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第十話 闇の中に小さな光

 私のところに業者が来たのは朝10時だった。

 業者さんは手慣れた感じで養生を済ませ、大物家電から運び出して行く。私は昨日使ったお風呂セットを一つ一つ拭きあげ、ダンボールにしまって行く。その間も業者さんは物を運び出して行く。

 お化粧道具は割れそうなものはタオルに包み込んでしまって行く。少し隙間ができたので新聞紙とタオルで隙間をうめ、テープで止めた。最後は洋服をリュックに詰める。

 業者さんは養生を剥がし終え、最後のダンボールを乗せた。一緒に乗って行くか聞かれたのでお願いして乗せてもらった。


 マンションに着くと、私は自動ドアの開閉係で、1階フロアに一旦荷物を全部降ろすまで都度開けてあげた。洗濯機と電子レンジ以外は9階まで運んでもらい部屋の扉を開けっ放しにして中に運んでもらった。


 全て終わると、次は橘翠の家に向かうとの事だったので乗せてもらって移動した。

 翠は私と同様にお風呂セットと化粧品をダンボールに詰め終わり、キャリーに服も詰め終わって待っててくれた。

 私は翠に鍵を渡し、自動ドアの開閉係をして一旦1階フロアに荷物を運ぶ事、洗濯機は1フロアの隅に置いてもらうこと、全部おろし終わったら部屋のドアを開けっ放しにしてリビングか部屋に荷物を運んでもらう様に説明した。


 荷物を全部積み終わり、業者さんは翠に一緒に乗って行くか聞いたので、乗せてもらって行くと良いと話をした。


 翠と別れ、私は不動産屋に行き、アパートの契約解除手続きを行った。アパートに同行し部屋をチェックされたが、何事もなく終わり、不動産屋に戻り、敷金が戻しを口座になるので口座を記入した。


 その後事務所で三上さんから、スペアキーを受け取りマンションへ向かった。

 途中で食材を買った、夕飯と朝食用に。

 部屋に着くと翠は部屋で荷ほどきしている様子だった。

 私はお風呂を洗い、洗濯物始めた。部屋に荷物を運び込み、ベランダへ出た。伸縮性のある物干し竿を物干しフックに掛けて洗濯物が干せる様にした。部屋へ戻り荷物を解く。小さいテーブルの上に教材やら資料の本など並べ前の部屋と同じになった。ウォークインクローゼットに服をかけてしまい、下着類も棚の中にしまった。



「私ってものが少ないなー。」



 独り言を呟きながら、キッチンに調味料や食器をしまっていく。買ってきた食材を冷蔵庫にしまい、ダンボールに入れていた食材もしまう。

 洗濯機が止まったので洗濯物を干しに、ベランダへ向かった。前日は翠の家に泊まったので運動着、昨日着ていた服等を洗濯してしていなかった。干しながら今日の夕飯は何時に作るか悩んでいた。干し終わったので、部屋へ戻り、化粧品やらを化粧台に並べたり整えたり。終わったらカーテンをカーテンレールに取り付けていく。


 一段落したので、ケトルを洗って水を入れ、スイッチを入れた。

 そのまま翠の部屋の前に行き、ノックをした。

 コン、コン、コン。


 返答が無い。

 悪いとは思ったが、ベランダへでて翠の窓から部屋を覗いてみた。翠はベッドで横になっている眠っている気配で動く気配がない。

 私は個人チャットで、翠にメッセージを送ってみた。

 リビングに戻り、私は珈琲を淹れて一息ついた。



「翠ちゃんも疲れてるんだろうなぁ。慣れないジョギングに突然の引越しだもん、しょうがないよね。」



 また独り言を呟いた。

 次は誰のお手伝いになるのかな…そんな事を考えながら珈琲を含む。



 何かしないと寝てしまいそうになったのでタイマーを18時にセットしておいた。万が一の保険に。

 しかし、眠気に勝てず眠りに誘われた。


 気がつくとアラームのスヌーズの音で目が覚めた。時間は18時20分を過ぎていた。慌てて翠ちゃんの部屋の前に行きノックするが返事がない。グループチャットで翠が寝ている事、寝過ごして遅刻しそうな事を伝えた。

