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アムスホルン大陸記  作者: EDA
第六章 聖戦
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Ⅲ-Ⅱ 転がる真実

2018.11/17 更新分 1/1

 クリスフィアたちが審問の場に戻ると、すでに新王と罪人を除くすべての人間が勢ぞろいしている様子であった。

 席に座した人々は、口角泡を飛ばして意見を戦わせている。いよいよ話が赤き月の災厄にまで及んだので、誰もが平静ではいられないのだろう。


(前王を弑したのは忌み子であったカノン王子だと思い込んでいたのに、それが冤罪であったのかもしれないのだからな。王都の住人としては、それは騒がずにはいられないところだろう)


 クリスフィアはそのように考えながら、近い席でふんぞり返っているロネックの様子をうかがった。

 この半刻の休憩で、少しは落ち着きを取り戻したらしく、ロネックは仏頂面であらぬ方向をにらみつけている。ただ、激情の余韻が残されているかのように、目のふちが赤く染まっていたのだが――それに気づいたディラーム老が、たいそう忌々しげにクリスフィアへと耳打ちしてきた。


「ロネックめは、果実酒でもあおってきたようだな。神聖なる審問の場で、不遜なことだ」


 ディラーム老のほうがロネックに近い席であったので、酒気の香りを嗅ぎ取ったのだろう。それはクリスフィアにとって、看過できぬ出来事であった。


(酒でも飲まなければ平静を保てないぐらい、心を乱すことになったというわけか。やはりこやつも、何らかの形で陰謀に関わっているのだろうな)


 そうして王の来室が伝えられ、人々はまた起立してそれを迎えることになった。

 新王ベイギルスは、ますます不機嫌そうな顔つきで王のための席に座す。しかし、その双眸からはいくぶん覇気が失われたように見えなくもなかった。


(ベイギルスもまた、少なからず心を乱しているように思える。前王の死に隠された真相があったのだと知らされれば、心を乱すのも当然の話だが……それでもやはり、真相が暴かれることに怯えているように見えてしまうな)


 いったい真相は如何なるものであったのか。それは本日のこの審問でつまびらかにされるのか。クリスフィアは気を引きしめなおしながら、罪人たちの入室を見守った。

 ジョルアン、バウファ、ゼラの順番で新王の御前へと引き立てられて、その中からバウファだけが一歩前に立たされる。兵士たちに左右をはさまれたバウファの姿を見下ろしながら、ベイギルスは「ふん……」と鼻を鳴らした。


「本来であれば、ここからはジョルアンの配下たる防衛兵団の兵士たちの審問を始める手はずであったのだが、そういうわけにもいくまいな。我が兄にして前王たるカイロスの死に不審なところがあるなどという話になっては、それを見過ごすこともできん。レイフォンよ、まずは其方からバウファの尋問を始めるがよい」


 宰相の席に座したレイフォンは、悠揚せまらぬ様子で「かしこまりました」と一礼した。

 けっきょく休憩の刻限には実のある話をすることができなかったので、レイフォンとティムトは道すがらで語るべき内容の打ち合わせをしていたのだ。内心ではさぞかし辟易しているのであろうが、そんなそぶりは露ほども見せず、レイフォンはバウファへと声を投げかけた。


「バウファ殿は、あくまで前王ご本人から寝所の鍵を託されたのだと仰っていましたね。そのお言葉は、真実なのでしょうか?」


「はい、真実にてございます。……こうなっては、すべてを告白するしかありますまい」


 バウファは憔悴しきった様子であったが、その目には活力が蘇っているように感じられた。ただし、追い詰められたギーズの大鼠のごとき、爛々とした眼差しである。


「前王は、カノン王子と和解をされるおつもりであったのです。……これが、わたくしの秘匿していた真相にてございます」


 人々が、いっせいにざわめいた。

 それを手で制してから、レイフォンは「和解?」と反問する。


「はい。そのために、カノン王子をご自分の寝所に招くおつもりだと仰っておりました。そのために、エイラの神殿の寝所の鍵を、アイリア姫に渡してほしい、と……」


「なるほど。しかしそれでは、やはりバウファ殿を間に介する理由がわかりませんね。前王がそのようにお考えになられたのならば、直接アイリア姫に鍵を渡されていたのではないでしょうか?」


「は……実はわたくしは、その数日前から前王に相談をされていた身であったのです」


「相談?」


「は、はい……前王はカノン王子との和解を望まれていましたが、王子を十六年間も幽閉していたのは、他ならぬ前王のご意思でありました。そのように非情な真似をした自分が、和解を望むことなど許されるのだろうか、と……」


「そのような心情を、前王がバウファ殿に打ち明けられた、と? ……こう言っては何ですが、なかなか信じ難い話ではあるでしょうね。失礼ながら、バウファ殿はいつの間にそのような信頼を勝ち取られていたのでしょうか?」


