引き抜いた。


 妖魅は聞き苦しいわめき声をあげながら、エルヴィルの上で身をよじる。

 その浮きあがった部分を半月刀で斬り伏せると、妖魅は音もなく四散した。

 煙のように舞い上がる黒い塵の中で、エルヴィルは激しく咳き込む。幸いなことに、手傷を負った様子はなかった。


「大丈夫かい? こんなところでくたばるんじゃないよ、エルヴィル!」


 メナ=ファムは素早く視線を巡らせて、頭上から落下してきた妖魅と、横合いからすり抜けようとした妖魅を、順番に叩き斬った。

 その間に、エルヴィルは長剣を杖にして、よろよろと立ち上がる。


「世話をかけた……シルファを安全な場に送り届けるまで、魂を返すつもりはない……」


「ああ、その意気だ! 上から落ちてくるやつが厄介なんで、少しばかり後退するよ!」


 メナ=ファムは頭上と正面に視線を配りながら、じりじりと後ずさった。

 やがて背後からの灯篭の明かりが、仲間たちの接近を告げてくれる。エルヴィルも荒い息をつきながら、メナ=ファムに遅れることはなかった。


「さて……こいつらが天井にまでよじ登れるとなると、今までのやり方は危険だね。あんたたちの頭の上までは、とうてい守りきれるわけがないからさ」


「では、どうしましょう?」


 ラムルエルが、沈着な声で問うてくる。その内心はどうあれ、上っ面だけでも動揺を見せないのは、メナ=ファムにとって心強いばかりであった。


「どうするもこうするも、砦に逃げ帰るわけにはいかないからね。無理矢理にでも、正面突破するしかないだろうさ」


「あ、あの妖魅をかき分けて、前に進むのですか?」


 シルファの声は、頼りなく震えている。それでも懸命に、内なる恐怖を押し殺しているのだろう。脆弱な人間であれば、正気を失って泣きわめいていてもおかしくない状況であった。


「ああ。あたしとエルヴィルで妖魅どもを蹴散らしていくから、この嫌らしい鍾乳洞を一気に走り抜けるんだ。幸いこいつらは、人間様ほど素早く動くことはできないみたいだからね」


 正面を向いたまま、メナ=ファムはそのように言ってみせた。

 眼前にはまだ無数の眼光が瞬いているが、メナ=ファムたちの後退をいぶかしむかのように動きを止めている。その小賢しさが、メナ=ファムには忌まわしくてたまらなかった。この妖魅どもは、やはり何らかの知性や思考力というものを携えた存在であるようなのだ。


「あんたたちはこの右側の壁に沿って、一列に並びな。それで、あたしが先頭に立つから、ラムルエルはみんなの左側を守るんだ。しんがりは……プルートゥ、頼んだよ」


 そうしてメナ=ファムたちは、決死の突入を試みることになった。

 メナ=ファムの背後にはラムルエルがつき、シルファ、ダック、プルートゥの順番で続く。そうしてメナ=ファムたちが隊形を整えている間も、妖魅どもは身じろぎひとつしなかった。


「シルファ、死ぬ気で走るんだよ? それでも限界が来ちまったら、声をあげな。あたしがあんたを背負ってでも、ここから逃げ出してやるからさ」


「大丈夫です。決して弱音は吐きません」


 つい最前まで恐怖の表情であったシルファは、透き通った微笑みを浮かべていた。

 恐怖や惑乱を通り越して、肚が据わったのだろうか。メナ=ファムはそちらににやりと笑いかけてから、前方に向きなおった。


「それじゃあ、行くよ!」


 メナ=ファムは、闇の中へと足を踏み出した。

 先は長いので、小走りていどの足並みである。そして何歩も進まぬ内に、メナ=ファムは押し寄せる妖魅どもを迎え撃つことになった。


 メナ=ファムは半月刀を振りかざし、血路を切り開く。

 頭上への注意はラムルエルに、左側からの襲撃はエルヴィルに任せているので、ひたすら正面の妖魅を斬り伏せるのだ。妖魅どもはまだまだ無数に蠢いている様子であったが、どこか腰が引けているようにも感じられた。


(ふん。あたしらのほうから突っ込んでくるとは考えてなかったのかね?)


