第三話 闇の中で繋がる微かな糸
ボックス内に入り有坂君が手慣れた感じで飲み物の注文と今日はポテト二皿を注文した。
有坂君は鏑木さん、水野さん、千堂さんにお礼を言っていた。
みんなそれぞれに思惑があるんだろう…私はそう思っていた。
有坂君とお近づきになるための、道具にされるのかな?どうせ私なんて数分でみんなの視界には映らなくなるんだ、みんなで盛り上がって解散かな?そう思っていた。
注文した品がそろうと、有坂君は機械の前に行き音量をミュートレベルに下げて席に着いた。
まず席だが、有坂君だけが向かい側に座っている。私はエル字のソファーの角部分に座らされた。左には千堂さん、右側には鏑木さん、その隣に水野さんが座っていた。
有坂君が喋りだした。
「東御さん、混乱させてごめんね。前回でだいぶ喋れるようになったから、ステップアップしようと思ったんだ。」
「ステップ…アップ?」
「そうそう、僕だけと喋れても意味がないからね?でも、いきなり知らない人呼ばれるのは不安だよね?」
「う…うん。」
「だから東御さんにとって、共通の話題を持っている人を探したんだ。」
「探…した…って?」
「友達に聞きまわって、友達の友達に聞いて貰ったりしてね。」
「それって…ほぼ他人…じゃない?」
「ほんとそれやわ、有坂君の存在自体は知っとったけど、友達の友達経由で紹介されたときはびっくりしたわ!」
「私も存在は知ってたけど、縁の無い人だっと思ってたらつい最近紹介されて、第一声がいじめられてたって本当?って聞かれた時は、え?喧嘩売ってるの?って思ったよね。」
「私も同じだったわ。美紀にしか喋ってなかったのに、有坂君から聞かれた時、美紀許すまじって思ったわ。」
「東御さん、理解してもらえたかな?共通した話題。」
「赤坂君…女っ垂らし?」
全員が爆笑しだした。私を除いて。
「女っ垂らしってうける!」
「まぁ、この状況ならま間ちごうてもしょうがないわ。」
「東御さん、違いますからね、皆さんに共通してるのは虐められた事があることです。」
「虐め…」
少し間が開いたが、鏑木さんが口を開く。
「私はな、小学三年生の時に調子に乗ってるって口実で虐めが始まったんや。最初にされたのは机蹴られたり教科書に落書きされたんだったかな?」
千堂さんも口を開く。
「私は男子のブスって発言がきっかけやったわぁ。女子も一緒になって言ってくるようになって。私は上履きが無くなったのが最初だったわ。」
「私は態度が気に入らない、ハキハキ喋れとか言われたのが始まり。私は、聞こえなーいとか、はぁ?何言ってるのかわかんないーって無視が始まったのが始まり。」
「ほら、東御さんの番だよ?」
「わ、私も4歳の時に男子にブスって言われたのがきっかけ、小学校3年生の後半くらいから女子にも言われるようになって、ブスと喋るとブスがうつるって無視されだしたのが始まりです。
「東御さんは、何が一番つらかった?」
「私、ですか?私は水攻め…でしょうか。トイレで上から水が降ってきて、体操着に着替えようとしたら体操着も袋ごと濡れてて、カバンも濡れてて、教科書もノートも筆記用具も体操着の中にあったタオルも体操着も濡れて、どうする事も出来ず、ずぶ濡れのまま1日過ごした時はきつかったです。」
「えぐい事しはるなぁー、私は中学時代は制服で体育の授業受けてた事かな。親に買ってもらうのも諦めてた時期やわ。」
「皆さん、体操着は諦めるのでしょうか…私も体育は制服でしたね。」
「私も、体育は制服でした。上履きは無くなるものなので学校のスリッパでした。」
「あー、私もスリッパだった。職員玄関から出入りしてた。」
「あ、私も職員用玄関だった!みんな一緒なんだね。」
私はみんなが盛り上がってることに驚きだった。しかし…