「た、確かにわたくしは、前王から冷遇されていた立場でありました。ここ数年は、ほとんど言葉を交わす機会もなかったほどでございます。……しかし、そんな立場の人間であるからこそ、真情を吐露しやすいという面もあったのではないでしょうか?」


 脂汗を垂らしながら、バウファはそのように言葉を重ねた。


「たとえば、ディラーム将軍やアローン将軍などは前王のおぼえもめでたく、厚い信頼を勝ち取られていたことと思いますが……カノン王子と和解したいなどという話は、とうてい受け入れることはできなかったでしょう。秘密裡に王子を寝所に招くなどという話は、なおさらです。そのような振る舞いに協力できたのは、わたくしやアイリア姫やヴァルダヌス将軍のみであった……ということなのだと思われます」


 クリスフィアのかたわらで、ディラーム老がぎりっと奥歯を噛み鳴らした。

 自分やヴァルダヌスがこのような抗弁に利用されることは、耐え難いに違いない。アローン将軍の子たるイリテウスも、また然りである。両者は怒れる獅子のごとく、バウファの姿をにらみすえていた。


 レイフォンが口をつぐんだために、また周囲の人々はざわめき始めている。クリスフィアが首をのばして確認したところ、レイフォンはティムトと密談していた。次に放つべき言葉をティムトから授けられているのだろう。


「……バウファ殿、この神聖なる審問の間においては、いかなる虚言も許されません。あなたはそのことをわきまえておられるのでしょうか?」


 やがてレイフォンが、普段通りの穏やかな声音でそのように述べたてた。

 しかし、その厳粛なる言葉の内容に、バウファは顔色を失っている。


「は……も、もちろんでございます……わたくしは何も、虚言などは……」


「あなたはそれを、父なる西方神に誓えるのでしょうか? 己の罪を秘匿するために、あなたはあらぬ虚言を垂れ流しているだけなのではないですか?」


 なまじ穏やかな声音だけに、その内容の辛辣さが際立っていた。バウファはずんぐりとした身体を小さく震わせながら、深くうつむいてしまう。


「あなたはきっと、この半刻でそのような言い訳をこしらえることになったのでしょう。しかし、その言葉には何の実もともなってはいないように思います。上辺だけは綺麗に飾りつけられながら、我々の抱く疑問を何ら解消してくれないのです」


「ぎ、疑問……?」


「はい。あなたは前王のお言葉に従って、カノン王子を銀獅子宮にお招きするための一助となった、と仰いましたね。それでは何故、あの日に銀獅子宮やエイラの神殿を守っていた衛兵たちが害されなければならなかったのでしょうか? まさか、それすらも前王のご命令であったなどとは仰らないでしょうね?」


「…………」


「アローン将軍が前王の寝所に向かわれたのは、それらの衛兵の遺体を発見したためです。それは、アローン将軍の配下であった兵士からも証言が取れていますし、また、エイラの神殿の守衛に関しては、銀獅子宮の崩落に巻き込まれることなく、事後に遺体が発見されています。それはヴァルダヌス将軍の手によって斬り伏せられたとされていましたが、あなたの言葉を信じるならば、ヴァルダヌス将軍にもそのような真似をする理由はなかったはずです」


「…………」


「そしてあなたは、ジョルアン殿に関して、一切言及されませんでしたね。あなたがただ前王とカノン王子の和解に協力されただけならば、どうしてダリアス将軍やトライアス殿を襲撃させなければならなかったのですか? ……それともやはり、あれはジョルアン殿の妄言だと仰るつもりなのでしょうか?」


「そ、そうだ! お前だけ罪を逃れようとすることなど、わたしは決して許さんぞ! お前はわたしを脅迫し、利用したのだ!」


 バウファの後方で兵士たちにはさまれたジョルアンが、ここぞとばかりに激昂した声をあげた。

 ただ、激昂の度が過ぎたのか、ぐらりと頼りなくよろめいてしまい、左右から兵士たちに腕をつかまれる。ジョルアンもまた、追い詰められた獣のような様相になっていた。


「お前が前王を暗殺するように、カノン王子とヴァルダヌスをそそのかしたのだ! お前はあの夜、城門をくぐろうとする人間はすべて排斥せよと、わたしに命じたではないか! 前王の暗殺に関わっていなければ、そのような命令を下す理由はなかったはずだ!」


「わ、わたくしはそのような命令を下した覚えは……」


「いいや! わたしはすべて覚えているぞ! 部下たちが、よりにもよって十二獅子将たるダリアスを斬ってしまったという報告を受けたわたしは、どうするべきかをお前に問うたのだ! あのときも、お前は死人に口無しなどと言い放っていたではないか!」