 グループチャットがどんどん流れるが翠が起きる気配がない。

 翠に心の中で謝って、部屋へはいった。翠は気持ち良さそうに寝ている。



「翠ちゃん、起きて!遅刻だよ、翠ちゃん!」



 揺すったら目を開けてくれた。



「翠ちゃん、ごめん!私も寝ちゃってて、起きたのさっきで。」


「別に謝らなくてもいいよ?それよりもどうしたの?」


「ジョギングの集合時間に間に合わない!グループチャットで謝っておいたから準備して。」


「私も準備してくる。」



 2人は慌てて準備してマンションを出た。

 移動中も2人で謝罪した。運動着で出ようと提案して、カバンはお互い持って出てきたので時間のロスは少ないはず。ロッカーにカバンを入れ到着したのは、集合から20分が経過していた。



「ごめんなさい、油断した。私のせいで遅れた。」


「私が悪いの、アラームもかけずに寝落ちしちゃって、雪乃ちゃんが居なかったら大遅刻じゃ済まなかったかも。」


「雪乃、翠の2人が遅刻するなんて思わなかったよ。」


「うちもグルチャみて、最初嘘かと思ったで?」


「このグループではしっかり者の2人だからね、驚きはしたけど怒ってはないよ?」


「とりあえず今日も頑張ろう!」


「じゃぁ、スタート!



 ジョギングは無事終了、遥は84分、楓84分、梨穂84分、華苗86分、翠88分だった。私は88分でゴール。

 この後、理由をめっちゃ聞かれた。



「そもそも、何で2人とも寝落ちしてたの?」


「どっちかの家に泊まってたとか?」


「私と翠ちゃんは、今日からマンションで寮生活に入ったんだけど。」


「マジで、めっちゃ早ない?」


「無理してたんと違う?」


「無理してないつもりだったけど、 違ったみたい。」


「来週からじゃなかったの?」


「そだったんだけど、荷造りし始めたら思いのほか物が無かったみたいで。」


「雪乃の家行った時、それは思った。」


「私も感じてたわー。」


「で、やる事なくなっちって翠ちゃんのお手伝いしたら、翠ちゃんの部屋の荷造りも終わっちゃって。」


「なるほどねー。」


「とりあえず、明日はゆっくり休んどきや。」


「それが良いね。」


「本当にごめんね。明日は大人しくしておきます。」



 この後は各々家に帰った。翠ちゃんにめっちゃごめんなさいしたけど、そんなには怒ってない様子だった。

 家に着き、私は真っ先にお風呂の給湯のスイッチを押した。



「雪乃ちゃん、お風呂洗ってないんじゃない?」


「ううん、昼間来た時に最初にお風呂掃除と、トイレ掃除は済ませてあるから大丈夫。」


「私何もしてないよー。ごめんね?」


「翠ちゃんは、慣れないことして疲れてたし大丈夫。洗濯物あったら出しておいてね。」


「ありがとう!忘れないうちに出しておくね。」


「お風呂湧いたら先に入っちゃってね、私はその間に夕食の準備しちゃうから。」


「夕食作ってくれるの?買い出しは?」


「昼のうちに買ってきたから大丈夫!数日分はあるから。」


「声掛けてくれれば、一緒に行くのに…。」


「多分明後日に買い出しに行くから、その時はお願いしたいかも。」



 ピロピロピロローン。

 お風呂が湧きました。



「湧いたからゆっくり湯船に浸かって、疲れとっておいでー。」


「じゃぁ、お先頂くね♪」


「はーい。」



 私は夕飯作りに専念。今日は生姜焼きと切り干し大根の煮物、ササミのサラダ、味噌汁、ご飯。ご飯は4合炊いてみた。その他おかずも少し多めで作っていく。ささみのサラダも。

 ここで気がつく、お皿類洗ってない事に。慌てて使いそうなお皿を洗う。今日は部屋に置かれているお皿を使う。切り干し大根の煮物を作りながら、ササミを茹でて火を通す茹で上がったらササミを取り出し、玉ねぎ、豆腐の順に入れ味噌を溶く。レタスを手でちぎりサラダボールに盛り付け、胡瓜、ミニトマトを飾り付け、その上にササミを裂いてもりつける。キャベツを千切りにし水に晒す、豚肉は一口大に切り生姜焼きのたれに漬けて揉み込む。切り干し大根も盛り付ける。フライパンに油をひき、生姜焼きの肉を焼く焼き終えたら終了。

