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第二話 闇の中の翼は闇の色

 今日はカラオケボックスでの練習の為、大学から有坂君と二人でカラオケボックスに来た。


 彼は手慣れた感じで受付を済ます。



「覚えられそう?」



 小声ながらも返事をした



「何を?」


「受付、注文のやり方。」



 私はとっさに首を振った。



「初めてリアクションしてくれた!でもこれも今だけなんだよなぁ。」


「何故?」



 と、ここで部屋に到着。

 優悟が扉を開ける。雪乃は恐る恐る中を覗くが人は居ない。

 安心して中へと足が向かう。



「飲み物でも注文しようか、何飲む?」



 私はメニュー表を見て指をさす。

 優悟は内線でジュースを注文した。



「注文した時だけ人が入ってくるからね、気をしっかり持ってね。」



 優悟はそう告げるとカラオケの機械へ近づき何か操作し始めた。

 部屋内の音量が明らかに下がった。

 数分後にジュースを持った店員が持ってきてくれた。

 優悟は音量をゼロにして私の向かいに座った。



「良し、環境は整ったね。では始めようか。」



 私はとりあえず頷いてみた。



「今日は喋る練習に来たんだよ?リアクションは部室でもできるから。」


「うん。」


「じゃぁ、東御さんに質問!東御さん出身は?」


「な、長野県です。」


「長野県か~長野県って大きいよね、因みに俺は群馬だよ。」


「隣…ですね。」


「群馬と長野は良く言い争いが起こるんだけど、知ってる?」


「浅間山」


「そう、浅間山!群馬には群馬カルタってのがあって、その中であたかも群馬の物のように浅間山を使ってるんだよね、だから、群馬県民は浅間山は群馬にあると思ってる。」


「そ、そうなんですね。」


「因みにもう一個あるんだけど知ってる?」


「分かりません。」


「軽井沢、群馬県民は嬬恋村のせいで軽井沢が群馬にあると思い込んでるだよね。」

「嬬恋村には地名に北軽井沢、そのせいか軽井沢の付くホテルが点在してるし、軽井沢おもちゃ王国なんて物もある。」


「知りませんでした。」


「東御さんは、群馬に来たことはあるの?」


「昔、前橋市のココストに買い物に…」


「ココスト懐かしい~俺も親に付いて行ってたなぁ。会員制だから行かなくなったけど。」

「思ったより喋れてるね。この調子なら直ぐにでも友達出来そうだね。」


「それは…」


「うん?他人が怖い?」


「…うん。」


「じゃぁ、女子と男子、どっちが怖い?」


「…。」


「両方とも怖いのか、女子が怖いのは分かる。男子も怖いのは力的なもの?視線的なもの?」


「力も視線も…」


「とりあえず、男子は攻撃的な人は避けるべきだね、言葉がきついとかは分かりやすい目安になるね。」


「普通に話しかけてくれる人は普通に話せばよいと思う。」


「…普通とは具体的に?」


「明らかにナンパ目的で近寄ってくる場合は、お茶や食事にいきなり誘われるパターが多いかな?」


「…あの。」


「なになに?どんどん質問してね?」


「今、この場、この状況は?」


「なに?練習でしょ?」


「ナンパのパターン…」


「ち、違う違う!これは東御さんのコミュニケーション能力向上のための勉強会だから。」


「分かりません。」


「ナンパの場合お茶や食事という名目で近づこうとしてるから、ちょっとで良いとか、時間は取らせないとか、相手の事を考えてない言動になるから解るはず。」


「うん。」


「だから、男の子の方がお友達は作りやすい。解りやすいからね。」

「もし友達になっても、食事やお茶をしつこく誘ってくるようなら、ナンパ目的と変わらないから断ればよい。」


「問題は女子、常にグループで行動してるから、今から入るのは難しい。」


「女子は怖いから…」