「職員用玄関を使わせてもらえたんですね。私は毎日体育館の裏で靴を脱ぎ、そこにスリッパを隠してあったので、そこで履き替え、職員用玄関に用意されたスリッパに履き替え、はいてたスリッパは下駄箱の上に移動し、自分の下駄箱に移動して自分の下駄箱の中のスリッパに履き替えて登下校してました。雨の日は靴が濡れますが、無くなる心配がなかったので高校時代はこれで3年過ごしました。因みに誰かに見られているときはスリッパのまま帰宅します。」
「そこまで徹底してたんですね。因みにいじめはいつまで続いてました?」
「私は中学卒業までだね、高校は静岡の高校で県外に出たから。」
「うちは高校1年の終わりやね。親の転勤で埼玉の高校に転校したから。」
「私は高校卒業までだね。大学デビューに挑戦して成功したから。」
私に視線が集まる
「高校卒業まで…です。大学では…」
「おばけちゃん有名ですからね。」
「せやなぁ~。」
「虐められてはいないけど、交流はない感じ?」
「…はい。」
「水野さん、おばけちゃんはやめてあげなっ」
「確かに本人の前で失礼ですよ?通り名ではありますけど。」
「たしかに…。」
「役に立たないと思ったのは?せーのでいう?」
「ほな、せーのでいこうか、東御ちゃんも準備は良い?」
「あ、はい。」
「じゃぁ」
「せーの!」
「先生!」
みんな同じで大爆笑。私も思わずクスッとしてしまった。
「やっぱみんな、同じ考えなんだね。」
「いや、先生の役立たずときたら無いでしょ?」
「見て見ぬ振りされたわ、うちは。」
「私の先生は気を付けて見てみますのでの繰り返し。」
「それなぁー?あいつらやる気ないもんな。」
「先生が言ってたけど、否定されたらそれ以上踏み込めないらしいよ?うちに来た時親に説明してた。」
この後も虐められてた時のエピソードを色々話してくれた。
その結果、カラオケボックスに私たちは5時間も無音でお喋りし続けた。
その間、有坂君は聞き専で会話が切れそうな時に疑問を聞いたりして繋いでた。
私たちは帰り際MINEのID交換をして、それぞれの帰路に着いた。
自宅に着いた私は携帯を見たらグループ招待が来てた。確認してみると参加してないのは私だけだった。MINEなんて初めてだし緊張はする…けど初めて出来た友達?は大事にしたい。
参加のボタンを押したら、即レスポンスで挨拶の嵐。
MINEが終わったのは深夜1時だった。
あれから1ヶ月が経過した。
MINEで毎日連絡を取り合うというか雑談をしたりビデオ通話で4人で喋ったり、待ち合わせをしてスタバ初体験をしたり色々な事があった。
最近は東御さん改造計画なるものが、みんなの話題で持ち切りになっている。
服装やファッション、髪型、アクセに至るまでビデオ通話でこれがいい、いやこっちでしょの言い合い。
私はというと、良く言うのであれば会話には参加している。悪く言えば流されて自分の言いたい事が言えない、そんな状況を打破できずにいた。
今日はショッピングに来ている。
私の服選びなんだけどかわいい系と大人系ファッションで意見が割れる。
今日は着せ替え人形になりそうな気がする。
待ち合わせには千堂さんが一番乗りで来ていた。
「お待たせしてすいません。千堂さんていつも早いですよね。」
「いつもって程でもないわよ?東御さん、そろそろ梨穂って呼んでほしいな?私も雪乃ちゃんて呼ぶから、理穂ちゃんって言って?」
「わ、わかりました、梨穂…ちゃん。」
「雪乃ちゃん、緊張しすぎです。梨穂ちゃんですよ。」
「はぃ。梨穂ちゃん。」
「何々、名前呼びしてるの?はいはい!私も楓って呼んでほしい!」
「呼び捨ては、ハードル高いんちゃうの?ね?雪乃はん。」
「呼び捨てですか?楓は楓で呼んで欲しいの?」
「呼び捨ての方が仲良しっぽいよ。楓は楓でお願い。」
「わかった、楓。梨穂ちゃん、鏑木さん。」
「そこは、遥やろー。」
突っ込みに笑いが起こる。
「ごめんなさい、遥。何も言われなかったので、変えなくて良いのかと…。」
「それはな、気づいて欲しい所やったな。」
