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燕尾服
ヒューと目の前を燕尾服が横切った
ああ、もう旅立ちの季節なのかと
軒下の巣を見上げる
初夏を連れて飛んできた
ツバメたち
子育てを終えて
旅立ちの準備
はらり はらり
いつの間に散り落ちた牡丹
すらりと垂れ下がり
紫のカーテンを下ろしていた藤
花も鳥も
季節をつれてきては
いつのまにやら
去っていく
それに気が付かずに
心を亡くしたように
きりきりと舞う人々
気候の変化にうまく適応しない体
快適な空間を作れば作るほど
自然とは縁が切れるようになる
自分の体も心も
自然の一部でしかないことを
うっかりと忘れてしまう
ヒューと目の前を燕尾服が横切る
季節は夏へと向かう