「俺も女子は怖いわ、でも友達を作れない方法がない訳でも無い。」


「今は作りたくないわ。」


「今はまだ考えなくていいよ?それより質問タイムにしようか。何でも聞いても良いよ?」


「…じゃ、じゃぁ、今付き合ってる彼女さんは居ますか?」


「居ない居ない!ここ数年は居ないよ。」


「好きな人でも居るんですか?」


「居ないよ?この時期に彼女作ったら大変だしね。」


「大学に入って告白された回数は?」


「数えてないなぁ、というか、女の子は恋愛話好きなんだね。」


「…。」

「ど、どうして私と友達になりたいんですか?」


「数少ない同じサークル仲間だしね、趣味の話出来る仲間は少ないからね。」

「同学年なのも1つの要素だね。」


「ゲーム制作してる姿あまり見ませんが?」


「自宅でやってるよ、静かで集中できるからね。」


「今はデバッグと曲作成を任されてるけど、デバッグですか?」


「曲作成かな。曲は難しくて進まないけどね。」

「どう?俺と話してどう?」


「最初は緊張しましたが、少し話せるようになった気がします。」

「あと数回頑張ったら面接のお相手してもらっても良いでしょうか?」


「面接の相手をするにしても、俺では役不足だな。」


「なぜです?」


「だって友達同士でやっても、やりやすいだろ?」

「女性の面接官の場合もある。その場合はどうする?」

「女性と話せるようにした方がいいだろう。」


「…。」

「女性…ですか。どうしてもですか?」


「これは避けて通れないとおもう。」

「だけど大丈夫、安心して。」



 この後も少し話をしたが、落ち着居って話せたと思う。

 帰り道、優悟のこれは避けて通れないとおもう。だけど大丈夫、安心して。

 この言葉だけは不安で仕方なかった。



 有坂君とのカラオケボックスでの練習は3回目になった。

 自分では大分喋れる様になった様に感じているが、有坂君的にはどうなんだろう?

 聞きたいけど聞けずにいた。

 有坂君は度々携帯を弄っている。

 退屈なのかな、私の話は面白くも無いだろうし携帯触っちゃうのは、仕方のないことだよね。


 時間は過ぎ、今日の終わりのお知らせが鳴る。

 プルルルル、プルルルル、プルル。

 有坂君が受話器をとる。

 店員さんとのいつものやりとりだ。

 終わるんだろうなと待っていると、有坂君が私に聞いて来た。



「まだ、時間余裕ある?」



 始めてのことに動揺するが、小声で答える。



「今日は終わりにしたい。」


「了解!」



 有坂君に対応して貰って、カラオケボックスを退店する。



「今日も大分喋れてたね。大分成長を感じるよ?」


「そんな事ないです、退屈させてごめんなさい。」


「退屈なんて感じてないよ、いっぱいお喋りできる様になって来て会話も成り立っているし!」



 そう言う慰みの言葉は、チクリと胸が痛む。

 携帯いっぱい触ってたのを、見ていたからだ。

 私はお礼の言葉を述べて、帰路に着く。

 1人反省会の開幕である。

 と言っても今日はダメダメ過ぎて、反省点がありすぎる。

 でも、毎回思うけど話題が盛り上がらない。男の子との共通の話題がない。

 携帯で調べてメモを取った。男の子でもグルメとか話題になるのか…。


 そしてそれから9日が過ぎた。

 あれから、カラオケボックスの練習会もなく、有坂君と部室で会う機会も少なくなっていた。


 やっぱ駄目だったのかな…一人落ち込む雪乃

 休憩スペースで講義内容のボイスレコーダーを聞き、講義内容を復習していた。

 高校からの勉強方法は、ボイスレコーダーで教師の言葉を録音し、黒板に書かれた内容は写メで撮影。

 それを聞きながら参考書などで家で復習するのが、雪乃の勉強スタイル。学校には教科書もノートも持って行かない。胸に忍ばせてたボイスレコーダーとスマホのカメラが教材だった。