「雪乃ちゃん、私も梨穂で!私だけちゃんが付いてるのは仲間外れみたいで嫌。」
「なら、私の事も呼び捨てで雪乃と呼んでください。」
「わかった!ゆきのん。」
「なんや急にかわいいあだ名付いたな。ゆきのん。」
「なに?私も呼ばないといけない感じの流れ?ゆきのん。」
「なんで私だけあだ名何ですか?雪乃でいいです。」
「ゆきのんかわいいと思うけど?。」
「大人になったら、あだ名呼びしなくなりますよ。」
「まぁそうかも?」
「とりあえずいこうよ雪乃!」
こうして所ピングモールの中に入っていった。
行先はファッションブースかと思いきや、スタバ直行だった。
各々注文してテーブル席に座る。
「遥はスタパ好きだよねー?」
「うん、スタパ派やね。楓は?」
「私もスタバ好きだよ?」
「私はタリース派だから、たまにはみんなで行こうよ?」
「雪乃がスタバを覚えたら、行ってもええで?」
「私にはまだ慣れなくて…私のせいですいません。」
「大丈夫、私は気にしてないし謝らなくても大丈夫だよ?」
「ありがとうございます。」
服屋では着せ替え人形で、言われるがままに着ていく。
みんな一応に首をかしげる。
「雪乃ー。髪切らん?」
「え?いや、切るって…え?」
「雪乃は髪切るのいやなん?」
「長い髪に慣れてしまってるし、短くするのは抵抗が。」
「切ること自体は嫌じゃないんだね?」
「梨穂!現地取ったで!今すぐ予約や。」
「よしゃー!うちの行きつけでええかぇ?」
返事もしないまま、梨穂さん行きつけの美容院に連行された。
「美園さーん、こないだぶり!」
「まだ予約日じゃないよね?今日はどうしたの?」
「この子の髪を、カットしてもらいに。」
「あらー、あらあら、すごい子連れてきたわね。」
「髪の長さを変えずに大人の女性にして欲しいんだけど、出来る?」
「まず椅子に座りましょうか。」
なすすべなく、椅子に案内される。
美園さんは私の髪をかき分ける。
「ごめんくださーい。」
それを見た3人は笑いを堪えているのがわかった。
「あら、整った顔立ちしてるのに隠してるなんて、勿体ないわー。
美園さんは後ろへ回り髪をかき分け、顔を鏡に映す。
「え、雪乃ってこんな顔してたの!?」
「初めて見るけど、可愛いくない?」
「雪乃は顔を見られたくないとか、コンプレックスでもあるの?」
「視線を気にしなくて済むし、私が視線を送っても解らないから都合が良かった。」
「周りの視線って、今の方が絶対視線集めてるよね?」
「せやなー、お化けちゃんで大体通じるくらいの認知度は。」
「あるあるだね。」
美園さんから色々提案されたが、良く分からない。周りは盛り上がってるけど。
「前髪を揃えないで片目が見える感じで。髪を耳にかけても前髪で片目は隠れる感じでやるのはどう?」
そう言うと分け目を作り、髪を耳のあたりで髪留めで止めて、止めている髪から少し髪を緩め、片目が隠れるようにイメージ造を作る。
「エレガント…。」
「なんか大人っぽい」
「語彙力が死んでるぞー。」
「弛んでる部分は、耳にかからないように調整して、目が隠れるように自然に垂らす感じになると思うわ。」
「私髪の毛をセットした事がないので、分け目をつけるだけで出来るのであればお願いしたいです。
「雪乃が自分の意見を言ってるの、初めての経験かも。」
「そう言われると、そうかも?」
「因みに前回美容院に行ったのは、いつくらい?」
「去年の夏前…5月頃だったと思います。」
「雪乃、一年以上経ってるぞ?」
「確か髪って人にもよるけど、一ヶ月で1センチ伸びるんだっけ。」
「人によるわね~でもちょっと長すぎかな、腰の長さまで切ってもいいかしら?」
「……分かりました。お願いします。」
梨穂さんが美園さんに耳打ちしているのが、鏡越しに見えた。
「じゃぁ3人は外でお茶でもしてらっしゃい。あとは私に任せて。」
こうして雪乃と美園のトークタイムが始まるのであった。




