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11 部屋訪問

魔術書、魔法書、歴史書、料理書、冒険小説。

数十冊の本を抱え、図書館内を移動する。

一旦テーブルに乗せて、もう一度物色しよう。


「今日は随分たくさん借りるんだね」


リトが置いた本を見て、ヴァンが不思議そうにつぶやいた。


「まとめて借りることにしようと思って」


もちろん図書館に通う日数を減らすためである。

図書館通いを止めるのが一番だが、完全に来なくなると本末転倒、それなら逃亡しろよ、だし。


「まとめて? 毎日は来なくなるんだね」


「えぇ。毎日通うと悪目立ちしそうだし」


もう遅いような気もするけど。

ネズミくらいなら良いけど、部屋の中を荒されたりすると困るのだ。

トーカもいるし、愛用品が壊されたりなんかすると色々噴火しそうだし。

それに折角用意してもらった道具類、まだ一度も使っていない。


「そう……残念だな」


「話相手ならいっぱいいるじゃない」


詳しいことは知らないが、側室候補はもう20人以上控えているそうだ。

追い出された人もいるようだが、これからも増え続けていくのだろう。


私のことも追い出してくれて良いんだけど。

むしろ追い出してくれ。


「彼女たちとは話が合いそうにないかな」


元々、本を読む女性は珍しい。

ここでごく稀に見掛ける人はもれなく男性だし。

魔術師も男性の方が圧倒的に多く、話が合う人が少ないというのは致し方ないことだろう。


「少し話したけど……どの御婦人も側室になりたいようだったし」


理解できない。

いや貴族の令嬢はどうせ政略結婚ならば王族の方が、って感じなのだろうか。

それならば理解出来なくもない。

しかし側室だぞ?

自分の夫に嫁がいっぱいいるって気分悪くないの?


「それなら僕は相応しくないからね」


どういう意味だろう。

病弱だから?

しかし男が病弱でも実際に子供を生むのは女なので関係ないのではないだろうか。

疑問に思ったがあまり深い話をされても困る。


「まぁ、話相手が欲しくなったら私の部屋に来ればいいわ。ただし、みつからないようにっていう条件付きだけど」


図書館よりは部屋の方が人目に付き難い。……たぶん。


「いいの?」


「えぇ、構わないわ」


ヴァンが嬉しそうに笑う。

そんなに話相手が欲しいのか。

年上だけど何かかわいい。


結局本を20冊ほど持ちやすいように袋へ入れて持ち帰る。

今日はネズミのお出迎えはないようだ。

残念ね、トーカ。



「それでまた何でいるの?」


今日は用事、ないと思うんだけど。

頼んでおいたものは全部貰ったし。

って、何でそんなに寛いでんの?

ここはアンタの部屋か!


「明日の夕刻、ヴィーレ様がいらっしゃいます」


「はぁ?」


「ついうっかりぽろっと異国の料理の話をして興味を引いてしまいました」


「アンタそれわざとでしょ」


何がついうっかりぽろっとなのよ。


「ヴィーレ様は甘いものがお好きです。ぜひ明日、異国の菓子を用意していただきたいのです。……三人分」


さりげなく自分の分も入れたわね。

自慢じゃないが菓子はあまり作らないのだ。

作れないわけではないが、甘いものより辛いものが好きなのである。

しかし保存が効くのは菓子なので、この際作り溜めでもしておこうか。

クッキーやタルト生地は冷凍で一月くらい保存できる。


「でもお菓子はこちらとそんなに変わらないと思うわよ」


デザートとして出て来たのはアイスクリームやフルーツタルト。

大陸共通なのではないだろうか。


「いいですよ、何でも。ヴィーレ様はただ甘いものが食べたいだけでしょうし」


三男は菓子好きか。

正直要らない情報である。


「私は夜食の方が良いと言ったのですが」


「……夜食も用意するわ」


そんなに残念そうにしなくても。


石鍋を用意してもらったので部屋でも仕上げが出来るのだ。

実は使いたくてしょうがないのである。

雑炊もいいし、あんかけもいいな。

今の季節は鍋ものに向かないので残念だ。


「そうですか。それは楽しみですね」


……食べ物絡むと本当に、表情が違う。

どれだけ食い意地はってんの。

まぁ他人のこと言えないんだけど。













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