 そのように叫んでから、ジョルアンは激しく咳き込んだ。

 もはや自分の足で立つことも難しいらしく、二名の兵士が困惑した面持ちでその身体を支えている。ジョルアンは目ばかりをぎらぎらと燃やしながら、病人のように生気のない姿になってしまっていた。


「ジョルアンよ、其方の声は耳障りだ。仮にも元帥の身であったのならば、そのような醜態をさらすものではない」


 ベイギルスが真面目くさった口調で、的外れなことを言っていた。

 しかしまあ、それだけジョルアンが疲弊しきった姿をさらしているということなのだろう。周囲の人々も、眉をひそめてジョルアンの狂態を眺めていた。


「まずは、きちんと自分の足で立つがいい。……其方はどこか、身体の加減でも悪いのか?」


「い、いえ……その痴れ者めの言葉が我慢できず、思わず我を失ってしまいました。どうぞご容赦いただきたく願います」


「しかし、まるで病人のごとき有り様ではないか」


 ベイギルスがしつこく言及すると、かなり上座に近い位置に陣取っていた武官が「恐れながら」と声をあげた。


「被告人ジョルアンは、昨日の中天の前に捕縛されて以来、水も食事も口にしていないのです。そのために、身体が弱りきっているのだと思われます」


 それは、かつてアローン将軍の副官であり、現在は第一防衛兵団の団長を引き継ぐことになった人物であった。「敵に与する恐れはないが、味方にするには頭が固すぎる」と評されていた人物である。虜囚となったジョルアンの扱いに関しては、新参の十二獅子将である彼が全責任を担っているのだ。


「水も食事も口にしていない? それでは、身体が弱るのが当たり前ではないか」


「は。どうやら被告人ジョルアンは、毒殺を恐れているようです。こちらがどれほど諭そうとも、何も口にしようとしないのです」


 ベイギルスは、呆れかえった様子で目を剥いた。


「いまさら其方を毒殺して、どうなるというのだ。其方はすべてを語ってしまったのだから、口封じをするには遅かろう。……よいから、そやつに水をもて」


「承知いたしました」


 将軍が視線を送ると、壁際に控えていた衛兵が水筒と杯を手に、ジョルアンへと駆け寄った。

 ジョルアンは、苦い薬でも差し出された幼子のように身を引いている。


「け、けっこうです。この通り、どこも弱ってはおりませんので、どうぞお気遣いなきように……」


「そのような醜態をさらしておいて、どの口が言うのだ。其方の口を封じたいと願っていた人間が存在するのなら、この審問が始まる前に為していたはずであろうが?」


 ベイギルスは苛立ちもあらわに、肘掛けを指先で小突いていた。


「其方の告発によって、バウファはすでに罪人として扱われている。この場で其方が魂を返そうとも、もはや真実が明かされるまで、バウファが解放されることはあるまい。いまさら其方などを害することに、何の意味もないということだ」


「し、しかし……」


「王命であるぞ。水を飲め」


 ジョルアンは、それこそ死刑を宣告されたような形相で、水筒と杯を持つ衛兵の姿を見返していた。

 衛兵は溜息でもこらえているかのような面持ちで、水筒から杯に水を注ぐ。


「お飲みください、ジョルアン殿。……それほどまでに毒殺が恐ろしいのでしたら、小官が毒見をいたします」


 そう言って、衛兵の若者はその杯の水を半分ほど口に流し込んだ。

 人々はいくぶん張り詰めた様子でその姿を見守っていたが、もちろん衛兵が苦悶にのたうち回ることはなかった。


「我々もディラーム将軍閣下に毒殺の危険を示唆されていたため、万全を期しております。何も心配はございません」


 それでもなお、ジョルアンはしばらく動こうとしなかった。本当に異変が生じたりはしないか、用心深く時間の経過を待っている様子である。

 ずいぶん長きの時間が過ぎて、ベイギルスが眉間に皺を寄せたとき、ジョルアンはようよう杯を受け取った。


「そ、それでは失礼いたします……」


 両手で押し抱いた杯を口につけて、ジョルアンはそれを飲み干した。

 丸一日、水を断っていたならば、さぞかし甘美な味わいであったことだろう。天井を仰ぎつつ、「ああ」と満足げな吐息をこぼしている。


「もう一杯いかがでしょうか?」


「あ、ああ、いや、けっこうだ……手間を取らせてしまい、申し訳なかった……」


「いえ」と慇懃に一礼してから、衛兵は壁際に戻っていった。

 やれやれとばかりに、ベイギルスが背もたれに体重を預ける。


「それで……レイフォンがバウファを追及しているさなかであったな。其方はバウファの言葉が虚言であると見なしておるのか?」


「はい。前王がカノン王子との面会を望んでおられたのならば、あらかじめ守衛の人間にも手出しをしないように申しつけていたことでしょう。ならば、銀獅子宮の守護を司っていたアローン将軍の協力なくして、カノン王子を寝所に招くことはできなかったかと思われます」