 翠ちゃんを待つ間に、私が持参した食器やらを洗い始めた。


 翠ちゃんが上がってくる頃には洗ったお皿の拭きあげも終わり食器棚に閉まっているところだった。



「わー、良い香りがするー!お腹空いてたから、早く食べたい!」


「ちゃんと髪乾かしたりケアしてからね。どのくらいかかる?」


「15分くらいかな…。」


「じゃぁ、温め直してお皿並べるね。」


「すぐやってきます!」



 翠ちゃんは大急ぎで部屋に入って行った。

 私もお味噌汁やらを火に掛け直した。盛り付けは一人分ずつよそって3人前分になる用によそった。

 翠ちゃんもお部屋から出てきたので、ご飯とお味噌汁をよそってあげた。



「雪乃ちゃん、何で3人分あるの?」


「それは、おかわり用だよ?翠ちゃんがどのくらい食べるのか判らなかったから。」


「えー!大変じゃん、そんな気を使わなくて良いのに。」


「お腹空いてるでしょ?お腹いっぱい食べて欲しいからね、食べよ?」


「頂きまーす!」



 2人はご飯を食べながら、この後のことを話した。



「ご飯が終わったら、ゆっくりすると良いよ、疲れてるでしょ?」


「でも洗濯しないと…昨日出来なかったし。」


「明日の予報は晴れだし、朝回すのじゃ間に合わない?」


「朝回せれば間に合うかな?」


「翠ちゃん次第だけど、いま干して明日の夕方取り込む?」


「どうするか考えとくー。」


「そだね、翠ちゃんお代わりして良いからね?私はお腹いっぱいになりそうだから。」


「私も食は太くないから、全部食べられないよ?」


「残った分は明日のお昼とかにしても良いし、ご飯は冷凍しておくから小腹空いたらおにぎりでも良いし。」


「雪乃ちゃんは何でもできる、まるでお母さんみたい。」


「何だろう、褒められてる気がしない(笑)」


「褒めてるんだよ?私出来ないし!」


「やっていれば、出来る様になるものよ?料理できる様になったのは大学からだし。」


「出来ないから、手を出せずにいたかなぁ。」


「そうね、私も今は不安になってるし、最初は不安にもなるわよね。」


「雪乃ちゃん、不安な事があるの?」


「えぇ、6人分の食事…私に出来るのか不安で仕方ないわよ?みんなが、どの位食べるのかも解らないのよ?」


「言われて見れば、確かにそうだね。好き嫌いも解らないしね。」


「翠ちゃん、食べおわった?」


「うん、おいしかったぁー!ご馳走様でした!」


「お粗末様でした。」



 雪乃は食器をかたずけ始める。翠も自分の食器を片付けてくれた。

 残ったものはラップをかけて、冷蔵庫にしまう。



「翠ちゃん、冷蔵庫にプリンとヨーグルト、ゼリーあるからよかったら食べてね?」


「良いの?雪乃ちゃんが買ったやつでしょ?」


「買い物行けなかったでしょ?気の利いたものじゃなくて申し訳ないけど。」


「全然!私の為に買ってくれたんでしょ?うれしいよ♪」


「そう言ってもらえると救わるるよ~正直何買えば良いのか解らなかったし。ところでお茶、紅茶、珈琲淹れるけど、どれが良い?」


「紅茶でお願いしま~す!てか私淹れようか?」


「ううん、座ってて、すぐできるし。



 そう言って、紅茶を淹れたカップを翠の前に置く。私のは珈琲。



「どうぞ~熱いから気を付けてね。」


「うん、頂きます。」



 私はキッチンに戻り洗い物を始めた。



「翠ちゃん、ありがとうね。」


「雪乃ちゃん、どうしたの急に…。」


「私一人でここは広すぎるし、正直不安だったんだ。翠ちゃんが真面目で荷造りしてくれてたおかげで今があって、翠ちゃんが荷造りやってなかったら、私一人だった。」


「雪乃ちゃん、私は真面目じゃないよ?だって一日少しずつって、やってただけだった。雪乃ちゃんが手伝ってくれたから、事が進んだんだよ?雪乃ちゃんのお陰だよ?」


「ありがと、私の我儘に付き合ってくれて。」


「我がままなんて、そんな風に思ってないから大丈夫。それより洗い物手伝おうか?」


「ううん、大丈夫。それより、翠ちゃん自分の食器とかコップとか持ってきたんじゃない?出してくれれば洗っちゃうよ?」


「あ、そういえば持ってきたのに出してなかった。」


「一応一通りは、食器揃ってるから出さなくても平気ではあるんだけど、私は自分が使ってたもので生活したくて、一通り洗ってあるんだ~。」


「でもさっきは真っ白の同じ食器だし、今のカップやコップも白だけど。」


