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プロローグ

霞む思い出は、煙草の煙に似ていた。

昔まだ子供だった頃、俺は髪や目や肌の色の違いを気にしないで、仲の良かったアイツらと駆け回っていた。世界は―少なくとも当時は俺たちを中心に何もかもが回っていた。

忘れもしない公園で毎日毎日泥に塗れて遊びまくった。先には幸せが待っていると、子供が故の淡い幻想を本気に成って信じていた。少なくともあの時まで。



・ヘイ!全校のボンクラども!今日もお昼の放送だぜ、リクエストは3のAの――

テンション高めのDJがお昼の恒例となった放送を元気に流す某高校は昼下がり中盤を迎えていた。温暖化かエルニーニョか、とにかく熱い六月の太陽が照りつける空は何処までも青い。

そんな届かない空は夏祭りの綿菓子のような入道雲を浮かべ、梅雨明けの風が舞うように生徒の間を流れていく。

さて、一般的としか特色の無いその私立高校は、本日付でエアコンが解禁になったらしく、若さゆえに冷えるほどガンガンに冷やされた教室で死体が一つ。

「死んだ…終わりだ」

もはや此の世の終わりを悟った、危ない新興宗教の教祖みたいに少年は絶句していたと、描写すればカッコイイものの、現実は下敷きで仰ぎながらへばる金髪が一人。

「おいこら!悲劇の主人公みたいな台詞を吐くな!」

低くて野太いヴォイスのヌシはハードカバーの小説を脇におき指を伸ばし、残像を残す・・・とまではいかなくとも手刀を放つ。

綺麗に友人の手刀を眉間に受け、彼はあっさり机に倒れ込む。

しかしそのまま、だりーと両手を伸ばして動かなくなった。

机に張り付く彼の横顔はまるでムンクの叫びのようで、正直情けない。

そんな彼はグルグルと威勢良く鳴った腹を押さえ、ぼんやりと顔を上げながら手刀を炸裂させた友人を呼ぶ。

「昼飯奢れ誠『マコト』…親友として」

そう言い終わるないなや、最後の菓子パンの袋を開けた友人のパン目掛けて素早く手を伸ばすが、

「黙ってろクソハーフ」

バチンと乾いた音を立てて誠は手を払い、冷たく彼を一喝する。

黒髪を無駄に伸ばし本人は三白眼を隠してるつもりの前髪をなでつけると、彼は優雅に菓子パン(購買限定情熱メンチカツパン)を貪るのを始めた。

その優雅な仕草に舌打ちをして、混血の少年はボソッと呟く。

「この駄目猿人の名は上之『カミノ』誠、俺の最大の汚点にして汚らわしきヤンキーだ」

小説のワンフレーズのような一言に、誠は眉毛を吊り上げ三白眼を眇めてから左手で混血を指差す。

無論菓子パンを咥えて。

「話すな空気が汚れる、ソレにおまえは何故ナレーションを入れる?須々木零児『レイジ』」

がぶり、とワイルドに噛み千切り飲み込み、不思議系の話題を口走るイカレタ混血を醒めた眼で見ながら誠は即答。

名前を呼ばれた零児は顔を上げず、紫のような色の瞳で友人の顔を睨んだ。

「…幼稚園来の友人に対しての言い草かそれ?」

溜息を付くように窓を見つめる友に対し零児は尋ねる。

金系統の髪を持つパッと見では女の子のような零児が、整った顔を歪めているのを横目で見てから、すまし顔の誠は、

「中学の丸々一年間昏睡していたトンでも野郎に言われたかないね」

と答える。

むーと獣のように唸る悪友を無視し、誠がパンの二口目を齧ろうとした瞬間、

「いっただきます!!」

零児は両手を合わせてから、机の上で飛び跳ねた。

−ガブリ!まさに流星の如し速さで動いた零次の顎はパンを捕らえた。

まさに肉食動物のようにだ。

「ア」

くるりと床に着地した零児は、何かを言おうとした誠を視界の端に捕らえ低く屈み、思い切り踏み込む。そして華麗にパワフルかつ凄まじい早さで駆け出していた。

そんな一連かつ一瞬の出来事に呆けた誠だが、かつてパンがあった己の右手を見て、そして菓子パンを加え半端無い早さで廊下を駆ける悪友の背中を目撃し、吼えた。

「ふざけんなぁぁぁぁぁ!」

轟音が轟きクラス中が誠を見る中、零児は六月の校庭に走りだしたのであった。


下手糞ですがいかがでしょう?

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