 ボイスレコーダで耳をふさぎ、携帯の写メに目を落としていたために全く気が付かなかったが、人の気配を感じ視線だけで周囲を見渡すと、対面に有坂君が座っているのが確認できた。ボイスレコーダーで耳がふさがっているので、何をしゃべっているのかは確認できなかった。イヤホンを外し少し顔を上げてみたが喋る勇気がない。私は付箋に書いて有坂君に見せた。



「ごめんイヤホンしてて聞こえてなかった。なに?」


「カラオケボックスの練習出来てなくてごめんね?今日は出来そうなんだけど時間ある?あるなら付箋を持ち上げて、無いなら付箋をしまって?」



 有坂君は小声で聞いてきた。彼なりの気遣いだろう。

 私は付箋に書いて質問した、時間の確認をした。



「予定上、きょうは16時から始めたいんだけど、どう?」



 私は付箋を持ち上げて、彼が見てるのを確認した。



「じゃぁ、今日の16時にいつもの場所で待ち合わせで。」



 そう言って彼は席を離れた。



 時間は過ぎ、16時にいつものカラオケ屋前、有坂君の姿を確認した。

 私は彼に近づき、声をかける。



「お待たせしてごめんなさい。」


「全然待ってないし、約束の時間10分前だよ?遅れてないのに謝る必要はないよ?」


「すみません、口癖でつい言葉が勝手に出てしまって。」


「まぁ染みついちゃったものを、いきなり変えるのは難しいよね。」



 店内に移動し、いつものように有坂君が受付対応をしてくれている。」



「予約していた有坂です。」



 え?予約?いつもは予約なんてしてないのに何で?

 しかし話は終わり、部屋に案内された。

 扉の先を見て私は言葉を失う。

 知らない女性が3人居たのだ!

 私は反射的にその場から離れようと駆け出していた。

 有坂君もその状況に気づき、私を追いかけて来て手をつかむ!



「は、離してください!」


「まってまって、一旦落ち着いて!」


「離して!」



 状況を察した店員が駆け寄ってくる。



「お客様、他のお客様の迷惑になります。」



 しかし私には聞こえていなかった。



「手を放して!どうして!」


「待ってよ、話を聞いてお願いだから。」



 部屋から3人の女性たちが心配そうに出てきた。

 しかし、雪乃の視界には入っていない。



「いや!離して!」



 店員が声をかけてきた。



「お客様、彼女、嫌がっておられますし、ここで騒がれると他のお客様の迷惑になります。場合によっては警察を呼びますが?」



「東御さん、手は放すけど逃げないで、お願いだから。」



 私はこの場を一刻も早く去りたい。

 有坂君は携帯のグルーチャットに、東御さんを囲うようにして逃がさないように動いてほしい。そう送信した。確認した3人は東御さんを囲うようにいどうした。



「東御さんていうんやな?初めまして、私は鏑木遥って言います。鏑木でも遥でも好きなように呼んでや?」


「私は水野楓、私の事も好きに呼んで構わないわよ?」


「じゃぁ最後は私ね、千堂梨穂よ。私の事は梨穂って呼んでもらえると嬉しいかも。」



 私は自己紹介されたが脳内ホワイトアウトにより何も覚えられなかった。

 騒ぎになってしまったので、店をいったん出て他のカラオケボックスに行くことに。

 もちろん承諾はしてないけど、両腕をしっかりホールドされて逃げられる状況ではなかった。



「ごめんね、驚いちゃったよね…でもこれにもちゃんと意味はあるんだ。」


「東御さんごめんなぁ~?正直言うと、有坂君以外はみんな初対面なんよ。」


「そうですね、一応挨拶はしたんだけど今日初めて会ったのは本当。」


「東御さんだけが仲間外れな訳じゃないの。私たちも初顔合わせで緊張してるのよ?」



 4人は各々が私に話しかけてくれた。この集まりは一体何?みんな初対面てどういうこと?

 私は困惑しながらも、別のカラオケ屋に連行されるのだった。

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