 メナ=ファムの心に、わずかな違和感が走り抜けた。

 しかし、迷っているひまはない。とにかく今は、鍾乳洞の出口を目指すしかなかった。


 目の頼りはラムルエルたちのかざす灯篭だけであるので、さきほどよりも視界がきかない。メナ=ファムは、闇の中に浮かびあがる青い眼光を狙って半月刀を繰り出すしかなかった。


 思ったほどの抵抗はないので、メナ=ファムたちはぐんぐんと歩を進めることができた。頭上から妖魅が落ちてくることもなく、左手側の妖魅どもはまごまごとしながらメナ=ファムたちの前進を見送っている様子だ。それでまた、メナ=ファムは嫌な感覚を覚えることになった。


(なんだかまるで、あたしらに遠慮してるみたいじゃないか。さっきまでの勢いは、なんだったのさ?)


 さきほどまでと現在の違いは、ただひとつ。全員がひとかたまりとなって移動していることであった。

 メナ=ファムとエルヴィルに対しては容赦のなかった妖魅どもが、手心を加えているように感じられる。まるで、大事な誰かを巻き添えにしないように、しかたなく道を空けているような――そんな気配さえ、感じられるのだった。


(まさか……本当にダックのやつが、敵方の人間だってのかい?)


 メナ=ファムがそんな想念にとらわれたとき、ついに眼前から青い眼光が消え去った。

 頭上と左側に目をやっても、そこに満ちるのは漆黒の暗闇である。それでも用心深く半月刀を握りなおしながら、メナ=ファムはわずかに歩調を落とすことにした。


「妖魅の縄張りは抜けたみたいだね。エルヴィル、追ってくるやつはいるかい?」


「うむ……じりじりと追ってきてはいるようなのだが……無理に追いつこうとはしていないように感じられるな」


 エルヴィルの声にも、不審の念があふれかえっていた。やはり、メナ=ファムと同じ疑問を抱くことになったのだろう。


「いったい何だってんだろうね。ま、この鍾乳洞を無事に出られるなら――」


 メナ=ファムは、そこで息を呑むことになった。

 突如として、不吉な気配が眼前に立ちはだかったのだ。

 メナ=ファムが歩を止めると、後ろに続いていたラムルエルも慌てて立ち止まったようだった。


「どうしました? 新たな敵ですか?」


「ああ……こいつはちょいと、まずいかもしれないよ」


 そんな風に答えながら、メナ=ファムにもまだ敵の正体はつかめていなかった。ただ、さきほどの妖魅どもとは比較にならないほどの不吉な気配が、忽然として眼前に出現したのだ。


(なんだよ、こいつは……いったいどこから湧いて出やがったんだ?)


 メナ=ファムは強く歯を食いしばりながら、半月刀を掲げてみせた。

 それと同時に、ゆらりと鬼火のような眼光が浮かびあがる。

 それは――メナ=ファムの頭ぐらいもありそうな、とほうもなく巨大な怪物の双眸であった。

 メナ=ファムのななめ後方では、エルヴィルもうめき声をあげている。


「な、なんだこれは……このようなものが、この世にいるはずは……」


 人間たちの惑乱を楽しんでいるかのように、その怪物はゆらゆらと双眸を燃やしていた。

 その色合いは、青ではなく真紅である。

 それはまるで――かつてグリュドの砦にへばりついていた、猫神アメルィアそのものであるかのような、邪悪で巨大な双眸であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これは神の器たるシルファを遠慮してるよね
[一言] 隊列組んでいる時、エルヴィルがいない。ラムルエルと間違えてるぽい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