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0 平穏な日々

朝か。

二度寝したいところだが、リトはどうにか体を起こす。

どうせ眩しすぎて寝れやしない。

のろのろとキッチンに移動し顔を洗い、珈琲で目を覚ます。


さて朝食の準備だ。

昨日完成したばかりのベーコンを厚めに切り、炙る。

採れたての花野菜は色濃い瞬間に茹で上げる。

チーズを入れたふわふわオムレツに、厚切りのバケットはバターをたっぷり。

高カロリーなんて気にしない。


「魔動石がそろそろなくなるわね」


リトの住む家は、山奥すぎて魔動力が供給されない。

幸いこの山は、天然の魔動石の宝庫だ。

サボりさえしなければ、動力不足になることはない。


朝食を摂りながら、今日の予定を考える。

午前中は山登りに決定。

帰りに水汲みして、ハーブオイルを入れて半身浴でもして……新作でも作ろうかな。

それとも読書?

どちらにしてものんびりしたい。


人と極力関わらず、自分の為だけに生活する。

リトはそんな生活が気にいっていた。


食後のハーブティを飲みながら、胃を落ち付ける。


そうだ、天気も良いしシーツを干してから行こうかな。

洗濯は昨日したばかりで、汚れものは溜まっていない。




カーテンを大きく開く。

日の光が眩しい。

今日は帽子が必要だ。


長袖のシャツに長ズボン、ブーツという恰好に、愛用の革製リュックを背負う。

長い黒髪を結い上げ、つばの広い帽子を被れば準備完了。


シーツをハーブの上に干して、さて出掛けよう。







魔動石は山の頂上付近に転がっている。

天然の魔動石はエネルギーが大きいので、割と高価。

それなのに転がっているのは、ここが人の手の入っていない山だからだ。


「うん、これくらいかな」


麻袋いっぱいに魔動石を詰め、口を縛る。

肩口に背負い、山を下る。

小腹が空いたので、木苺おやつにのんびりと。


「あれ、トーカ」


見慣れた白蛇が木苺を暴食していた。 


「中々帰って来ないと思ったら、こんなとこにいたの」


しゅるりと滑らかな動きでリトの腕に捲きつく。

トーカは30セッチもない、白い蛇型の魔物だ。

魔物除けのされているこの山に、唯一侵入許可の下りたリトの相棒である。


湧水を汲み、薬草を摘み、シーツを回収して家に戻る。

結構な大荷物だ。


テーブルの上にそれぞれを置き、定位置に片付ける。


「何か食べる?」


トーカがテーブルの上に移動する。

ガラス容器に入ったフレーバーウォーターと、バケットでフレンチトーストを用意。

見た目は白蛇だけど魔物だからか、トーカは雑食だ。

ネズミなんかも食べるかもしれないが、基本的にリトと同じようなものを食べる。




ラベンダーのオイルを浴槽にいれ、半身浴をしながら読書に勤しむ。

本は割と高価なものだが、防水加工がされているため、問題ない。

今読んでいるのは、女性に人気の高い恋愛小説だ。

女好きの王子がたくさんの女性にアプローチして、ハーレムを作るという話だ。

何が良いのかさっぱりわからない。

わからないけど、読んでいる。

一冊読み終わったので半身浴も終了。




さて作品作りに取り掛かろう。

リトは雑貨を作り、生計を立てている。

高値で売れるわけでも、量産しているわけでもないが、派手な生活をしているわけではないのであまり多くのお金は必要ない。


銀粘土で作る装飾品、麻紐を編んだ雑貨、土製や木製の道具。

好きなものを好きなときに、好きなだけ作る。

何て理想的な生活なんだろう。

人と関わることも少ないし、一生この平穏な生活を続けていきたい。


麻紐を編みながら、リトは思った。


この生活が、間もなくぶち壊されることなど、考えもせず。














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