「私のは食器棚の一番下に入れてある。今日は翠ちゃんの食器無かったから、あえて白食器使ってるの。同じ方が統一感あるでしょ?」


「確かにそうだね。でも私の持ってる食器は、雪乃ちゃんとは違う柄だよ?」


「それは個性だから、違って当然だし、柄と柄なら不自然じゃないでしょ?」


「確かにそうかも?でも、私食器って言っても小皿数枚とコップくらいしかないけど。」


「お茶碗とかは無いんだね…じゃぁ明日買いに行く?」


「100均とかでも良いかな?」


「私の100均だから大丈夫(笑)」


「やった!仲間だね♪」



 こうして賑やかな一日は更けていった。

 それから数日が過ぎ夏季休暇に入った。いわゆる夏休みというもの。

 私は夏季休暇に入ってやろうと決めてた事があった。

 ジョギングの回数を増やすと言うものだった。

 朝食を準備して、私は先に頂いていたら、翠ちゃんが起きてきた。



「雪乃ちゃんおはよう~早いねって運動着?!」


「翠ちゃんおはよー。朝食作っておいたから自分のタイミングで食べてね。」


「うん、朝食は了解、だけど何で運動着なの?」


「実は、今日からジョギングの回数増やそうと思ってたんだ。」


「え?そんな話あったっけ?」


「ないない。私個人で決めた事だから、他の人はやらないから安心して大丈夫だよ。」


「そっかぁ~。雪乃ちゃん相談があるんだけど。」


「なに?私で解決できる相談?」


「個人でレッスンできたりできる場所って知らない?」


「ボイトレとかってこと?」


「ボイトレもだけど、ダンスというかリズムレッスンできる場所。」


「ここのリビングじゃ駄目なの?今は良いけど皆来たらできなくなるでしょ?」


「確かにできない…うん、出来ないね。三上さんに聞いてみようか?」


「お願いできる?ごめんねっ。」



 私は三上さんに個人レッスンが出来るっ場所が無いか聞いてみた。



「うーんとね、各偶数階の一番手前の部屋、雪乃ちゃん達の部屋からなら、1003号室は個人レッスン用の部屋で、901の鍵でも入れるから、利用するならしても良いわよ?ただし中央のガラスは注意ね。扉が廊下側にあるから奥に入ってね。」


「ありがとうございます。ちなみにCD流せる機器とかスピーカー環境とかあったりしますか?」


「あるわよ?メトロノームとかもあるし、携帯から動画の音声流したりもできるわよ。」


「すごく助かります。あとで行ってみます。」


「はーい。リズム系の動画とか発声練習の動画はお勧めだよ?」


「わかりました、橘さんにも伝えておきます!」



 やり取りをリアルタイムで翠に見せていたので、伝えなくても伝わってます。と心の中で呟いた。



「雪乃ちゃんありがとう、私もジョギング一緒したら駄目?」


「駄目って事は無いけど、ばれたら大変かもよ?」


「ばれないと思います。ジョギング以外では近づかないでしょう?」


「まぁ、確かに一理ある。」



 ジョギングは翠と二人でやることになった。ジョギングは10kmを2セット。自宅に戻り、昼食をとり午後は1003号室でリズムの取り方の動画を何度も反復した。17時過ぎに部屋に戻りおにぎり1つずつ食べて休憩、18時に家を出発。19時みんなでジョギングをした。この後はいつも通り、先に翠にお風呂に入ってもらってる間に食事を作り、食後はリラックスタイム。私はお風呂に入る時に洗濯機を回してお風呂上りに夜に洗濯物を干す下着は部屋の中だけど。

 一方の翠はお風呂が終わってるので洗濯を回す、干すと同じルーティーンだけど、いつもリビングに居る。部屋に籠ってるのは、初日の寝落ちもちもちした時だけだった。寝る前まで私とおしゃべりタイム。雑誌のコーデで語らいあったり、メイク雑誌でやり方聞いたり、私がテレビ持ってないって言ったら、部屋で見せてくれることもあった。見たいものがある時は私を誘ってくれる。ほんと良い子。


 そんな感じで週をまたいだ月曜日。

 日課になったジョギングは10kmを2セット。自宅に戻り、昼食をとり午後は1003号室でリズムの取り方の動画を何度も反復した。17時過ぎに部屋に戻りおにぎり1つずつ食べて休憩、18時に家を出発。ここまではいつも通りだった。


 しかし、19時になっても遥は現れなかった…。

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