「それは、道理であるな。……だいたい、兄君がカノン王子との和解など望むものか。兄君は、何の罪もない赤子を忌み子だと称して、エイラの神殿に幽閉したのだぞ? どれほど不吉な予言をされたところで、そのような真似をしておいて、和解などなされるはずもない」


 ベイギルスの憎々しげな言葉に、クリスフィアは思わず息を呑んだ。

 きっとティムトも、それは同様であったのだろう。一拍遅れて、レイフォンが「不吉な予言?」と反問する。


「うむ。カノン王子は白膚症であったばかりか、半陰陽でもあったからな。それを指して、これは王国に災いをもたらす忌み子であると称する愚か者がいたのだ。あれだけいにしえの習わしを嫌っていた兄君であったのに、まさかそのような予言などを信じてしまうとは、愚昧の極みであろうよ」


「……いったいどこの愚か者が、そのような予言を前王にもたらしたのでしょう?」


「知らん。余がその話を知ったのは、ほんの数年前であったからな。オロルがどこかから、そのような話を聞きつけてきたのだ」


 クリスフィアは、歯噛みしたい心地であった。

 ティムトの言葉を信ずるならば、このたびの陰謀はカノン王子が幽閉されたところから始まっているのだ。前王にそのような予言を吹き込んだ人間こそが、《まつろわぬ民》であったのか――あるいは、《まつろわぬ民》のたくらみを知る何者かが、カノン王子を排斥しようと考えたのか――真相は、そのどちらかであるようにしか思えなかった。


(かえすがえすも、あのオロルを放っておくのではなかった。あやつが早々と口封じされたことには、やはり相応の理由があったのだろう)


 クリスフィアがそのように考えたとき、どこかから奇妙な声が聞こえてきた。

 腐肉をあさっていた烏が咽喉を詰まらせたかのような、くぐもったうめき声である。振り返ると、壁際に立ち並んだ衛兵のひとりが、自分の咽喉をつかんで身体をのけぞらしていた。


「お、おい、いったいどうしたのだ?」


 隣の衛兵が、慌てた様子でその肩をつかむ。

 それと同時に、新たなうめき声が響きわたった。

 ジョルアンが、その衛兵と同じように、苦悶の形相となっていたのである。

 クリスフィアは、椅子を蹴って立ち上がった。


「毒だ! ジョルアンたちの飲んだ水を吐かせろ!」


 衛兵たちが惑乱しきった面持ちで、ジョルアンの身体をおさえつけようとする。

 ジョルアンはその腕を振り払って、怪鳥のごとき絶叫をほとばしらせた。

 そして、大きく開いた口の中から、赤黒い鮮血の塊をぶちまける。

 一瞬で、審問の間が狂騒の空気に包まれた。


 ジョルアンは信じ難い量の鮮血を噴きこぼしながら、棒のように倒れ込む。

 壁際の兵士のほうも、それは同様であった。

 横倒しになった二人の身体が、水揚げされた魚のようにびくびくと痙攣し――すぐに動かなくなる。

 医術師らしき者たちがジョルアンに駆け寄ったが、もはやその魂が肉体を離れていることは明白であった。


(馬鹿な……どうしていまさら、ジョルアンが殺されなければならないのだ!)


 呆然と立ちすくみながら、クリスフィアは心中でわめいていた。

 ベイギルスが言っていた通り、ジョルアンはすでにすべての罪を告白していたのだ。いまだ秘密を抱えているバウファならばまだしも、この段階でジョルアンの口を封じることにどのような意味があるというのだろうか。


(それとも……ジョルアンにも、まだ何か秘密があったのか?)


 しかし、いくらクリスフィアが頭を悩ませようとも、詮無きことであった。

 ジョルアンは、すでに魂を返してしまったのだ。

 自分で作りあげた血の海に沈んだジョルアンは、菓子を取り上げられた幼子のようにあわれげな死に顔をさらしていた。

 そして、そこに悲鳴まじりの声が響きわたる。


「ああ、何てことを……あなたはそうやって、すべての邪魔者を抹殺しようという心づもりなのですか!?」


 それは、バウファであった。

 バウファが恐怖の形相で、そのように叫んでいた。

 そして、その大きく見開かれた目が見据えているのは、クリスフィアのすぐ近く――ロネック将軍の巨体に他ならなかった。


「ど、どうかお許しください! すべての罪は、暴かれてしまったのです! わたくしは……わたくしは、もうこのようなことには耐えられません!」


 バウファがひざまずき、足もとの敷物に額をこすりつけていた。

 ロネックは飢えた獣のような目で、その姿をにらみすえている。

 たとえ森辺の狩人ほど鋭敏な感覚を持っていなくとも、その巨体からあふれかえる凄まじい殺気を感じないわけがなかった。

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