第111話 「“再接続の兆し”と、戻り始める視線」
■静寂の中の“違和感の再点火”
大学の空気は、確かに落ち着いていた。
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廊下のざわめきは日常に戻り、
誰も過去の件を持ち出さない。
水上颯太に向けられていた視線も、ほぼ消えたと言っていい。
(完全に戻った……はずだ)
そう思えるほどには、世界は平穏だった。
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だが―― その平穏は、突然“別の方向”から揺れ始める。
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■一通の投稿
昼休み。
スマホの通知。
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「ん?」
画面を開く。
それはSNSの拡散投稿だった。
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『最近“斉藤もも”見なくない?』
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たったそれだけ。
だが、その投稿には数百件の反応がついている。
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「確かに最近出てない」
「活動止まってる?」
「でも公式は何も言ってないよね」
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空気が、少しだけ変わる。
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■“静かな再点火”
颯太は画面を閉じる。
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(まだ終わってない)
完全に沈静化したわけではない。
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ただ“眠っていただけ”。
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■大学・視線の変化
午後の講義。
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教室に入ると、微妙な空気。
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前よりも自然。
だが――どこか“思い出している人間”がいる。
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(見ている、というより)
(思い出し始めている)
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その段階。
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■別の場所・スタジオ
同時刻の撮影現場。
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斉藤ももは、カメラの前に立っていた。
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シャッター音。
ライト。
しかし今日は、少し違う。
スタッフの一人が小さく言う。
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「最近、SNSでちょっと話題戻ってきてますね」
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ほのかがすぐに反応する。
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「どういう意味で?」
「“見ない”っていう意味で」
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■ももの反応
ももは動かないまま、鏡を見る。
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(やっぱり来たか)
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完全な終息は存在しない。
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沈んだ波は、いつか戻る。
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■夜・家の中
夜… 家のリビング。
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桃華は眼鏡を外して座っている。
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颯太が帰宅する。
「ただいま」
「おかえり」
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変わらない日常。
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だが―― 空気は少しだけ違う。
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■報告
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「SNS、また少し動き始めてる」
颯太の言葉。
桃華はすぐに反応しない。
少しだけ間を置いて、
「……うん、私も聞いた」
■核心
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「“見なくなった”って話が広がってる」
桃華はゆっくり頷く。
「それってつまり」
「思い出されたってことだよね」
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■静かな現実
忘れられることはない。
ただ“沈む”だけ。
そして沈んだものは、条件が揃えば再浮上する。
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■桃華の一言
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「でも、今はまだ静か」
「そうだな」
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颯太も頷く。
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■距離
桃華が隣に座り、肩が触れ… 静かな時間。
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だが、その静けさは“以前より軽くない”。
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■締め
世界はまだ動いていない。
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だが、“動き出す準備だけは整っている”。
忘れかけていた視線が、少しずつ戻り始めている。
それはまだ“影”だが、確実に形を持ち始めていた。
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